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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第4章「魔法少女ワールドカップ編」

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第70話「傾国の美女」

バーミンガム宮殿


「さて、ここまでは前回と同じだな」


女王・エリザードは安堵する。壁に寄りかかり、話を聞くのはマリア=ティモシェンコと窓から庭園を眺める、ユンゲラ=メルケン。


「ええ、前回はこの後のパーティーでやられた。今回もその影響で参加が32ヶ国まで減った。さすがは我が工業国家の隣国、『美の国』だ」


忌々しそうにメルケンがいう。それにエリザードが聞く。


「何か対策は?」

「あるけど、許可が欲しい。会場となるロイヤル=エルバードホール周辺でドローンを飛ばす許可を。その上でアンチマジックフィールドジェネレーターを発動させるわ」


自信有り気にマリアが言った。


「アンチマジックフィールドジェネレーター?何よそれ?」

「『自由の国』いや、『同盟国』で開発され、日本で量産化された『対魔法阻害兵器』よ。これを実用化レベルにした日本は根っこで私達と同じだと思うわ」


マリアの言葉にエリザードはうなづく。


「魔法少女が兵器化されたとて、それがあれば無効化・阻害可能なら兵器化されない。なるほど、佐藤ゆりあ女史は聡明だな」

「それがインフルエンザに罹患して、右腕の水田マリが引率らしいけど」


苦笑と共にマリアが言った。


「ゼロ、ラジオ、自動車、ハンディーフォン……、日本は魔法さえ『ガラパゴス』ね。

でも感謝するわ。今回は『美の国』の『傾国の美女』を阻止できる!」


ゆっくりとメルケンが笑った。


♦︎♦︎♦︎


『愛は常に上から与えるもの──そう教わって育った。だからわたくしが微笑めば、人々は救われるの。』


『傾国の美女』こと、ルシェンヌ・ド=ラ=ヴェルは、白い修道服に身を包みながらゆっくりと髪を櫛で梳く。

修道院育ちの清楚さを纏いながらも、その仕草には王の如き余裕と絶対の自信があった。


前回大会の優勝。

世界が彼女を祝福し、そして怯えた。

なぜなら彼女がただ一度、『魅了』の魔法を放つと──


観客も選手も役員も、全員が彼女を愛し、跪いたからだ。


「神の代わりに、わたくしが彼女たちに救いを与えたのよ。泣いて感謝して、試合を辞退して……まぁ、可哀想だったけれど」


まるで子犬のいたずらを語る少女の声。

だが内容は残酷だ。


大統領の言葉が頭をよぎる。


『出来レースに勝者はいない』


(ええ、わかってる。世界はわたくしを愛しすぎて、正気でいられなかったのね)


鏡に映る自分の瞳に、そっと口角を上げる。


『今回はパーティーで魔法を使わないであげる。世界のために、優勝者としての配慮よ。

わたくしが本気を出したら、また全員跪いてしまうから』


慈愛の仮面を被った圧倒的傲慢。


しかし彼女は本気で信じている。

自分が優しいから世界は救われるのだと。


ピッ──

モニターに抽選結果が表示される。


【1回戦・魔法少女バトルロイヤル(Bグループ)】

●美の国: ルシェンヌ・ド=ラ=ヴェル

●スパイスの国: パドマ=シュリー

●砂の国: ナディア=リセール

●日本:藤原さくら


(……日本?聞くたび影が薄い国ね。魔法文化は欧州が中心でしょ?他の2国は前回と同じ顔ぶれだし)


修道女の衣を整えながら笑う。

対戦相手の名前をチラリと見る。


藤原さくら


舌の上で転がすように名前を呟く。


「ふじわら……さくら。

愛らしい響きだけれど──わたくしの前で美しく跪けるかしら?」


魅了しない慈悲を与えてあげる。

まずは初戦で優しく屠ってあげるだけ。


「祈りましょう──世界がわたくしに再び恋をする瞬間を」


聖女は光の中に歩み出た。

ステンドグラスの赤と金が髪に落ち、まるで後光を背負った天使のよう。


しかし誰も知らない。

その天使は全てを愛し、同時に踏みつぶす女王であることを。

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