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『春のご挨拶』-2-

「お嬢様、主様が起きられました」


「え!?もうですか?」


 抑揚のない声と、幼い子供特有の高い声が広い厨に響き渡る。

 白くて長い髪を高い位置に括り、薄い水色に桜の花が描かれた着物、その上に白い割烹着を着た少女は、あわあやと慌てだす。

 窓に目を向けて太陽の位置を確認すると、すっかり日が昇り、巳の刻を過ぎてしまっていることに気づく。


「い、急いで完成させないと!」


 少女の手元を見ると、3段重ねの重箱が広げられており、周りには沢山のおかずが置いてある。

 式神に手伝って貰いながら、お弁当を作っている最中だったようだ。

 既におかずは完成していた為、あとは重箱に詰めるだけ。ああでもない、こうでもないと言いながら、少女は手際よく、彩りなどを気にしながら詰めていった。


 1段目の上の方には、少女の小さな手で握られたであろう、可愛らしいサイズの手毬おにぎり。

 紫蘇と枝豆を混ぜ込んだものと、鮭とわかめを混ぜ込んだ2種類のおにぎりを交互になるように詰めていく。

 下の方には稲荷寿司を詰め込んでいく。中のご飯には紫蘇と胡麻を混ぜ込んである。

 おにぎり達の間には、花形に飾り切りされたミニトマトや、塩茹でにしたブロッコリーをバランスよく置いていく。


「お嬢様、こちらも入れてみては如何でしょう?」


 式神がそう言いながら手渡ししたのは、桜の形にくり抜かれたラディッシュの甘酢漬け。


「わぁ!かわいい!」


 少女は嬉しそうに声を上げてからお礼を言い、ブロッコリーに添えるように置いていった。


 2段目の重箱には、式神たちに揚げてもらった唐揚げやポテトを詰めていく。

 唐揚げは、醤油と塩の2種類を。ポテトは軽く塩で味付けをしてある。

 揚げるのも少女がやろうとした裏話があるのだが、式神たちの連携で油から遠ざけられてしまい、揚げ物には味付け以外関わらせて貰えなかった。

 その代わりに、卵焼きを任され甘めの卵焼きとだし巻き玉子の2種類を作っていた。

 焦げも破れも無く、とても綺麗な卵焼きが出来、いつも作っているのがわかる出来栄えだった。

 だし巻き玉子の方はそのまま切り、断面を見せるように詰めていく。

 甘めの卵焼きの方は、花の形に加工されているので、形が崩れないように切ってから立てて詰めていった。


「上手く出来てますよね!でも、色が茶色と黄色しかない…緑が欲しいかも……?」


「そうですね」


「余っている、枝豆を隙間に入れてみては如何でしょう?」


「ピックに刺しておけば食べやすいですよ」


 少女の言葉を聞き、式神たちが答えながら用意していく。凄まじい連携に少女はニッコリと笑顔を見せる。


「わぁ!とってもいい考えです!トマトも余ってますよね?それも入れちゃいましょ!」


 彩りよく添えられていく枝豆とミニトマト。

 茶色と黄色だけだった2段目に、緑と赤が入ったことにより華やかになった。

 上手く出来たのことを喜ぶ少女と、それを褒める式たち。そんな彼女たちの後ろから声が掛かった。


「騒々しい、何の騒ぎだ」

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