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「ん……朝……?」

 まだ眠い目を擦りながら、重い身体を起こす。

 ……いや、起こそうとした。

「まだ夜明けには早いよ?眠いならもう少し寝ていればいい」

 すぐ隣から声が聞こえた。

「ア、アルベルト様!?」

「ふふ、おはよう、エミリア。もう起きて大丈夫かい?」

「あ、はい……少し身体が重いですが、大丈夫です……」

「そう?痛いところはない?ごめんね、少しきつかっただろう?」

 その言葉に、顔がぼっと赤くなるのがわかった。

 少しどころではなかった。僕は初めてだというのに、3回もしちゃったんだよ?そりゃぁ最初の一回は手加減してくれたんだろうけど……。

「ああ、水を飲むかい?あれだけ声を出していたんだ。咽喉が辛いだろう?」

「っ…!そんなこと言わないでください……!」

「ふふ、ごめんね?恥じらう君が可愛くて、つい…」

 駄目だ、この男には何を言ってもこっちが恥ずかしくなるだけだ。

 僕はそれ以上何もいわずにコップを受け取った。


「エミリア、聞いてほしいことがあるんだ……」

 急にアルベルトの雰囲気が変わったことに戸惑う。

「……なんでしょうか?」

 少し警戒しながら聞き返してみる。何を言うつもりなのだろうか?

「これから僕の言うことは全て真実だ。信じられないかもしれないけど、嘘じゃないことを先に言っておく。質問があれば後で聞くから、まずは僕の話を聞いてほしい」

「……どのような話かわかりませんが、聞いてみないことには判断のしようがありません。話してみてください」

「うん……実はね、僕は…いや、今の僕は元々この世界の住人じゃないんだ」

 は?いきなり何を言い出すんだ?

「うん、信じられないよね?でも本当。僕は2年前にこの世界、いやこの身体になった。それまでは違う世界で生きていたんだ。その世界で色々あって……2年前に気がついたらこの身体になっていた。元々この身体の持ち主だったアルベルトがどうなったのかは知らない。もしかしたら僕がこの身体を乗っ取った時に殺してしまったのかもしれない。僕は……僕の精神は別の世界から来たってことは事実なんだ」

「……どうしてそれを私に?」

 わからない。いきなり何でそれを僕に言うんだ?

「君を初めて見た時に思ったんだ。君ならきっと僕の本当の姿を受け入れてくれる。いや、君に受け入れてほしいと。君には僕の本当の姿を知っていてほしかったんだ。ああ、心配しなくてもこの身体は正真正銘、アルベルト・エイム・グイーンのものだよ」

 どこか遠い場所を見るような目で、アルベルトは宙を見ている。

「元いた世界がどのような場所か、聞いてもよろしいですか?」

 僕の言葉に、アルベルトの顔が驚いたものに変わった。

「信じてくれるのかい?こんな荒唐無稽な話を……」

「アルベルト様は、嘘を仰っているようには見えませんでしたから……」

「そう……やはり君に話したのは正解だったね。……僕のいた世界…そこは文明が発達していて機械と言うものが人々の生活を支えていた。電気と言うエネルギーで街は夜でも昼間のように明るかった。鉄の馬車が街を走り、鉄の船が空を飛んでいた。まるでおとぎ話のような世界だよ。僕はそこで生きていた。でも父は僕をかばって事故で死んだ。それから10年後、僕は父が死んだ場所に花を手向けに行っていたんだけど……そこに暴走した鉄の馬車が突っ込んできてね。父と同じ場所で死んでしまった。そう思ったんだけど、目が覚めたらアルベルトになっていたんだ」

 ……あれ?なんか地球によく似ているな…。しかも父に庇われて、その父が死んだってまるで僕みたいだな。

「あの……アルベルト様はどのような方だったのですか?以前のお名前を窺っても?」

 なぜか胸がドキドキしている。緊張で口の中が渇いている。

「僕かい?僕は普通に働いていたよ。うーん、こちらで言えば商会になるのかな?そこで下働きのような事をしていたんだ。名前は……篠原恵子って言って、実は女だったんだよ」

 ええっ!?ちょ、恵子!?それって娘の名前!?いや、同姓同名かもしれない。落ち着くんだ……。よし、順番に確認してみよう。

「アルベルト様……いえ、恵子様が住んでいらしたのは何と言う国のなんという場所なのですか?それにお父様やお母様のお名前は……?」

 アルベルトは一瞬、訝しげな顔をしたが、それでも懐かしむように答えてくれた。

「僕の住んでいた国は、地球と言う星の、日本って小さな島国だったんだ。その中の○○って場所に住んでいて……。父は公務員、ああ、地方の役勤めね。そこで働いていて、母は主婦をしていた。優しい両親だったんだけど、僕が15の時に僕をかばってね……。死んでしまったんだ。その時は凄く悲しかったんだけど、父に貰った命だと思って頑張って生きることにしたんだ。でも25で死んじゃったけどね。父の名前は篠原貴文で母は篠原幸子って言う名前だよ。こっちだと前と後ろが反対になるね」


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