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12/21

どうして俺の周りには変態しかいないのかと小一時間。


 こないだの日記:お茶会を開いたらエライ目に遭った。あと、サバスが復活した。


 


 「あ~、だりぃ~、仕事サボろう……」


 ファイスは机の上にのびている。

 相変わらず覇気が無いな、こいつは。

 髪とか何のかんのは滅茶苦茶だし。


 「おいおい、良いのか店長、退院早々んなこと言ってて。仕事溜まってんだろ?」


 「まあ、仕事くらいはちゃんと終わらせておいた方が良いとは思うがね」


 俺の言葉にガストさんも同意の様だ。

 すると、ファイスはだるそうに顔をあげて、


 「あ~? んなもんとっくに片付けたぜ。高々1週間分だろ~?」


 と言い、また机に突っ伏した。


 「……何でお前が店長なのか漸く分かった気がするぜ、ファイス」


 ファイスはつい先日どころか今日退院したばかりである。

 退院してから6時間、もう1週間分の仕事が終わったと言うのか。

 一体こいつはどれだけ仕事が早いのだろうか?

 まあ、それはともかく今日は久々の休みだ。

 そう言う訳で俺はファイスやガストさんと喫茶店で駄弁っている。

 ちなみに、ガストさんはミストさんに許可を得ているから堂々と駄弁っていられる。


 「しかし、今度はどういう理由で刺されたのかね?」


 「まあ、いつも通りだな。俺が離れていくのが嫌だったらしい。……ったく、最初に一夜だけ、って断ってんのによ……」 


 心底面倒くさそうにファイスはそう言う。

 何て言うか、苦労してんな。


 「ま、モテる男は辛いって奴だな」


 「……それを君が言っちゃうのかな~、ヒサっち?」


 2人で話しているとニヤニヤしながらポーラが割り込んできた。 

 コイツ、一体何を言うつもりだ?

 まあ、碌でもないことを言いそうな気配はひしひしと感じるが。


 「ちょっと聞いてよ、ヒサっちったらね、この前のお茶会で……」


 「っ!! ちょっと待て!! そいつは「え、何々!? 教えて!!」むぐぅ!!」


 拙い、ポーラが言いたいのは間違いなくシルフィのことだ!!

 だが、止めに入ろうにもファイスがガッチリ押さえ込んでいて動けん。口も塞がれている。


 「それがね~、天使の女の子に猛烈なアピールをされててね~……あれは凄かったな~ もうその場の時間が止まっちゃうくらい」


 「アピール? どんなアピールをされたのかね?」


 「あのねあのね、そのお茶会で出されたケーキはヒサっちが作ったもので、ヒサっちはその感想を聞いて回ってたんだけど、その子は食べさせあいっこしてくれたら教えてあげるって言ったんだよ」


 凄まじい勢いでマシンガントークをかますポーラ。

 やめろ、それ以上言うな!!


 「そしたら、直前になってフォーク禁止とか、ヒサっちが指で食べさせたら指をしゃぶりつくすわ、挙句の果てには自分が咀嚼したケーキをヒサっちの口に流し込むわ、もう半端じゃ無かったよ」


 ポーラが話し終わると、2人は揃ってこっちを見た。生暖かい視線で。


 「すげぇな。俺でもそんな事滅多に無いぜ?」


 「いやはや全く、情熱的な人も居たものだな。で、どんな人なのかな?」


 ……絶対に言わねえ。言ったらどうなるか目に見えてるからな。


 「小さな女の子だよ。 そうだね~、人間基準で行くと多分まだ10歳くらいかな?」


 相変わらずニヤニヤ笑いながらポーラはそう言った。


 「ポーラ!!」


 ええい、余計な事を言いおって!!

 ポーラが話し終わると、2人は揃ってこっちを見た。若干冷たい視線で。


 「……お前……そっちの気があったのか……」


 「……君が少女性愛者とは気が付かなかったな」


 「誰が少女性愛者だ!! 俺ノーマル!! 此処大事!!」


 必死で自己弁護するが、効果は薄いようだ。

 その横では元凶が腹を抱えて笑っている。


 「きゃはははは!!」


 「お前も、そこで笑ってんじゃねええええええ!!!!」


 くっそ、碌でもねえ奴らだ。今に見てやがれ。


 「ごめんごめん、実際はかなり一方的なものだったから、ヒサっちにその気は無いよ、多分。でも、将来大きくなったら危ないかも。ね、ヒサっち?」


 パタパタと手を振りながら、ポーラは俺に謝った。


 「ま、まあ、確かに可愛いのは認めるけどな……」


 認めるが、流石にあれは勘弁してほしい。

 いつか胃に穴が開く。


 「良いじゃねえか、だったら10年待ってやれよ。で、どうやって知り合ったんだ?」


 「ふむ、確かに、何の接点も見当たらない2人がどうやって知り合ったのかは気になるな。どのように知り合ったのかね?」


 2人とも俺とシルフィの馴れ初めに興味津々のようだ。

 ……ああ、思い出すだけで死にたくなる……何であんな事をしたのだろうか?


