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おせっかいな私と、それに輪をかけておせっかいなうえ、仲間の恋を成就させることが病的に好きなルイさんは、その後ビールをがぶがぶ飲み、あの売り子さんが私たちの席の近くに来るたび彼女を呼んでビールを買った。ルイさんは彼女が紙コップにビールを注いでいる間、しきりに話しかけた。
「ねえ、こいつだけビール頼まないわけが分かる?」
ルイさんは由紀人くんを指し示して売り子さんに聞いた。売り子さんは小首をかしげて、
「え、お酒飲めないからじゃないんですか?」
と由紀人くんを見て言った。由紀人くんは引きつった微笑みを必死に顔に浮かべていた。
「はずれ! 分からない?」
ルイさんが重ねて聞いた。売り子さんはビールを私に渡し、続いてルイさんのビールを注ぎながら、
「うん……もしかして、格闘技とかやられている方ですか?」
と言った。
これにはルイさんが驚いて、少々興奮ぎみに、
「そうそう! 当たり! すごいな、なんで分かったの? こいつプロのキックボクサーなんだよ。七月に試合があるから、禁酒してるんだ」
と言った。
売り子さんは目をしばたたかせた。こげ茶色の瞳が妖しく光った。
「へえ、すごいですね! お連れ様もキックボクサーですか? 雰囲気がそうっぽいなと思ってました」
と言った。ルイさんは若いころの魔裟斗選手のように、肌を黒く焼いて金髪、いかにもキックボクサー然とした見た目なのである。
ルイさんは、自分は元プロで今は指導者をしていると説明した。私は、自分は二人と違ってただのアマチュア選手だ、と控え目に話した。売り子さんは、すごいですね、試合がんばってくださいね、と歯茎の見える微笑みを浮かべて由紀人くんに言って、再び去っていった。由紀人くんはまごまごしていた。
もう他の売り子には目をくれず、数十分に一回彼女が席の近くにやってくるのを狙い続けて、来たら毎回のようにビールを買った。彼女と接触するとルイさんがほがらかに彼女に話しかけ、笑わせ、距離を徐々に詰めていった。そしてとうとう試合も押し迫った八回の巨人の攻撃中に、私たちは由紀人くんのLINEIDを書いたコンビニのレシートを、彼女に渡すことに成功したのであった(あいにく私たちは適当な紙片を持っていなかったので、レシートの裏に連絡先を書かざるを得なかった)。
由紀人くんは後日再び彼女に会って、今度自分が出場する試合のチケットを渡し、観戦しに来てもらうという約束を取りつけた。




