第36話「希望は絶望を連れてくる」
魔法少女達に魔力中毒者は浄化され、僕らは帰路についた。疲れたのか勇二くんは新幹線が動き出すと眠ってしまう。
「今日はありがとう。おかげで希望が持てた」
「そう?希望は絶望を連れてくるわ」
お礼を言う僕に、女の子はそう答える。
「そういえば名前、まだ聞いていなかったね?聞いてもいい?」
「黒田リサ。中3。さっきも言ったけど、元・魔法少女よ」
それから少し、沈黙が場を支配した。
新幹線が大阪から京都に差し掛かるあたりで、リサさんが口を開いた。
「アタシはさ。この辺で生まれて育ったの。普通の家庭だったし、アタシも普通だった。ケーキ屋さんになりたかったし、美容師にも憧れた。夢とか希望がいっぱいだった」
「うん」
最低限の相槌だけど、リサさんにはそれで良かったみたいだ。
「たくさんのやりたい事の中で、全部ダメだったら。とか、上手くいかなかったらみたいにすべり止めとか1番軽い希望がね。『とものり君のお嫁さん』だったの」
リサさんの目の端に光るものがある。僕は気づかないふりをした。
「それが突然、魔法少女になってなくなったの。それでも、とものり君を守るために魔法少女になった事には後悔してない!」
新幹線が名古屋駅に滑り込む。
「名古屋で、ここでアタシ達のチームは全滅した。魔力中毒者がビーストになり、それが複数体現れる現象『スタンピート』でね。怪我をしたアタシは魔法が使えなくなった。もらった休みで、久しぶりに故郷に戻ったの」
多分、『とものり君』に会うためだろう。
「他の女の子と手を繋いで楽しそうに歩いてた・・・」
そのまま彼女は黙ってしまう。でもその先は言わなくてもわかった。
『希望』が『絶望』に変わったのだ。
だから伝える。
「ありがとう。優しいんだね。『忠告』してくれるなんて」
きっと彼女、リサさんは聡明なのだ。
僕の幼馴染以上の気持ちに気づいている。
それを知らないふりしながら、必要以上に傷付かず済むように言ってくれたのだ。『必要のない』『自分の過去』までさらけ出して。
この2人に会えただけでも、ここに来て良かったと思う。
僕は誘ってくれた長田さんに感謝した。




