第48話「(閑話)木津根あげはの覚醒」
大阪府高槻市、明王義塾学園大阪校。
「そろそろ教えてくれる?なぜ私だけ居残りなの?」
木津根あげははムツミを問いただした。一方で問われたムツミは持っていたタブレットを操作して、あげはに見せる。
「これを見ろ・・・・わかったか?理由が」
訓練時計測結果
木津根あげは『レベル:B』
西田真琴『レベル:D』
陸奥伊都子『レベル:D』
それは残酷だが事実。呆然と彼女はそれを見つめる。
そこへ。
「相変わらず、大阪は本部の防御が緩いわね」
聞こえた声。次の瞬間、火炎が襲う。
ムツミに抱き抱えられてあげはは難を逃れた。まるで『守られる側』のように。
数週間前、佐賀県鹿島市。
「国から『赤紙』が来たぞ。稲荷神社では2番目だ!」
父親が血相を変えている。
『特別招集令状』と書かれた赤い用紙。
「頑張って務めてこいよ!」「しっかりね!」「がんばれ、お姉ちゃん!」
両親や妹の期待を背に旅立ち。待ち受けていたのは
『魔法少女におむつが必要なんて聞いてません』
羞恥。
『能登さん、だっけ?恐れいったわ!』
『いい魔法ね。ウチの『スプリング』に入らない?』
『あげは。お前さんは居残りだ』
劣等感。
「逃げろ。後はこっちで何とかする」
そう言ってムツミは抱いていたあげはをおろす。
「冗談じゃ、ありませんわ!」
このままでは終われない。誰にこの感情を向ければいいのかも、わからない。呼び出した国家にか?無責任に送り出した家族にか?理不尽に高い周囲の環境にか?何の努力もせずに才能だけで認められる仲間にか?
否、自分自身に。である。
「『カケマシクモ、カシコミ、ウカノミタマノオオカミノ、ミナヲタタエル』!」
全身が光って変身する。
白狐である事は変わらない。だが、2足歩行の人型で巫女装束を身に纏ったものである。
火焔を吐く。
傍らのジャングルジムが紅く加熱され、アルミ製の柵は溶け落ちる。
「それまで『テンペスト』緊急停止」
ムツミが静かに告げた。その手に持っているタブレットの表示を見る。
計測結果
木津根あげは『レベル:E』
不躾だと思っていたランクが誇りに変わる。
「よくやった!」
ムツミがニカッと笑う。そして。
「サトミも、ありがとうな」
先程、襲われた方を見る。さっきまで自分が変身していたのと同じ人型の白狐。その変身が解かれて正体を現す。同じ明王義塾の制服を着ている。
「はじめまして、木津根あげはさん。広島支部所属『チーム・レッド』の泉サトミ。あなたにはこう言った方がわかるかしら?京都、伏見稲荷の『隠し巫女』よ」
少しだけ納得する。
「ムツミ教官、たまたま出動があったからこんな展開なんですか?」
「ああ、『そこ』か。本来なら5人を大阪観光でもさせて居残りってプランだったんだ。それに昨日見た感じ、サトミと同じ感じを受けたからな!」
「昨日の夜、いきなり電話して来て、『大阪に来い』ですよ?まあ、後輩の為ならしょうがないですけど」
「サトミももう18だもんな。進路は?」
ここだけ聞くと本当に教師のように聞こえる。
「成績はいいので『指定校推薦枠』で大学かなぁ、って。そこで少し考えて、実家に戻るのもアリだと思うんです。他の子と違って『赤紙』枠は『死んだ事』になってないですから」
「そうだな、将来の事はゆっくり考えればいい。『魔法少女』の退職金は1億。しばらくは『自分探し』できるさ」
「そういうムツミさんは、その1億を投資信託に回してしっかり毎年300から500万のリターンを受け取っている。ですよね?」
「なぜそれを!」
「だから古い魔法少女達は『腹黒ムツミ』なんて言っているんでしょ?」
「それ現役の時から」
こうしてこの2人の会話はいつまでも続いた。