 「別に。公園で怪我して1人で泣いてるところを見つけたんで、治療した後少し遊び相手になってやっただけだ。それがまさかああなるとはね……」


 正直に言って、あの時に戻れるなら戻りたい。

 このままだと、下手するといつか捕まって一生逃げられなくなりそうな気がする。

 というか、反転すれば初対面で監禁寸前までやる程アグレッシブな性格をしているのだから、本気で一生を一つの部屋で過ごすことになりそうだ。


 「そう言えば、あの天使の子の名前何て言ったっけ? 私この間名前聞いたんだけど、忘れちゃったんだ」


 ポーラは両手の人差し指をこめかみの近くでぐるぐる回して考えながら俺にそう言った。

 お前は一○さんか。


 「シルフィだよ。俺に定期的に会わんと被害を出すとかいう話を目の前でしてただろ」


 「ほう、と言うことは貴様がヒサトだな?」


 「「「「はい?」」」」


 突如、後ろから高圧的な声が聞こえる。

 振り向くと、そこにいたのは金髪の背の高い男で、頭に角が生えている。

 ……どうやら、シルフィの親父さんと言うわけでは無さそうだ。

 ついでに言えば、結構よさげな生地の服を着ているところからかなりのお偉いさんかぼんぼんであることは間違いないだろう。


 「あの……どちら様で?」


 「何? 貴様……我の顔を判らぬと申すか!!」


 「は、はあ!?」


 俺が名前を訊くと、男は突然キレ出した。何故だ。


 「ん? そういえば、この顔何処かで……」


 何やらガストさんは彼が何者なのか心当たりがあるようだ。

 腕を組んで思いだそうとしている。


 「おお、そうだ!! 貴方はこの一帯の領主の嫡子のリオンさんではないか!!」


 「うむ、その通りだ。いかにも、余がリオン・ファフナーである!!」


 ガストさんが名前を言うと、大仰な声でそうのたまった。

 ……リオン『さん』で良いのか。こういう奴は『様』付けさせたがるもんなんだがな……


 「ああ、領主様んとこの。ところで、そこのヒサトに何のようで?」


 「うむ、そのシルフィの件で言いたい事がある!!」


 ファイスがそう言うなりリオンは真剣な表情で俺の肩を両手でつかんだ。

 俺は聞くだけ聞くことにした。

 

 「は、はあ……なんでしょうか……」


 う~む、被害を抑えるためにあいつと常にいろとかだったらどうすっかな~?

 そんな事になったら、俺速攻で胃潰瘍かなんかで病院行だよな~

 まあ、とりあえず聞いてみよう。


 「どうすれば、シルフィちゃんと仲良くなれるのだ?」


 一瞬にしてその場の空気が凍り付いた。

 ……今コイツ何て言った?


 「あ、あの……済まないがもう一度言ってくれんか?」


 「だから、どうすればシルフィちゃん、いや、出来ればヘルガちゃんとも仲良くなりたい!! どうすれば良い!!」


 心の底からそうなりたいのか、熱く俺に語りかけてくる。


 「「「「…………」」」」


 対して、完全に沈黙する俺達。

 ……無駄だとは思うが、一応確認しておこう。


 「あ~、1つ質問だ。お前の好みの女性って、どういう人だ?」


 すると、リオンは不適に笑って、


 「良くぞ聞いてくれた!! 良いか我は……



 ――――15歳以上の女性に興味は無い!!!!!」




 あんまりな発言に俺は思わず頭を抱えた。

 ……駄目だコイツ、力強く断言しおった。

 そんな事を公衆の面前で誇らしげに大声で叫ぶか、普通?

 あ~あ、もう周りの空気氷点下だよ……


 「で、どうなんだ、どうすれば仲良くなれるんだ?」


 そして全く空気を読む気が無い次期領主。

 とりあえず、コイツには言わないほうが良いだろう。

 大真面目な顔で問いかけるコイツに一言言おうとしたその時、


 「お兄様!! こんなところで何をしてるんですか!!」


 と言う声が飛んできた。

 ……なんか来た。

 来た女性は長い金髪の頭に角が生えている。

 先ほどの発言から考えて、どうやら妹らしい。


 「む、どうした、リアン? 余に何か用か?」


 「もう、お兄様ったら!! あれ程後で一緒にお話してくださるって約束したではないですか!!」


 リアンと呼ばれた彼女は頬を膨らませながらそう言った。


 「む? そうだったか?」


 「そうです!! さあ、早く参りましょう? 2人っきりでじっくりお話をしましょう?」


 しらばっくれるリオンになおも食ってかかるリアン。

 ……今度はブラコンか?

