1-01話 2つのはじまり
初作品です。よろしくお願いいたします。
ここに4人の勇者が集った。
彼らは魔王を打倒すべく、この始まりの地より旅が始まる。
長ったらしい王の祝福を受け、勇者たちは魔王討伐に向かう。
「ってな感じで始められるか!おかしいだろ勇者4人は!」
思わずツッコミを入れてしまう俺。
始まりの地の西出身の主人公であり、勇者だ。
「ユーリィ、もうしょうがないだろ。行くしかないよ。もうその話は何度もしただろ。」
こいつは始まりの地の東出身、勤勉な勤勉太郎だ。
名前はカイナ。
将来立派な銅像にでもなるんじゃないか?
「レベルアップしても覚える技とか同じなのかな?ステータスの伸びとかも同じかもね〜。」
始まりの地の南出身、オルフェは呑気なことを言っている。
お前はもう少し危機感を持て。
「役割を臨機応変に変えられる分、物語にあるテンプレパーティよりは強く出れそうだな。」
始まりの地の北出身、ハイドは冷静に分析している。
こいつに冗談は通じない。
にしても男4人か。
いわゆる勇者、戦士、僧侶、魔法使いの4人パーティを組めないのは残念で仕方がない。
16歳の誕生日に勇者の紋章が浮かび上がった時には、妄想に妄想を重ねて喜んでいたというのに現実はこれだよ。
王様に呼び出されてみたら、俺と同じ境遇のやつが3人。
王様曰く、勇者4人は初めてのパターンらしい。
魔王が復活することに合わせて勇者が選ばれるのだが、なぜだか4人同時に選ばれたとのこと。
なので勇者送り出しの儀式の裏準備が大変だったらしい。
旅立ちの装備を一律用意していただけたのは大変ありがたい。
さらにお金も1年は暮らせる金額を支給してくれた。
始まりの地のみんなには感謝だ。
「じゃあ行きますか。」
俺たち勇者4人パーティが始まりの地から旅立つ。
一方その頃魔王は、、、
「初めまして、魔王です。」
「こちらこそ、私も魔王です。」
「どうも、魔王です。」
「奇遇ですね、ここにも魔王ですよ。」
魔王もまた4体存在していた。
魔王城の一部屋に魔王4体が長テーブルに集まり、顔を突き合わせている。
「え、どうするのこれ?王様とかいたら送り出してくれるけどさ、我々がその王様の立場だから自分たちで色々決めないとじゃない?」
「確かに。魔王って配下のメンバーの育成とか配置とかで迷うと思ってたけど、自分たちの存在に悩むことになるとはね。」
「しかもパッとポップした感じだから周りの環境とか仲間とかがどうなってるとか何もわからないよ。」
「ちょっと待って、誰が喋ってるかわからん。名前決めよ、名前。」
「そうしよう、なんか案ある?」
色々話した結果、スノウ、クラウス、ライト、レインとそれぞれが決めた。
スノウが話を切り出す。
「役割を決めませんか?ぱっと思いつくのは相手の動向とかを探る役、モンスターの育成や配置を行う役、食べ物の調達や料理役とかかな?」
「いいと思う。ただ、今後の方針とか大まかな道筋とかないとうまくいかない気がするから全体統括する役割も必要かなと。」
クラウスが賛同する形で意見を出す。
「うーん、みんな特に特性とかなさそうだし、エイヤで決めちゃって良さそうだね。」
「いいね、じゃあ一番初めに話題を出したスノウがリーダー、調査がクラウス、育成がライト、食べ物が僕で。」
一同賛成。
魔王軍、混乱も少なくあっさり役割を決め終わる。
「さっそくだけど、魔王の今後の方針を決めたいと思う。ただ、独断での決定は良くないと思うのでみんなから意見を集った上で決定したい。一番初めの大方針だからね。」
スノウがさっそくリーダーとして動く。
「いいと思う。俺の意見としては、人間に対してどう出るか迷っているところもあり、今までの過去経緯とか調べてから決められると安心かなと思ってる。個人的には世界を征服するとかが目標だと嬉しいかなと。」
クラウスは腕を組み、顎の下に手を当てながら、言葉を選んで発言する。
定まらない目線を泳がせていたらふと近くの宝箱に気がついた。
「お、みて!いわゆる宝箱だ。なにか有用な情報が入っているかもしれないから開けてから話を続けないか?」
と言いながらクラウスは箱に近づいていく。
「おい、気をつけろよ。一応魔王城っぽい感じの一部屋にある宝箱だからな。何があるかわからんぞ。」
ライトが心配そうに声をかける。
クラウスは警戒しながらも宝箱を開けようとしたその時。
ガブリ!!
