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……あれ?僕、生きているの?死んだんじゃなかったのか…?
いや、確かに僕は死んだはず…。
あれ?苦しい……。
「大変です、息をしていません!」
「なに!?早く気道を確保しろ!!」
「そんな!産まれたばかりですよ!無理です!」
く、くるし……。
「おぎゃぁぁぁ!」
「よかった…!これで大丈夫だ!」
ああ、何とか呼吸ができた。しかし周りが騒がしいな…。
「王妃様、お産まれになりましたよ。可愛らしい姫様です!」
ん?子供が産まれたのか?それは目出度いな。でもなんで僕と同じ部屋で産むんだ?
「王妃!よくやった!!おお、これが姫か…。なんと可愛らしい……!目元は王妃にそっくりだな……」
ん?なんだこの美形は…?っていうか、どうして外人が僕を覗き込んでるんだ?
「陛下、王妃様もお疲れです。面会はまた後で……」
「む?そうか…そうだな。ふははは、待ち望んだ姫の誕生だ。可愛らしい名前を考えんとな!」
陛下?む…なんだ?凄く、ねむ…い……。
「おはようございます、姫様」
すみません、僕、なんか転生しちゃったみたいです。しかも女、姫様だって。びっくりだね。
あれだね。これってテンプレって言うんだよね?娘が読んでいた小説に載っていたよ。
「おはよう、メアリー」
しかもメイドさんなんてついちゃって、色々びっくりだよ。
最初のうちは色々戸惑ったけど、今ではそれなりに馴染んできた。僕ももう5歳だしね。
っていうか、知らない言葉のはずなのに最初からちゃんと聞き取れるし、文字も読めた。
これってチートって言うんだよね?
ちなみに僕の産まれた国って言うのはデオニス国っていって、この世界で一番大きな国らしい。僕、そこのお姫様なんだって。
家族は父と母、それに兄が二人いる。お爺様とお婆様は離宮ってとこに住んでいて、一緒には住んでいないらしい。
といっても月に一度は会いに来てくれてるけど。
ちなみに僕の容姿っていうのがまた凄くて、銀髪に青い目をしたすっごく可愛い女の子なんだ。将来は絶対美人になるね。
いまでも西洋人形のような可愛らしさで、鏡を見るたびにうっとりしそうになって大変だ。
国は兄のうちのどちらかが継ぐので僕はいずれどこかに嫁ぐらしい。そのために色々と作法も習い始めたところだ。
父も母も二人の兄も、僕の事をとても可愛がってくれる。それこそ、目に入れても痛くない程って言うのかな?そのくらい大切にしてくれている。
「お父様、お母様、エドお兄様、イルお兄様、おはようございます」
朝は家族そろっての食事と決まっている。
僕は食堂に入り、家族に挨拶をして自分の席に座った。
「おはよう、エミリア。今日も可愛いよ」
父の挨拶は毎朝これだ。可愛がってくれるのはありがたいのだが、色々と困る部分もある。
「お父様、ありがとうございます」
にこりと微笑んで受け流す。最初の頃は少し慌てていたが、さすがに毎日これだと慣れもする。
「くぅ~、やはりエミリアの可愛さは国一番、いや、この世界で一番だ!」
親馬鹿も大概にしてほしい。まあ、かつて娘を持っていたから気持ちはわからなくもないのだが……。
「陛下、そのくらいにして食事にしましょう。エミリアもお腹を空かせていますよ?」
「そ、そうか…そうだな。オホン。では食べるとしようか。天と大地の恵みに感謝を…」
今更だが、僕の名前はエミリア・アイル・デオニスと言う。今は5歳になるデオニス国の第一王女という肩書だ。
第一王子の兄はエドワード・グリム・デオニスで第二王子の兄がイルサラム・バルム・デオニスだ。
ミドルネームはどういう基準なのかよくわからない。どこかの宗教みたいに洗礼名なのかな?
一番上の兄は10歳で、二番目の兄は8歳だ。ちなみに兄弟の仲は良いので将来王位を争うことになるようなことはない。と信じたい。
この世界には大陸は僕達が住む所が一つだけで、後は小さな島があるくらい……らしい。
つまりこの大陸で一番の国ということは、この世界で一番の国と言うことになる。
僕、そんな国のお姫様なのか……。