 しかし、何か様子がおかしい。

 リアンが現れてからと言うもの、リオンの顔色がみるみる悪くなっていく。どう言うことだ?


 「ま、待ってくれ!! せ、せめて彼と少しだけ話をさせてくれ!!」


 リオンがそう言うと、リアンはこっちをチラリと見て、


 「……良いでしょう。では、思う存分話し合ってください。私はそこに居ますから」


 そう言って、リアンは脇にある椅子に座った。

 リオンは、軽く溜息を吐いて俺に話しかけた。

 ……何やら熱い視線を感じるが気にしない事にする。


 「で、どうするのだ? どうすれば仲良くなれるのだ?」


 大真面目にそう聞いて来るリオン。

 ……少女たちの平和のためにも、此処で理由を言うわけにはいかないな。


 「あ~、生憎だが、今のアンタにゃ言えんわ」


 「な、何故だ!! 何故言えんのだ!?」


 「いや、だってアンタ、普通に聞くとかなりの危険人物だぞ?」


 「貴様、我を愚弄するか!!」


 そう言うなりリオンは掴みかかってきた。

 俺はリオンに押し倒される形で床に転がった。


 「言え!! どうすれば良いのか我に言うのだ!!」


 「奴等の平和のためにも、アンタには言えん!! て言うか、大体なんで俺の名前知ってたんだ!?」


 「そんなもの、シルフィちゃんの周辺を調べ上げればすぐにわかる!!」


 「この変質者が!! 絶対に言ってたまるか!!」


 そうやって2人で言い合っていると……




 「お兄様があの殿方を押し倒して……きゃー♪♪♪」




 「「「「「…………」」」」」


 リアンの突然の叫びは氷点下どころか絶対零度の世界を作りだした。

 おい、誰かあの腐女子を止めろ。

 リアンはどうやら801がお好みらしい。

 こいつ等揃いも揃ってなんちゅう兄妹だ。

 これに関してはリオンも沈黙している。

 ……ああ、そういうことか。

 リアンの言う2人っきりのお話っていうのは、リオンとリアンではなく、リオンともう1人の誰か男と言うわけだ。多分。


 「……アンタ、苦労してるな……」


 「言うな。時々あまりの無様さに死にたくなる……」


 俺がそう言うと、リオンは両目から滝のように涙を流してそう言った。


 「さあ、お兄様? そろそろ帰らないと、夕食の時間に遅れますわよ? まあ、どうしてもと言うならば、まだその殿方と抱き合ってても宜しいですけど」


 その言葉に慌てて飛びのくリオン。

 飛び退いたところを素早くリアンに捕獲され、いつの間にか外に着いていたリムジンに乗せられる。

 リオンがリムジンの中に消えたかと思えば、リアンがこっちに寄ってきた。


 「貴方のお兄様との一幕中々に良い絵でしたわよ? 貴方、お名前は? 何処でお仕事をなさってるのかしら?」


 寄って来るなり俺の手を握ってそんな気色の悪い事をのたまうリアン。

 えらく力が篭っている。どうやら俺が名前を言うまで放す気は無いようだ。


 「永和だ。粟生永和。フローゼル邸で執事をやっている。」


 すると、突然リアンの目の色が変わった。


 「フローゼル? ……そう、貴方、シリアのところの執事なの……ふふふ、面白いですわ。貴方にも家に来て頂きましょう」

 

 新しいおもちゃを見つけたような顔でそう言うや否や、リアンは俺を脇に抱えてリムジンに乗り込んだ。

 

