第37話「なぜか大阪」
「ここが明王義塾学園、大阪校よ」
ムツミさんが案内してくれる。そこはどう見ても保育園だった。みんな「え?」という顔だった。
「あはは。そう思うよね?実は老朽化でここは一時的使用のはずだったの。今回負傷した沙織ちゃんの持ち物だしね。でも、新築の校舎が建った時には近畿エリアに魔法少女は1チーム、2人になっていたんだ」
「そんなに激しい戦いが?」
あやめちゃんが質問した。
「いや、その2人が『優秀すぎて』他がいらないから、別のエリアに回されたの。私の後輩ちゃんとかね」
「そういえば、関西で魔法少女やってたって言ってましたね」
「そ。18歳で魔法少女は定年退職だから、大学行って教員免許取ったの。それからは東京の寮母だよ。その間の出来事だから、私も詳しくは知らないけど」
周囲を見まわすと、ところどころに保育園の名残がある。園庭のプールや遊具、小さな格子状のロッカー。それらに電子レンジやパソコンといった機器が置かれ、『名残』に留めている感じがした。
「寮はこの隣のワンルームマンションを用意しているわ。東京と違って食事は出ないけれど、キッチンはあるし、少し歩けば飲食店もあるわ。こっちは梓ちゃんの所有物件ね」
その日は東京からの荷物の片付けで終わる。
夕食はデリバリーを頼んでワカバちゃんの部屋で3人で食べた。
翌日。
元保育園の大阪支部に行った私達は、
「今日は終日フリーです。出動要請があればその場から出動したらいいから。実は新人が3人も入るから大変でね」
「「「え?」」」
3人の声が重なる。けれど、ムツミさんはそれ以上何も教えてくれないし、半ば強引に追い出されてしまう。
「どうする?これから?」
あやめちゃんが困惑気味言った。
「せっかくだし、グリコの看板見て、たこ焼き食べない?」
私が言う。まだ大阪に来て2日。おのぼりさんでいいはずだ。ところが、いの一番に乗って来そうなワカバちゃんが別の提案をした。
「ゴメン、ちょっとさくらとあやめ、どちらか1人でいいからチカラを貸して欲しいんだ」
珍しい真剣な表情だった。




