第51話「椎葉ユウの選択」
大阪から帰って数日後、長田さんに呼び出された。
「ユウ君、もうすぐ我々『シークレット・ヘブン』と佐藤ゆりあが擁する『魔法少女』との間で大きな戦いが起こるわ。『さくらちゃん』見つかったわ。あなたの目的は果たせた。その上で聞くわ。あなたはどうしたい?」
言われて僕は黙り込む。
「少し考えさせてください」
「賢明ね。私はあなたも含めて、誰も強制するつもりはない。実際、何人かの『魔法少女』や『魔女』はここを去ったわ」
それだけ言うと長田さんは、僕に背を向けて窓の外を見た。それは僕がこの部屋を出ていきやすいようにだった。
部屋に戻ってしばらくすると、ドアをノックする音が聞こえる。リサだった。手にはペットボトルのコーラを2本持っている。
「入るわね。はい、差し入れ」
コーラを受け取り、椅子に座る。リサはベッドにもたれかかるように座った。
「洋子サンから聞いたでしょ?どーすんの?」
最近、リサの距離が近いと思う。地が出てるとも言える。
「ワタシはさ、正直・・・迷ってる。だから、ユウ君について行く」
「え?」
訳がわからずにそんな返ししかできない僕に、リサは続けて言う。
「前に言ったよね?『絶望が希望を連れてくる』って。ワタシはさ、ユウ君がどんな道を選んでもそれを『希望』に変えてみせる。『絶望』なんてさせない」
それがどんな気持ちか、わかってる。それを証明するように熱っぽい視線を僕に向ける。それでも臆病な僕はズルイ質問をする。
「例えば僕が、勇二君・・・『ユミちゃん』みたいになっても?」
勇二君は『魔法』が使えるようになりたいと、長田さんに頼み、『ユミちゃん』になった。この世界に『魔法使い』はいない。『女性』しか『魔法』は使えないものらしい。
「言ったでしょ?『どんな道を選んでも』って。ワタシがユウ君を・・・いいえ、ユウをどこに出しても恥ずかしくない『女の子』にしてあげるわ!」
その笑顔に希望が湧く。
僕だってさくらを止めたい。
国に利用されるさくらをだ。
♦︎♦︎♦︎
2週間後。
「気分はどうかしら?」
長田さんがニッコリと笑って聞いてくる。
「ホルモンバランスも問題ありません。慣れたようです」
あの日の翌日にはボクは女の子になっていた。最初は身体の変化に戸惑ったけれど、スカートにも髪を結ぶのにも慣れたし、最近はリサとの会話が楽しくもある。
「それじゃ、明日、頼んだわよ。私の代わりに派手な『宣戦布告』を打ち上げてきてね」
明日は『魔法少女』としての初めての任務だ。
ボクとリサとユミちゃん。3人で初の戦闘になる。
それはこの国で初めての『魔法少女』同士の戦闘だった。




