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「お父さん!死なないで!!」

「あなた…」

 ピッピッピッピッ

 病室の中に電子音と女の声が響いている。

 ベッドに寝ているのは、僕……篠原貴文の身体だった。




 僕の人生は平凡だったと思う。

 普通の両親の元に産まれて大きな病気も怪我もなく、普通に育った。

 お金持ちでも貧乏でもない、ごく普通のサラリーマンの家に産まれて、普通に学校に通い、普通に就職して普通に結婚もした。

 恵まれたと思うのは、こんな平凡な男ながらも市の公務員になれたことと、妻と結婚できたこと、それと娘に恵まれたことであろうか。

 何の取り柄もない、どこにでもいる男。それが僕だった。

 妻とは見合いで出会ってそのまま結婚したのだが、相性が良かったのか、結婚してからお互いに愛をはぐくんだ。その結果として愛娘が産まれたのは僥倖と言えよう。

 そして僕が39歳の今、家族で一緒に出かけていた先で暴走してきたトラックから娘をかばって病院に担ぎ込まれた。

 恐らく僕は助からないだろう。

 娘が無事だった事が嬉しい。

 娘をかばったことは後悔していない。むしろ、あの場で動けなかったら一生後悔をするだろう。

 愛する妻と娘を置いて死んでしまうことは残念だが、幸いというか、保険には大きいものに入っている。きっと十分なお金を残せると思う。

 心残りと言えば、娘のウェディングドレスを見れなかったことと、孫を抱けなかったことくらいか……。

 もしも来世があるなら、また妻や娘に会えれば嬉しいと思う。

 出来れば娘の心に傷が残らないことを願う。

 ああ、もう時間がないようだ……。

 二人を残していくことを許してくれ……。


 ピッピッピーーーー

「いやぁ、お父さぁぁぁん!!!」

「あなた・・・!」

「15時36分、ご臨終です」

 僕の意識は闇に溶けた。


ちょっと思い付きで書いてみました。

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