「ぐあぁぁ」「おお!!ミミック!」「すごい初めて見た」「いい食いつきや!ええガブガブや!右腕イカれたか?」「牙鋭いな」「これは宝箱と見分けつかんな〜」「これ仲間なんだよな」「しらん。」
「少しは俺の心配をしてくれ!!」
クラウスは血だらけになっていない右腕を見ながらリアクションをしている。
「ノーダメージとは、さすが魔王様ですね。」
「そうだろ、一応生まれたてでも魔王だからな。って喋るんかい。」
宝箱がバクバクと音を出しながら話している。
「僭越ながら最初のサポートを承りました人喰い宝箱のビッグと申します。」
「うーん、怪我の功名。せっかくだし、会議に参加してもらうかな。」
「はい、承知しました。あっ、議事録も取りますね。」
「ありがとう。」
なんか秘書的なポジションに宝箱が存在しちゃうけどまあいいか。
クラウスが宝箱を机の上に乗せてあげる。
置く時にガチャリとニブイ効果音が鳴る。
一応鉄製っぽい。
「さっそくだけど、4人魔王が誕生したこととか人間と魔物の関係性とか教えてもらえるかな?」
スノウが人喰い宝箱のビッグに聞く。
「はい、まず私は魔王城に住み着いている一般魔物なのであまり外の世界には詳しくはありません。その上での発言になるので参考程度でお願いします。」
ライトが早く聞きたそうに食い気味に相槌を打つ。
「それでも何もないよりはありがたいよ。」
ライトも外の世界に関して気になっているようだ。
「基本的には勇者と魔王は一対一になるようになっています。そして今回は4体の魔王が生まれました。」
「ってことは、相対する勇者は4人いると考えるのが良さそうだね。」
「そう思います。」
宝箱とライトが真面目な会話をしている。
側から見ると宝箱と会話しているのは結構シュール。
まあいいけど。
「人間と魔物の関係性で言うとそこまで良いものではないと思います。我々を倒すことで人間は生物としての成長ではなく、スキルやパラメータが上昇する経験値を得ることができます。なので経験値狩り、として狩られる魔物が多くいます。」
「なるほど、人間が強くなるための糧として我々魔物が存在するわけだな。」
「はい、ですがその一方的に狩られる立場は嫌だと言うことで反抗している勢力も魔物側にいます。人間の村や街を襲い、甚大な被害が生じてるところもあります。」
「なるほどね、そういう魔物をどうすべきかも考えないとかな。」
ライトは育成担当なので、暴れている魔物などにもコミュニケーションを取らなければならないと考えると少しだけ気持ちが沈んだ。
「ああ、ごめん。で、まとめると一部が争ってるけど大掛かりな戦いとかはないって感じかな?」
「そうなります。しかし、今回の魔王誕生で話は変わってきます。」
「ん?どう言うこと?」
クラウスが割って入る。
対人間への戦略などを考えるクラウスにとっては気になるポイントだろう。
「はい、魔王が発生することで一部の強力な魔物は強制的に暴走モードに入らされます。つまり、魔王様がいくら止めても人間を襲いに行きます。いわゆる魔物のボスが各地で生まれます。」
「ボスは止められない?」
「説得は難しいと思います。一部は知性のある魔物もいるので説得を試みる価値はあるとは思います。魔王様がいる限り一定間隔でボスは生まれてき続けます。」
「なるほど、理解した。我々魔王が何をしようが人間との戦いが発生するように世界に仕組まれてる感じか。人間に事情を話しても、定期的に魔物のボスに何人か殺されるかもだけど許してね、と説得するにも無理があるか。」
「その通りです。」
宝箱ビッグのお陰で世界の仕組みが明確になってきた。
勇者は4人、魔王は4体。
人間と魔物は各地で小競り合いがある程度だったけど、魔王が生まれたことによって各地に魔物のボスが誕生。
これから人間を定期的に襲い続ける、と。
スノウが話を続ける。
「ビッグ、ありがとう。みんな、ある程度世界観がわかってきたところでどうしたいか決まってきた?」
「はい、とりあえず世界征服というよりかは、わずかに可能性のある和平の道を探しつつ、勇者に打ち滅ぼされないように我々も鍛えておく感じが良さそうかと。」
クラウスは、はじめとは意見を変えたようだ。
