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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第3章「シークレット・ヘブン」

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第62話「32万人の人質」

神奈川県横浜市西区、みなとみらい。


魔石粉末をまいて数分。

ゆっくりと、しかし確実に変化は起こっていく。ポツポツと魔力中毒らしき反応が現れる。ボクも魔法少女になって、それがわかるようになった。


やがて、1体、また1体とビーストが出現する。


そこへ。


「『チーム・スプリング』現着!」


何もなかったところにさくら達3人が現れた。まるで長田さんの移動魔法みたいだ。


「勇二!」

「リサ!」


魔法少女が言う。そして、さくらも。


「ユウ君?」


無理もないだろう。ボクは女の子として、いや魔法少女としてこの場に立っているのだ。セミロングまで伸びた髪にタイツにミニスカート。これでボクだと気づいたさくらはさすがだと思う。


「さくら、ボクは君を止める。そして倒す」


そして、魔法少女を辞めさせる。なんなら代わりにボクがそっちに入ってもいい。それでさくらが抜けられるなら。


「さくら、既に10体以上のビーストがいる。まずはそっちだ」


小柄なショートカットの子が言う。

さくらは軽くうなづく。


「わかった。『イージスの盾』!」


その瞬間、視界にいた全てのビーストの首が落ちる。


(1人で10体以上を一瞬で!?)


内心の焦りを気取られないように気をつける。まだだ、まだ魔力中毒者がいる。そいつらを浄化しない限りビーストは湧き続ける。最大で32万人だ。


「あやめちゃん!浄化をお願い!ワカバちゃんは勇二君の足止め!私はこの2人をどうにかする!」


驚いたことに指揮はさくらがやっている。ボクの知らないさくらだった。でも、相手の思う通りに進めてはいけないと直感で思う。


「させるか!『ボイドニウム・ストリーム』!」

「く!『イージスの盾』」


巨大な壁が攻撃を阻む。そしてさくらはニヤリと笑っている。


「まさか、ユウ君が『マルチスキル』なんてね。さっき使った魔法は『複合魔法』とでも言うべきかな?粒子状の『ボイドニウム』を出す魔法と風を起こす魔法の2つを同時に使っている。こんなふうにね。『ボイドニウム・キューブ』!」


その瞬間、傍らにいたリサの首から下が黒い粒子の詰まった立方体に閉じ込められ、落下した。


「これで時間が稼げるでしょ?」


上空では小柄な少女がユミちゃんに水で攻撃をして、ユミちゃんは逃げまわっている。ボクが助けるしかないようだ。どちらかを。


「リサ!」


一瞬迷って、地上に。

ボイドニウムは未知の元素。魔法少女のみに作用し、強アルカリ性溶液のように10分程度で皮膚を溶かし、取り返しがつかなくなる。リサ自身も魔法でなんとかしようとしている。


「ふふ、ユウ君って、口では『さくら!さくら!』と心配はするのに、本当はその子の方が大事なんでしょ?」


よく聞いたさくらの声が後ろからする。でもその声はボクの知ってるさくらなら絶対に言わない言葉を発した。


「いいのか?『浄化』していかないと最大32万のビーストが発生するぞ。パニックにでもなれば『ハロウィンの梨泰院』の再現、いやそれ以上だ」


ボクはそう言ってやる。これでリサを助ける時間くらいは稼げるはずだ。




その頃──東京・八王子。


病室で眠る少女は15歳くらいに見える。けれど実年齢は45歳で30年眠り続けていた。


杉田瑠奈。『スーパーグンペイ強盗事件』で撃たれ、書類上、『死んだ事』になっている少女だった。彼女はいわゆる植物状態で生かされ続けている。それは彼女が『魔法少女』で使用できる魔法が『未来予知』だったからだ。


佐藤ゆりあ、当時は『広井』ゆりあの最初の任務は、彼女から情報を取り出して、上層部に報告する事だった。72人中71位で精神感応系の魔法少女で、対象が1人だけしかできない魔法少女。他の魔法少女を使えば、彼女を『消す』事など造作もないと考えた当時の上層部は、広井ゆりあにその任務を与えた。


しかし、広井ゆりあは『天才』だった。

杉田瑠奈から、金融情報を読み取り、ビースト化して死亡した両親の遺産を原資に稼いだ。それが今日の魔法少女システムを支える資産となっている。つまり、本拠地『明王義塾』や永田町よりも『重要防衛拠点』だった。


「お待たせ」


セリフだけ聞けば、本当にお見舞いに来たかのように長田洋子が病室に入ってきた。


「待ってませんし、来なくてもよかったですけど、はじめまして。佐藤ゆりあです」


魔法少女システムを握った2人が今、対峙した。

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