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あっという間に結婚式当日。というか式の真っ最中。
僕の隣には旦那となるグイーン公爵。
「汝、誓いの言葉を述べよ。アルベルト・エイム・グイーン」
アルベルト・エイム・グイーンというのが僕の旦那になる男の名前だ。
「私、アルベルト・エイム・グイーンはエミリア・アイル・デオニスを妻とし、生涯をかけて愛することを誓います」
「汝、誓いの言葉を述べよ。エミリア・アイル・デオニス」
「私、エミリア・アイル・デオニスはアルベルト・エイム・グイーンを夫とし、生涯をかけて愛することを誓います」
「宣誓は成された。ここに誓いの口付けを以って二人を夫婦と認める」
司祭の言葉で僕達は向かい合う。
グイーン公爵は身長が180cm以上あり、160cm足らずの僕から見れば、見上げなければ顔も見えない。
グイーン公爵の手で僕のヴェールが上げられる。
それで初めてグイーン公爵の顔を見た。
めちゃくちゃ美形と言うわけではないが、それなりに整っている。特に深い碧色の目が印象的だ。
その顔がゆっくりと近づいてくる。
僕はそっと目を閉じた。
「この誓いを以って夫婦と認められた!二人の行く先に幸あらんことを!」
式場が大きな拍手に包まれる。
これで僕は……グイーン公爵の妻になった。
式が終わった後はパレードで王都を回り、その後に晩餐で出席者に祝福を受けた。
っていうか、無茶苦茶豪華な式だったよなぁ。ウェディングドレスだけで下手すりゃ平民が一生遊んで暮らせるだけのお金がかかっているんじゃないだろうか?
なんせあの母がかなり気合を入れて準備してたし……。
ああ、でも兄二人の結婚がまだなのに、僕が結婚しちゃって大丈夫なんだろうか?普通は上から順番に結婚していくものじゃないのか?
うだうだと色んな事が頭を巡る。こんなことでも考えていないと、緊張でどうにかなってしまいそうだからだ。
だって今夜は初夜。僕はグイーン公爵家の、いわゆる夫婦の寝室にいる。
晩餐が終わってグイーン公爵と一緒に王都にあるグイーン公爵家に来て、そのままお風呂に入って着替えて……ここにいるんだ。
着ているのはネグリジェ?スケスケの薄い服で、その下はショーツのみ。そのショーツもメアリーが持ってきた、なんでもこの日の為に母が用意したものらしい。
コンセプトは清楚でエロと言っていた。
……うん、コンセプトはわかるんだけど……。素材はシルクだろう。レースとフリルをあしらった白の下着は確かに清楚に見える。でもところどころ透けていたり、横が紐になっていたりで意外とエロい。自分で見ていてもちょっとドキドキするほどだ。
僕はそんな状態でグイーン公爵を待っているんだ。
扉を開ける音がして、誰かが入ってきた。
音がした方向はグイーン公爵の部屋があるほう。だからグイーン公爵だろう。
「あ、あの……不束者ですが、よろしくお願いします!」
思わずベッドの上で三つ指をついてしまった。こういう時どうしたらいいのかは分からないが、間違っている事だけはわかる。
「っくくく……。そんなに緊張しないで、僕の可愛い人……。この日をどんなに待ち焦がれたことか…」
グイーン公爵の手が僕の頬に触れる。
「グイーン公爵様……」
「僕の事はアルベルトと呼んで。貴女は今日からエミリア・アイル・グイーンとなったのだから…」
「アルベルト様……」
「そう、僕のエミリア……」
二人の口が重なった。
「アルベルト様……私……」
「大丈夫、僕に任せて……」
アルベルトに押されるまま、僕の身体がベッドに沈んだ。