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16歳になった。
背もだいぶ伸び、胸も成長した。
身長は158cmで、もうちょっと欲しいなと思う。
胸はDカップまで成長した。ちょっと肩が凝るのが悩みだ。
見た目は相変わらずの美少女で、国の内外を問わず、凄い数の結婚の申し込みが来ているらしい。
婚約の申し込みじゃなくなったのは、結婚が16歳からになっているからだ。
そして先日に16歳の誕生日を迎えたばかりの僕は、父の前に立っていた。
「エレミア、お前を呼んだ理由を分かっているな?」
父の執務室で、他には母と二人の兄が部屋にいる。家族勢揃いだ。
「はい、私の婚姻の事ですよね?」
これは突然の事ではない。というか、15歳になる前に言われていたことだ。
15歳になる前、父は僕を呼んで言った。
「エレミア、お前は16になるまでに自分で結婚相手を見つけろ。もしも16になるまでにお前が結婚したいと思う相手が見つからなかった場合は、父と母と兄でお前に一番相応しいと思う相手を用意する。それが嫌なら自分で相手を見つけるんだ」
こう言われて、僕はそれに頷いた。
「それで、お前は結婚したい相手はいるのか?」
僕は首を横に振った。
「いいえ、お父様の決めた相手に従いますわ」
僕は最初から自分で結婚相手を探す気なんてなかった。
そもそも、男を好きになるという気持ちが湧かないのだ。
それに僕に寄ってくる男は見た目ばかり気にして、言葉も僕の外見を褒めるものだけ。
そんな中から自分で選ぶなんて出来るはずもなかった。
だから最初から家族に任せてしまおうと考えていたのだ。
僕の事を大切にしてくれる家族なら、きちんと僕を大事にしてくれる相手を選んでくれるはずだから。
仮に求婚の釣り書を見たところで、肩書がわかるだけで僕にはその人の事はわからないけれども、父達なら僕が知りようもない事まで調べてくれるはずだ。だから僕は家族の決めた相手なら安心して嫁ぐことができる。
……好きになれるかどうかは別として。
「それでいいんだな?」
父が念を押すように言って来た。
「はい、お父様やお母様、エドお兄様やイルお兄様の事を信じていますから」
僕の言葉に、父が大きく息を吐き出した。
「わかった。エレミア、お前の結婚相手はグイーン公爵だ。式は3ヶ月後に行うのでそのように準備しておけ」
「はい」
そう言って執務室を後にした。
「メアリー、グイーン公爵様ってどんな方なの?」
自室に戻ってメアリーに結婚相手の事を聞いてみた。
「確か、1年ほど前に先代の公爵様の後を継いで公爵になられたのよね?」
僕が知っているグイーン公爵の情報なんてこんなものだ。
「その通りです。グイーン公爵様は御年22歳で社交界にはあまり出られていなかったはずですわ。浮いた噂もなく、とても誠実な方だと聞いております。もしかして、グイーン公爵様が姫様の?」
ふむ、さすがにあの家族の審査を通っただけの事はある。誠実なのが一番だ。
「そう、私の結婚相手に決まったそうです。式は3ヶ月後だそうです」
「まあ、おめでとうございます」
「ありがとう。メアリーは……私についてきてくれるかしら?」
「もちろんです!私は姫様の侍女です。どこに行かれようとご一緒させていただきますわ」
「ありがとう。メアリーが一緒なら心強いわ」
主従の絆を再確認し、これから忙しくなるぞと気合を入れ直した。