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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第3章「シークレット・ヘブン」

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第60話「12月24日⑦仙台」

宮城県仙台市青葉区。


第6師団隷下 第44普通科大隊。改め、統合幕僚監部直属、対魔法特化試験大隊、青葉城仮設陣地。


「各小隊異常なし」

「総務省より、各携帯キャリアの電波停波と報告あり」

「警察、消防、自治体より、熊出没の誤情報による外出自粛と避難完了と報告」

「ビースト出現。宮城県知事より害獣駆除要請受理」

「中島首相、朝倉防衛大臣の火器使用許可、並びに市ヶ谷より指揮権を黒川大隊長に一任する旨を受領しました」


各方面より報告が終わる。

黒川オサムは静かに無線機に口を開いた。


「諸君、聞いての通りだ。聞こえはいいが、いわば私は『トカゲの尻尾』だ。諸君らの働きに私の人生を預ける。

各員、圧倒せよ。フェイズ1、始動」


一斉に各隊が動き出す。


「アドトラック擬装AMFG始動。作戦域をカバーします」

「第4小隊、ビースト狙撃開始」

「第1小隊より報告、6体中2体駆除完了、1体も右腕が損壊とのこと」


音声で報告は受けてはいるが各小隊長のヘルメットについたカメラで直接、確認できている。


「魔法少女の捜索は?」

「第1から第3小隊が索敵中」

「魔導レーダーに反応。JR仙台駅付近に感あり!第2小隊は確認に向かわれたし」


その時だった。

黙って報告を聞いていた大隊隊長の黒川がそれを止める。


「待て!第5小隊聞こえるか?魔導レーダーの反応はJR仙台駅東口のホテル西急インにある。包囲陣形で『ヒロイ型AMFG』を使え!他小隊は手出し無用。下手に刺激して魔法を使われても厄介だ」


AMFGのプロトタイプは空気清浄機やキャリーケース程の大きさの機械であった。それを日本の三つ葉重工が大型化して有効半径を半径1キロまで伸ばした。これがアドトラックに擬装されて現在各地で運用されている。対して『ヒロイ型AMFG』は懐中電灯を大型化したような、自衛隊員が肩で担ぐと対戦車砲のようにも見えるものであった。


♦︎♦︎♦︎


埼玉県越谷市、テンペストデータセンター


こちらのモニターにも仙台の状況がリアルタイムで各モニターに映し出されていた。


「おい?いいのか明王義塾を守らなくて?」


この研究所の所長である小田圭吾は入ってきた妻であるマリに驚いた。


「いいのよ。校舎も寮も時間とお金があれば直せるし教員・教官だって元魔法少女よ。それよりここの方が防衛重要度は上よ。八王子には負けるけれど」


「そうか」と言いながら、圭吾はコーヒーメーカーからコーヒーを紙コップに注いでマリに手渡す。受け取りながら、マリは聞いた。


「それで仙台は?」

「ビーストの駆除は上手くいった。敵側を『ヒロイ型AMFG』で包囲しようと移動中だ」


受け取ったコーヒーをブラックですすりながら、さらにマリは尋ねる。


「『ヒロイ型AMFG』ってそもそも何なの?バズーカみたいなカタチだけど?」

「それを説明するにはAMFG、アンチマジックフィールドジェネレーターとは?から入るのがいいかな。そもそも魔法少女は『魔石』を触媒に空気中から魔力を受け取る。それの多い少ないが個人差があって『レベル』と言われている」


魔法少女が最初に習う基礎の知識。スマートウォッチ『テンペスト』に魔石が内蔵されていて魔力行使が可能になる。

どうせできる事は少ないと、マリは圭吾の話を黙って聴く。


「そして魔石は水晶の格子結合の中に未知の元素が閉じ込められたものだ。多分、8周期か9周期目の、地球の環境下では存在できないものが水晶中に存在している」


そこまで言って圭吾はコーヒーをグイッと口にする。


「この魔石に『圧電効果』・-・・水晶に電圧をかけると振動する現象のことだが」

「クオーツ時計の原理ね」

「そう。それを『魔石』でおこなっても振動がおこる。さらには『魔石』だけにおこる現象が『共振現象』だ」


そう言って圭吾は傍のキーボードを操作する。電荷された魔石と電荷されていない魔石。電気を片方に流すと微細な振動が起こっているのを示すように水が揺れる。さらに近くにある何もしていない方にも振動が起こり同じく水面が揺れた。


「これは『テンペスト』でもおこる。この『共振現象』状態で『魔法』を使おうとしても自然界から受け取れる魔力が制限される。理由については研究中だ。それを感覚で行う魔法少女達は威力や射程、制御が狂ってしまう。それがアンチマジックフィールドジェネレーター、通称AMFGの正体だ」

「私も実験に参加したから知ってる。パソコンに例えると『メモリが半分使われた状態』に近いわね。OS自体は使えるのに動作が不安定みたいな」

「三つ葉重工製も原理は同じだ。プロトタイプより強い電流を流し大きな魔石を使うことで効果範囲を広げたものだ。装置の半分はディーゼル発電機になっている。これがアドトラックに擬装された全国に配備されてる」


マリがそこで質問する。


「それじゃ、『ヒロイ型AMFG』は?」

「あれは設計思想からして別物だ。魔石の『共振現象』を逆手に取った。な。原理的にはヘッドホンのノイズキャンセラーが近いかな。魔法少女が魔法を使う時、各自固有の微振動が起こる。それを逆位相で『共振現象』を起こしてやれば魔法が使えなくなるんだ」

「凄い事じゃない!なんで最近まで実用化できなかったの?」

「理論自体は誰でも思いつくさ。プロトタイプは俺が作ったしな。それでも5mまで近づかないと使えないシロモノだった。それを実戦レベルにしたのが夏樹ちゃんで、それを可能にしたのがさくらちゃんだ」

「え?」


ぽかんと口を開けてマリは驚く。


「前にさくらちゃんがここに来た時言ってたろ?『水晶なら作れないのか?』って。それでできたのが『圧縮魔石』現代のビーストから得られる魔石を古代魔石レベルまで圧縮可能になった。それを利用して100mまで射程を伸ばす事に成功した。その設計が夏樹ちゃんだ。つまり、発想の天才と理論の天才がぶつかると皮肉にも『魔法0』ができてしまったわけだ」



︎♦︎♦︎♦︎



宮城県仙台市街地。


「第5小隊、『ヒロイ型AMFG』展開。これで相手魔法少女は無効化されました」

「よし第1小隊、突入して制圧!」


黒川の指示が飛ぶ。



こうして仙台戦線は幕を閉じた。

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