 「は? ちょ、おい!!」


 「あの、シリアが気に入ってる執事ね……こんなに面白い材料ありません。さて、シリアはどんな顔で私の家に飛び込んでくるかしら? ふふふ……楽しみですわ……」


 真っ黒な笑みを浮かべてリアンはそう言う。

 ちなみに、俺は逃げられない様にしっかりブロックされている。


 「シリアに何か恨みでも有るのか!?」


 「いえ、ありませんわ。でも、普段見られない顔が見られるって言うもの面白いものですわよ? さ、貴方はそこで寝ていてください」


 そう言って、俺は見動きすら封じられ、リムジンの後部座席に転がされた。

 すぐ前の席から、リオンの声が聞こえる。


 「教えろ~、教えろ~、今すぐに仲良くなる方法を教えろ~……」


 ……この場で胃潰瘍になりそうだった。



 *  *  *  *  *



 ファフナーの館に着くと、ウチんとこの館と甲乙付けがたい規模の庭が出迎えた。

 俺は拘束されたまま、その一室に放り込まれ、椅子に座らされた。

 リアンは、俺の対面に椅子を置き、そこに座った。


 「さて、貴方にはしばらくこの部屋に居てもらいますわよ」


 極めて優雅な態度で俺に話しかけてくる。

 口調こそ兄に似て高圧的だが、その実、人の扱いは丁重で不快感を感じさせない。……拘束されてなければ。


 「1つ質問だ。この後の俺の処遇はどうなってるんだ?」


 「扱いとしては客人ですわ。ですから、当家の使用人にも相応の扱いをするように言ってありますわ」


 「まさか、アンタの兄と同じ事を?」


 「いいえ、私はあくまでお兄様が絡むのを見たいだけですわ。お望みならその通りに致しますわよ?」


 「全力で遠慮させてもらう。だから息を荒げるんじゃない」


 「……それは残念ですわ……」


 心底残念そうにリアンはそう言った。

 ……なるほど、ブラコンで兄限定のやおい好きかよ。

 痛いにも程があるが、そのお陰で助かるんだから目を瞑っておこう。


 「でも、シリアの前で貴方に色々してみるのも面白いかもしれませんわね。さて、どうしましょうか……」


 妖しい笑みを浮かべて席を立つリアン。

 おいおいおい、何を抜かすかこやつは!?


 「俺に一体何をする気だ!?」


 「そうですわね……シリアの性格から言って……ふふふ、ヴァンパイアのお株を奪うのも面白そうですわね」


 リアンは、白くて細い指を俺の首に伸ばしてきた。


 「何を言ってやがる!!」


 俺がそう言った瞬間、館全体に轟音が鳴り響いた。

 どうやら、何かが爆発したらしい。


 「な、何だぁ!?」


 「これはまた随分速い到着ですわね。さてと、モニターとカメラを……」


 リアンがリモコンを取り出して何やら操作をすると、目の前にカメラとモニターが現れた。

 モニターには、あらゆる角度から玄関の様子を捉えた画像が映っていて、そこには1つの人影があった。


 「リアン!! さっさとウチのヒサトを返せ!! さもなくば、この館ごとぶっ飛ばす!!」


 モニターが切り替わり、声の主、シリアを真正面から捉えた画像と、背後から捉えた画像のみになった。

 どうやらシリアの真正面には巨大なモニターがあるようで、そこには俺とリアンが映っていた。

 シリアはあの研究室で開発したのだろう、白衣の上にコマンドーも真っ青なフル武装で来ていた。

 ……まあ、とりあえず落ち着けな、シリア。

 館ごとぶっ飛ばすって俺も巻き添え喰らうから。


 「あらあら、まさかそこまで怒るとは思いませんでしたわ。でも、身内を守ろうとする良い顔してますわよ」


 シリアに挑発的な態度を取るリアン。

 そう話したところで、突然リアンはこっちに小声で話しかけた。


 「ところで、貴方はヴァンパイアですわよね?」


 「あ、ああ、そうだが……」


 一体何をしようと言うのだろうか?

 リアンは再びシリアと向き合った。


 「ふふふ、こんなことをしたらどういう顔をするのかしら?」


 そう言うと、リアンは突然俺の首に齧りつき、そのまま食いちぎった。

 辺りには俺の血が飛び散り、見るからに凄惨な状態になっている。

 ……いや、家では心臓貫かれたり、首斬られたり、もっと悲惨な目に遭ってるけどな。


 「うぎゃあ!! 何しやがる!!」


 「なるほど、シリアが言うとおり、確かに美味しい血ですわね。それに、何て美味しいお肉でしょう。さあ、早く来ないと全部食べてしまいますわよ?」


 指に着いた俺の血を舐めとりながらリアンはモニターの前のシリアを挑発する。

 こら、煽るんじゃない!! そんなことしたら俺まで巻き添え喰らうだろうが!!

