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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第3章「シークレット・ヘブン」

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第65話「始まりの場所」

倒れた長田洋子から、ゆっくりと血が床に広がる。硝煙の匂いが少しずつ薄くなり、それが合図だったかのように山岡龍馬はスマホを取り出し、どこかに電話をする。


「山岡だ。例の病院にいる。上田理子が自殺した。……そうだ。すまないがDNAや歯型の採取や処理をお願いしたい」


ほぼ一方的にいって電話を切る。


「終わったのね?」

「そうだな。後始末が大変だぞ。世間から目を背くために解散総選挙もしたし、この組織の真相解明もある。だが、負けられない戦いだった。少なくとも俺とゆりあちゃんにとっては」


山岡は少し意外だった。それは佐藤ゆりあが泣きそうな顔をしている事だ。現政権のスポンサーで党内外問わず、『永田町の魔女』とも呼ばれる彼女の初めて見せる表情だった。


「どうした?」

「長田洋子…いえ、上田理子の主張はある意味わかるの。そして向こうが私の考えを理解している事も。それでも今回ぶつかって、上田理子は死んだ」


たった1滴。だが確かに1滴。佐藤ゆりあの頬にそれは流れた。そして言う。


「なんだか『独り』になったな。て…」


山岡は少し理解する。『魔女』だと言われても、まだ32歳。自分よりも40歳以上も歳下だった。


つまりは『喪失』に慣れていない。


初めて『何か』の壁にあたる若い人を見る時、山岡は少し躊躇する。自分の『経験則』が今の若い者に伝わるか普遍的かわからないからだ。少し前の広井夏樹がそうだった。


だからこれだけは伝えておく。


「何かの権力の頂点に立つと言うのは、そういう事だ。よく見渡せるが、同時に注視もされる。ブレーンや手足となるものがいても、『孤独』である事に変わりはない」


ふと、かけられた思いやりの言葉に、佐藤ゆりあは顔をあげる。その顔はあの日、雪山でみた長田洋子と輪郭や容姿は全く違うのに思ってしまう。「美しい」と。


それを誤魔化すように口にした。


「それにしても、数奇なものだな」

「何が?」

「あそこで眠る少女が『予知』したんだろう?あの『天才』が現れるのを?」


なんの事かわかったゆりあはそっけなく言った。


「そうよ。だから現職大臣が新宿中央公園にいたの。都庁での『視察』と銘打って。もっと言えば、私がいなければあの場で『スタンピート』の可能性もあったわ」


そうここは『始まりの場所』でもあった。

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