1-02話 これが魔王城ですか
魔王城の一室に突如現れた魔王達。
お互いの自己紹介を終え、いざ魔王城探索へ!
魔王城を探索すると決めた魔王4人。
先程まで座っていた長机の端の方に目を向けると、大きな両開き扉が1つある。
ここから廊下に出られそうだ。
クラウスが人喰い宝箱のビッグを持ち上げて扉に向かう。
「ビッグ、廊下に出るのは初めてか?」
ビッグは少しだけ蓋を開け、返事をする。
「廊下には出たことがありません。ずっとこの部屋にいましたので。」
「嘘だろ?」
クラウスが少し呆れながらも思慮を巡らす。
確かに宝箱は自分では動けないから外に出られないか、とひとりでに納得しながら扉を開ける。
「うおっ、まぶし。」
少し空いた扉の隙間から光が差し込む。
「ぐあー目がー、とはならなくてよかった。」
レインがふざけている。
「うーん、この状況は良くなさそうだね。」
スノウが扉の外を見ながら一言つぶやく。
「あれ?廊下じゃなくて、外じゃないこれ?」
クラウスは扉の外一面に広がる毒沼を見ながら、後ろにある魔王城に思いを馳せる。
こりゃ魔王城も作らなあかんなこれ。
ライトが少しだけ声を張り上げる。
「嘘だろ。このプレハブ小屋が魔王城だなんて信じられない。もっとすごくあれよ。おかしいだろこれ!!」
「吾輩もそう思います。」
「だよなあ!魔王城くらいサービスしてくれてもいいだろうがよ!なあ!」
「吾輩もそう思います。」
「ぅぅんお前はだれだよ!!」
ライトが知らない人骨とノリツッコミをしている。
え、だれその骨。
「先代勇者のアルですよ、まさか私をご存じない?」
「知らないよ!今日生まれたばかりの魔王なんだから!赤ちゃんと同じだよ赤ちゃんと!説明して!」
ライトは取り乱し続けている。
見た目はザ人骨という感じで肉や皮は全く残っていない。
身長も人間にしてはかなり高めになっており、生前は勇者としての箔もあったであろう。
人骨は何やらガサガサとお腹あたりにある袋を膨らませて、袋に空気を充満させている。
肺の代わりのようだ。
その袋をゆっくり潰しながら話を続ける。
「改めまして、先代勇者のアルと申します。先程吾輩と言っていましたがキャラ付けです。普段は私と言っています。よろしくお願いします。」
「これはどうもご丁寧に。こちらはライトと申します。ってなにも情報増えてないから!一人称でふざけてたことしかわからんから!もう少しなんか喋って!」
ライト、ご乱心中。
「うーん、特に話すことないな〜。前回の魔王に負けて、魔物に世界を半分奪われた大戦犯勇者に何を聞きたいの?」
人骨は袋を器用に操りながら発話している。
地味にすごい。
「だいぶ情報増えたな。ありがとう。2つ質問いいかな?なぜ人骨になって生きているのかと、人間から見た魔物とか魔王へのイメージってどんな感じか教えてくれるか?」
人骨ことアルは毒沼の方を見ながら、言葉を考えている。
「すまない、踏み込んだことを聞いているかもしれない。答えられる範囲でいいから。」
と、スノウがサポートに入る。
「いえ、どう説明しようか迷っていたところです。ただ、私が回答する前にこちらの質問に答えて欲しい。」
逆にアルから質問が投げかけられる。
「なぜ魔王が4人もいる?そして、何を目的としている?人間を滅ぼすのか?」
アルは魔王を警戒している。
先代の魔王に負けたと言っているくらいだから、魔王を警戒することは当然だろう。
もし、自分の発言が魔物サイドに有利に運ぶものとなったら目も当てられない。
人間を絶望に陥れる経験は一度で十分だ。
クラウスが一歩前に出る。
「私はクラウスだ。我々は先程生まれた。なぜ魔王が4体生まれたのはわからないが、同じくして勇者が4人生まれているだろうからと判断した。魔王の方向性としては、勇者と和平を結ぶことを最優先としている。和平が結べないもしくは条件が良くないと我々が判断した場合には、戦いを選べるように準備を進めようとしているところだ。回答になっているか?」