「私は魔王軍をそれなりの軍隊にすることが直近の目標かな。暴れる魔物のボスを武力で止められるようにもなるかもだしね。最終的には私も和平かな。ただ、和平の着地点として我々が勇者に負けて終わりは嫌かな。」
ライトも意見を述べる。
2人とも和平寄りのようだ。
「俺は和平はどうだろうなと思う。わざわざ魔王が誕生したということを考えると人間を滅ぼさないといけない理由があるような気がする。それを探りつつ和平や戦争どちらになっても良さそうな準備をしておきたいかな。」
レインはどっちつかずな意見を述べる。
「みんな意見をありがとう。せっかくだからビッグの意見も聞きたいかな。」
「僭越ながら。和平は難しいと思います。理由としては勇者か魔王、どちらかが負けない限り戦いは続くことになるからです。勇者に全てを説明しても信じてもらえるとは思えません。なんせ交渉の相手が魔王様になりますからね。信頼されないと思います。」
「ありがとう。私も自分の意見を述べる。結論としては和平の条件を探りつつ勇者を殲滅し、魔物の世界とすることを目指したい。なんせ魔王なので。」
スノウは勇者と戦う意思を皆に示す。
クラウスは少し考えたのち、周りの様子を伺うように発言する。
「いいとは思う。ただ、和平を簡単には諦めたくはない。戦いの準備するのと同時に和平への道を探ることの許可が欲しい。」
「それに同意かな。配下を育てる方針として、峰打ちなどの殺さない術も学ばせる必要がありそうだけどね。」
ライトもやはり和平への道は諦めてない様子。
「うん、であれば魔王軍としては和平第一、可能性がなさそうであれば即勇者の殲滅ができるように準備を両立する形でどうだろうか?」
スノウが最終結論を出す。
特に反論はなく魔王の方針は決まった。
議論がひと段落して少しの間が空き、クラウスが机の上で指をコツコツと鳴らしながら提案する。
「じゃあ、これ以上は話せることはなさそうだから、それぞれ情報収集して直近の目標とか決めて、1週間後に集まるのはどうかな?」
「それで良いだろう。ビッグはどうする?」
レインがビッグを気遣う。
「私は魔王様が生まれた瞬間から魔王様の忠実なるしもべでございます。おっしゃる通りに動きます。」
ビッグは開けていた蓋を閉じ、敬礼なのか?宝箱状態になって心なしか丁寧なお辞儀をしているようにも思える。
レインは少し悩んだ末に話し始める。
「どっちつかずな感じだな。じゃあこのまま解散もなんだし、魔王城ツアーしてから解散しますか。」
「いいね。」「魔王という割に城のこと知らないしな」「私も存じ上げません。」「こういうのは舐められたら終わりだからね。」
「いま、案内役のビッグ君、もしかして魔王城のマップわからんとか言ってなかった?」
クラウスはこういうのは見逃さない。
蓋を固く閉じているビッグを持ち上げると左右にガタガタ揺らし始める。
「ちょっと、中身溢れちゃいます!!ああっ!倒された時に出す予定の輝かしいメダルが!!」
ビッグが小ボケを挟みながらもメダルを落としてしまう。
不運にもひび割れた床の隙間に落ちていき、メダルは見えなくなった。
「あっ…」
「あっ、ガチですまん。」
クラウスは謝る。
「いえ…まあ…」
もごもごしながら、納得いってなさそうに返事をするビッグ。
「クラウス、流石におふざけがすぎたな。我々は魔王だぞ。だる絡みでもビッグが可哀想だ。」
スノウが真顔になりながらクラウスに話しかける。
クラウスはビッグを机に置き直し、正面に向き直る。
「そういう時代よな。ビッグ、お詫びにこんどでっかいメダル一緒につくろうな。」
「えっ…ではダイヤモンドとアンデッドモンドの2対8の合金で作りたいです。」
「ん?さらっと知らない素材がでてきたけど、こだわりの一品ができそうだ。」
ちなみにアンデッドモンドは魔王城付近の毒沼地帯の鉱山で魔物から獲れるものらしい。
勇者が終盤で取れる鉱物になるので、人間界ではかなり貴重なものである。
「話が逸れたな。ではそろそろ魔王城探索いきますか。」
スノウの掛け声で皆が立ち上がり、魔王による魔王城探索が始まる。
魔王サイド書くのおもろい。
もう勇者は勝手に旅してればいいんじゃないかな。
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