第61話「12月24日⑧横浜・東京」
18:00──神奈川県横浜市西区、みなとみらい。
五十数年前、冬将軍は長田洋子さんを阻んだ。
だが今回は、ボク達の味方だった。
寒波で北海道・東北・関東に雪が降り始めた。そこへ追い打ちをかけるように、強風が襲い。
京浜東北線・東横線。
同時に「運転見合わせ」。
さらに強風で首都高湾岸線は事故発生。
出口が塞がり、車はどこにも進めない。
いつもなら『夜景を撮ろうとする街』が、
今日だけは『どこにも逃げられない街』になっていた。
Kアリーナの終演、人の流れ。パシフィコ横浜の開演、また流れ。Zepp横浜の入場列、クリスマスマーケットの雑踏。全部が同じ時刻にぶつかって、街は飽和していた。
上空から眺めると、道路も歩道も、
車と人で完全に埋まっている。
「ざっくり言って32万人だって。ニュースで言ってた」
リサが笑う。
ボクは視界いっぱいの混雑を見下ろし、息を整える。
「じゃあ、始めようか?
──『人が密集してるほど、ボク達には有利』なんだから」
上空からそっと魔石の粉末を撒く。
街が静かに戦場へと変わっていく。
その頃──東京・八王子。
暗い病室。生体モニターの規則的な電子音だけが響く。
そのベッドには、杉田瑠奈が眠っていた。
「瑠奈先輩、もうすぐ終わりますよ」
佐藤ゆりあは小さく笑う。
窓の向こうで雪が舞い始める。
「長田洋子が必ずここに来る。そして私も
──ここでしか終われない」
永田町や霞ヶ関の様な『中心』ではなく新宿や銀座の様な『繁華街』でもなく、戦いの舞台は『病室』
横浜では32万人の戦場。
東京では『たった1人』を巡る戦場。
クリスマス・イブは、静かに始まった。