クラウスは嘘をつかないことを選択した。
先代勇者を説得できずして現代の勇者は説得できないと考え、素直に打ち出した時の反応を見たいと思っての行動のようだ。
アルにはクラウスが本当のことを言っているように聞こえたが、まだ警戒は解けない。
「回答になっている。こちらも答えよう。骨になっているのは先代魔王の呪いだ。人間の街が滅ぼされる様を見届けられるように、何もできない人骨の姿で彷徨うように呪いをかけられた。そういうこともあり、私の時代では、魔王は完全な悪のイメージだ。容赦もなく慈悲もない。人口の何割が魔王の被害にあったからわからない。とても和平だなんて信じられないかな。悪いけど。」
アルもまた本心で返した。
この4体の魔王は悪そうには見えない。
が、どう考えても自分が4人いても勝てそうに思えない。
嘘をついてもなんらかの方法で記憶を読まれる可能性もありそうだと、後ろ向きな理由も加わって素直に回答した。
クラウスは少し考える素振りを見せ、話し出す。
「話してくれてありがとう。先代の戦いがどうだったとかはわからない。しかし、今の話を聞いて、和平を諦めるのは勿体無いと感じた。こうして我々とアルが会えたのも何らかの思し召しかもしれない。少しだけでもたまに話し相手になってもらえないだろうか?」
仲間になってもらえなさそうなので、相談相手という形で人間の思考を持つ魔物?をキープしておきたいようだ。
「アルが仲間になりたそうにこちらを見ている。」
アルが仲間になりたそうにこちらを見ている、と発言したようだ。
何言ってんだこいつ。
「うーん。なんか変わり者だな、アルは。」
スノウが引いている。
「仲間にするの?しないの?どっち?!」
なぜかアルが切れている。
身振り手振りが加わって、カタカタと鳴っている。
「します!しますよ!よろしくね。」
ライトが元気に返事をする。
と同時に気になった点について質問をする。
「ちなみになんで魔王の仲間になりたいの?」
「暇だったから。ずっと。なんもない毒沼45年も眺めてたらね、飽きて心が壊れちゃうよ。久しぶりに話しかけられたらね、相手が魔王だろうがなんだろうがね、仲間になっちゃうよ。」
謎の理論で元勇者のアルが仲間になった。
「で。魔王城探索終わっちゃったわけだが。」
ライトがすこし寂しそうにつぶやく。
「一応魔王城の外周というか全体像を見てみますか?」
ビッグがアルの様子を伺いながらも発言する。
アルがビッグが喋ったことを認識し、クラウスに駆け寄る。
「うわ!ミミックだ!!メダルをよこせ!!」
「やめてください!」
「へへっ、勇者の血が騒ぐぜぇ〜。2回攻撃できる剣と交換してもらおうかな〜。おい!!」
「そんなこと言ってると食べちゃうぞ〜!」
魔物と魔物がイチャイチャしている。
楽しそう。
2人ともテンション上がりすぎて宝箱はバクバク言ってるし、人骨は袋に空気入れ忘れてて声カッスカスになりながら戯れている。
「おーい、一周してきたけど何もなかったぞ〜。」
どうやらレインが一周してきてくれたようだ。
「簡単にいうと、魔王城、一部屋だけしかなかったよ。ギミックもなし。食べ物もなし。」
あれ?魔王サイド、思ったよりも準備されていない感じかな?頑張って準備しないとだな。
「ひとまず、何もないことがわかってよかった。解散しようと思ってたけど、食料問題だけは解決してからの方が良さそうだね。」
スノウが即座に判断を下す。
スノウはそのままアルに向き直ると45年もこの辺りにいたであろう知見あるものに話しかける。
「この辺り、食べれそうなものある?」
「知らないよ。私は骨だから食べないんよ。」
魔王達、早くも食糧難。
次は勇者編です。
アルというキャラは出すつもりなかったけど、魔王城の外に出たら勝手に出てきた。なんだこいつ。




