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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第1章「さくら、魔法少女になる」

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第8話「ナツキ・レポート」

名古屋市中央区栄。日本有数の歓楽街から少し離れた場所に閉業したホテルがある。


通称『ドン横キッズ』と呼ばれる家庭に居場所のない子どもたちがこの場所を見つけ、たむろするようになった。

それも3週間前に突然、終わりを告げる。このホテルでスタンビートが起こったからだ。スタンピートとは1つの場所に5体以上のビーストが出現することを言う。


広井夏樹はそのビルの屋上に降り立った。本来なら関東圏が彼女のエリアだが、このスタンビートで魔法少女も7名が死亡や復帰不可能にされている。したがって、今回の調査にしても長期出張の業務の一環であった。


関東では「チーム・サマー」に属するが、彼女は他の魔法少女を必要としない。元よりチーム・サマーも1人しかいない彼女だけのチームなのだ。


彼女が扱う魔法は電気系。


「A・Bは正面から、C・Dは私と一緒に屋上から。Eはビル側面で待機」


彼女が命令を下すのはドローン5機。全機AIで自立活動可能。それを彼女は手足のように自在に操る。彼女が開発した彼女のためのドローン。彼女は魔法少女という点を除いても特別な少女だった。現在15歳の中3だが、その年齢で旧帝大トップの東都大学に合格できる程の『天才』である。


ドローン4機で撮影をして、一気に調査する。あれから時間が経っているが、警察の立ち入り禁止が外れたのが昨日の事だ。それでも魔力を感じるのはスタンピートだからだろうか?


魔力の残滓を辿る。15階建ての10階の1室、そこからひときわ強い反応を感じた。ドアをゆっくりと開ける。一見、何の変哲もないホテルの一室。シーツだけが乱れていて、誰かが『使った』とわかる。ベッド脇に市販薬の箱がいくつも落ちている。


「オーバードーズってやつかな?」


思わず独り言をつぶやく。

オーバードーズに闇バイトにパパ活やリストカット。日本の子どもの問題点を煮詰めたような、それをイメージするような映像がドローンからも送られてくる。カッターナイフ。避妊具の破られた包装。何かのアカウントIDとパスワードを書いた紙。

彼女はモニターを必要としない。送られてくる電気信号を視覚情報として脳で再生出来るからだ。


ふと、気になってゴミ箱にを漁る。


(多分これだ)


気になったものを拾い上げる。錠剤の空PTPシート。本来なら裏のアルミの部分に薬品名や製造メーカーが入っているものだが、これにはそれがなかった。しかも、飲み忘れたのか錠剤の入ったものを見つけ、ニヤリと笑った。




夕刻。東京都千代田区霞ヶ関。


「呆れた。仮にもここ大臣室なんだけど?これで何度目よ?」


佐藤ゆりあは部屋に入るなり言った。同時にSPには部屋の前で待機の指示を出す。SPも彼女を見て苦い顔をする辺りに複数回である事がわかる。


「フレミング左手の法則で鍵は簡単に開くよ」


答えたのは夏樹。魔法少女のホウキなら名古屋ー東京間は1時間で移動可能だった。信号も時刻表も関係ないのだから。


「それで、報告があるのでしょう?」


先程の錠剤の残骸を取り出す。


「これは?」

「多分、魔力中毒者にする薬。残留成分にビーストを倒した時に出る、魔石が粉状に混ぜられてた。『テンペスト』を作成時に魔石を研磨する工程で過去に魔力中毒者が出た事があったよね?警察はオーバードーズの残骸だと思って見過ごしたのだろうね」

「つまり?」

「『誰か』が意図的に今回のスタンピートを引き起こした」


そして、それは。


「今までより、魔法少女の出撃が増えると思う。意図的に50年ぶりのスタンピートを引き起こせる連中だから」


広井夏樹は自分の推察を淡々と報告した。

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