第24話「あいのしま」
10年前にこの小学校は廃校になったらしい。その教室に移動して、交渉は始まった。
「改めて、自己紹介するわ。佐藤ゆりあ。文部科学大臣で『魔法少女』の統括管理者よ。この2人は護衛」
私も自己紹介し直す。
「種田トウカ。半島解放軍、少将。『異能少女部隊』責任者。まぁ、今日付けで書類上から『消えてる』でしょうけど」
あえて崩して言う。ここに残るなら、本音をぶつけないと勝てない。
「先に聞くわ。あなた『日本人』よね?」
ああ、そうかまずはそこからか。と理解する。
「私が説明するよりも、中尉。横村中尉を呼んできて」
そう指示を出す。他の者は運動場でもよかったが、『寒いだろう』との配慮で3階の教室に入れられていた。
程なくして、横村中尉が入ってくる。
「横村中尉、自己紹介して」
「は!横村ツグミ。階級は中尉です」
明らかに反応があった。スマホを取り出して、何かを見ている。
「あの『横村ツグミ』?これ、あなた?」
後に知る、有名な拉致被害者の写真。
それが横村中尉の50年前の写真だった。
「はい。これは父が中学校の入学式で撮った写真ですね。何枚もポーズを取らされたので困ったのを覚えています」
横村中尉は笑ってそう言った。
「そう。充分『理解した』わ」
なぜか鎮痛な面持ちで佐藤大臣は答えた。
そして、次の瞬間にはそれが消えた。
なるほど、感情がないわけではないが感情と理性を分けられるタイプ。李ミリ同志と同じね。
「それであなた方の要求は?」
佐藤大臣が聞いた。
「『日本』に『帰りたい』それだけです」
(ここまでは李同志の『シナリオ』通り)
そう思う。ここから先にレールは存在しない。
「日本政府として、正式に回答するわ。答えは『NO』よ」
まさかの回答。
「考えみて、あなた方『拉致被害者』が勝手に帰って来たら?『この国』も『あちらの国』も確実にダメージを負うわ。だから『NO』よ」
それはわからなくもない。
もっと言えば私達は若く見える。さっきお茶を出したキョウコさんは同じ歳。異能(この国的には「魔法」)の存在が世間に知られてしまう。
「だから、代替案として、新しい戸籍・住民票・名前を用意します。それでこの島に『移住』という事であれば私の権限で許可します」
その提案に横にいる横村中尉の顔は明るくなる。
「全員の判断を確認してよろしいでしょうか?私は他の運命を決められません」
佐藤大臣は答えた。
「明日の朝、答えを聞きます。知っているかもだけど、今日は選挙でね。私も選挙区に戻らないといけないの」
「わかりました」
その返事を聞くと。
「梓ちゃん、お願い。明王義塾まで。それとこの人達の生活資材の搬入もお願いね」
「了解です。『ワープ』!」
一瞬で佐藤大臣は消えた。
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数ヶ月後。相島。
「どうもー!ミーチューバーのハヤトです!今日は猫の島として有名な『相島』に来ています!お!フェリー乗り場を降りたら、早速猫ちゃん!」
ハヤトは猫と戯れるシーンを撮影する。
「ここは島民75人に対して猫が約100匹。猫の方が多い島なんです!」
ハヤトは坂を登り、中腹にある小学校跡地を再利用した施設にたどり着く。
「そしてここが今月オープンの新施設、『あいのカフェ』です!」
ケーキとカフェラテでを食べるシーンを撮影する。
「撮影協力、ありがとうございました」
「いえいえ。条件は守ってくださいね」
代表の女性は種田トウカという30代に見える女性だった。
「わかってます。施設の女性は顔出しNGですね。理由って聞いてもいいですか?」
「言いにくいんですけど、ここDVのシェルターなんです。だから顔出しすると……」
そこまで言えばハヤトも理解した。
「わかりました。絶対に守ります!それから、また来ます」
「ありがとうございます。ここもっと天気がいいと半島まで見えるんですよ?」
そう言ってトウカは笑った。
ここはあいのしまなのだ。