 モニターを見ると、シリアは何やら俯いている。

 しばらくすると、


 「あっっっっったまきたああああああああああ!!! リアン、アンタはアタシがぶっ飛ばす!!!!!!」


 と館中に響くような声で叫んで、手にしていたライフルのような物のトリガーを引いた。

 放たれたのはビームだった。そして、あろう事かシリアはそれを撃ちっぱなしのまま1回転しおった。

 直後、俺の足場が大きな音を立てて崩れだした。

 大黒柱だの、全ての柱を切断したのだから当然である。


 「やりますわね、ならば私も答えるとしましょう!!」

 

 リアンは、何処から取り出したのか、大きな斧とサブマシンガンを取り出し、俺を置いたまま崩れ去る館を脱出した。

 その直後、屋敷は崩壊した。


 「何でこうなるんだあああああああああああああああああ!!!!!!」


 ……俺を巻き添えにして。



 *  *  *  *  *



 館の崩壊が止まり、眼を開けると異様な光景が広がっていた。


 「はああああああ!!!」


 「せいっ!!!」


 2人は激しい戦闘を繰り広げていた。

 シリアは、ビームで牽制しながらビームサーベルと言うべき剣で斬りかかっていた。

 対するリアンは、中遠距離ではサブマシンガンを撃ち、近距離では蹴りをアクセントに加えながら白熱した斧で斬りかかっていた。

 ちなみに、服は俺の血で真っ赤に染まっている。

 ……いい、皆まで言うな。誰がどう見たって白い何たらと赤い何某かの戦闘にしか見えん。

 ふと、横を見るとリオンがいた。


 「全く、彼女が遊びに来ると碌な事にならんな」


 呆れたと言う風に溜息をつきながらリオンはそう言う。


 「……遊びか?」


 「ああ、そうだ。2人は学校の同級生なのだが……女子であると言うのにこういう戦争ごっこが好きでな」 


 そう話している間にも、ロケット弾が残骸を吹き飛ばし、ナパームが周囲を焼き払っている。

 誰がどう見ても戦争である。

 

 「どう考えても本気にしか見えんが……」


 「まあ、どうでも良いだろう。いつもの事だ」


 いつもの事なのか。此処の修理費とか誰が出すんだ?

 まさか税金じゃねえだろうな?


 「ところで、いい加減にどうすればあの2人と仲良くなれるか教えるが良い」


 今までの話を全てぶった切ってリオンはそう言った。

 ……空気読め阿呆。


 「却下だ黙れ」


 「何だと!? 我が此処まで下手に出ても駄目なのか!?」


 「それの何処が下手なんだよ!! 完璧に上目線じゃねーか、ロリコン!!」


 「ロリコンと言うでない!! ペドフィリアと呼ぶが良い!!」


 「ちっとも変わんねぇだろ!!」


 「ええい、つべこべ言わずにとっとと教えるが良い!!」


 そのまま取っ組み合いになった。

 くそ、こいつ割と力強いな。

 マウントポジション取られちまった。


 「さあ、さっさと教え……「またお兄様とヒサトが……きゃあ♪♪♪」…………」

 

 「…………」


 その状態のまま俺達は固まった。

 本当に勘弁してくれ。一瞬で世界が凍りつくから。

 シリアも唖然としてんじゃねえか。

 しばらくして、我に返ったシリアがハリセンの一撃でまだ身悶えてるリアンを沈めた。

 ……そのハリセンは何処から出した? と言うか、ビームサーベルはどうした。


 「……空しい勝負だったわ。さあ、帰るわよ、ヒサト」


 そう短く告げると、俺の襟首を掴んで背中の装備で空を飛んだ。

 下でリオンが何か喚いてるが聞かないことにする。


 「全く……リアンがあんな奴だなんて思わなかったわよ……」


 シリアが空を飛びながらぼやく。


 「普段はどんな奴なんだ?」


 「普段は私とあんな感じでじゃれ合う事が多いんだけどね。今日のは少しやりすぎだわ。今度しっかり釘刺しておくから」


 一刻も早くそうしてもらいたい。 

 大体なんだって俺の周りには碌な奴が集まらないんだ?

 ホントに1回死んでくれ、神様。


 「いつもあんなことしてんのか?」


 「いつもじゃないけど、まあそれなりにはしてるかしら? ストレスが溜まったりした時には丁度良いしね。」


 何て事の無いようにシリアはそう言った。

 どうやら、本当に普段からあんな事をしているらしい。


 「そうかい。だったら今度は俺の居ないところでやってくれ。正直言ってあんなんに巻き込まれたら堪らん」


 「はいはい、とりあえずさっさと帰るわよ。 あそこにいたらヒサトの方が危ないわ」


 同感だ。あそこに居たら速攻で入院できる自信がある。

 折角の休みだが、今日はもう大人しく帰ろう。もう身も心も疲れ果てた。




 ――――――あ、そういえば、紅茶の代金払ってないな。  

 変態領主ども推参。

 何でこいつらがムショ送りにならないのか。


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