第59話「12月24日⑥名古屋」
「夏樹先輩、わざと『チームA』を遭難捜索に回したでしょう?」
「咲ちゃんか。私の戦闘にちょこまかと入って欲しくないだけだよ。てか、なんでここに?八ヶ岳で捜索じゃないの?」
「風邪気味でローテを外されたんですよ。こっちなら大丈夫かと」
名古屋市中区栄、白川公園。クリスマスなのにイルミネーションもない都心の公園に人気は少ない。
しかし、その世闇に紛れるように数体のビーストが見える。科学館の球体上部に立って魔法少女2人が会話していた。1人は広井夏樹でもう1人は名古屋、チームA所属の三島咲だった。
雑談しているようにしか見えないが、ビースト5体とシークレット・ヘブンの魔法少女4人と戦闘中だった。もっとも、相手をするのは夏樹のドローンだが。
「そういえば、夏樹先輩って『シークレット・ヘブン』に寝返るかと思ってました」
さくらと同じ中学2年生だが、身長160cm後半。整った顔立ちで街を歩けばモデルのスカウトがひっきりなしに現れる。それが三島咲の日常だった。そしてもう1つの側面、それは『広井夏樹のバックアップ』である。そんな彼女がそう思うのだから、夏樹も寝返りは考えたはずだ。
「今回戦っているのは『佐藤ゆりあ』と『長田洋子』だよね?確かに私はさ、どちらとも、理想は相容れない。なぜなら私の理想は『魔法少女のゼロ化』だからね。現状維持の佐藤ゆりあはいつか倒すよ。でもね、魔法少女を戦力と捉えて、日本の軍事独立を目指す長田洋子とはもっと合わない」
「それでも、ゆりあ大臣に渡していない情報がありますよね?」
『広井夏樹のバックアップ』とはこういう事だ。いつ夏樹が死んでも夏樹の代わりが務まるのが咲という人間だった。精神感応系魔法で夏樹の思考や情報を100%で再現する。
「『スタンピート』の事?」
「そうです。ここ名古屋で起こったスタンピートも、京都でも、『シークレット・ヘブン』は関わっていない。京都の精神病院に至っては100%不可能です。内部事情がバレないように家族ですら面会がしにくい病院で、薬をすり替えるなんて無理です。だから、長田グループとは別の、国内に敵グループがいる」
咲がそう結論付けた時、少し先で断末魔の叫び声がした。
どうやら勝利したようだった。
「名古屋も片付いたね。実は仙台に注目してるんだ。あそこにこちら側の魔法少女はゼロ。私の理想を体現した戦場なんだ。
『AMFG』の真の力、『シークレット・ヘブン』に見せてあげる」
夏樹は自身ありげに微笑んだ。




