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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第2章「国際問題編」

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第32話「永田町の魔女」

15分経過。


「ゆりあ大臣。ちょっと不味いかもです」


ワカバが申し訳なさそうに言う。


「どうしたの?」

「AMFGの影響で温度が保てず少しずつ上がってます。今で40°cぐらいです。このままだと石川五右衛門です」


仮にもマリアは国賓であり、さすがに不味い。更に言えば2人とももがき出した気がする。


「中止して」

「了解です」


ゆっくりと地面に降ろし、少しずつ魔法を解除させる。


2人がバタリと地面に倒れ込む。


「「ハァ、ハァ・・・・殺す気か!」」


2人の声がピタリとシンクロする。


「殺し合ってたでしょ。『訓練よ』あくまで」


ピシャリと反論を防ぐ。


負傷しているマリアの処置、ウーチン大統領の護衛と移送など、現場の指示を出す。


彼女の戦場はここからなのだ。



東京都千代田区永田町。首相官邸。


ホウキを飛ばして東京に戻った彼女は、地下に行く。防災モニターセンターとなっているが、先程までの戦闘訓練をモニターしていた。


「状況は?」

「もう少々で、あの国の大使が面会予定です」


答えたのは、小浜素子官房長官。万が一のために中島総理はシェルターに避難していたのだ。


「なるほど。これ、あの国の大使が帰った後の総理レクの草案」


素子が目を通す。


「え?面子を重んじる、あの国の大使が言いますか?」

「『そうさせる』のよ。『私が』」


短く言って、モニターセンターを出て、2階の応接室へ。




1階、首相官邸玄関。

いつもなら、日本のメディア関係者のみで海外メディアはそれを見て笑っている。だが今回は違った。入って来た大使に海外メディアも混ざっての囲み取材を行っている。もっとも大使は「まずはこの国のトップに。です」とだけ言い残して2階へ上がっていく。SPがなおも食らいつこうとするメディアを止めた。朝売新聞の記者、西川悟は思った。


(面子が大事な国だ。すんなりとはいくまい)


それが大方の予想だった。



世界第2位の大国。その大使である張迂真は憮然とした態度で応接室に入って来た。本国の命令は『認めるな・謝るな』だったからだ。ここでの役割は『呼びつけられて、抗議を受ける大使』役でいい。そう見えるように精一杯演技する。


「ごめんなさいね。総理と外務大臣は国賓が2人もいたからそっちの対応しているの。時点で官房長官だろうけど、市ヶ谷の統合幕僚本部で指示を先程までしていて、今こっちに向かっているから私で我慢してちょうだい」


中に入るなり、そう言って来た小娘を見る。自分の娘より幼く見えるが、れっきとした閣僚の1人である。佐藤ゆりあ文部科学大臣。困ったように握手を求めて来た。断る理由もない。その小さい手を握り返す。


「『佐藤ゆりあです』」


張大使は自分が変わるのを感じた。イメージよりも冷たい手に触れた時。心が、理性すら『謝罪せねば』と思う。


「この度はご迷惑をおかけして、大変申し訳ありません」


(なぜ私は謝罪しているんだ?)


「よし、いいわね。官房長官。準備OKよ!」


ゆりあに呼ばれた今村官房長官が入室して来る。張大使は訳の分からないまま『役』を演じる事になる。



30分後。1階、首相官邸玄関。


「大使!どう言う面会だったのでしょうか?」


張は周囲をプレスに囲まれる。


「総理と外務大臣は国賓対応で不在でした。今村官房長官が対応し、こちらから、ミサイル発射は『我が国の人的ミスによるもの』と謝罪しました。この場を借りて、日本の皆さまにも謝罪いたします。更に日本の自衛隊と内閣の冷静かつ迅速な対応にも感謝します」


それだけ語って立ち去る。食い下がるように質問する者や後を追う者がいるが、すぐ後に官房長官による記者会見が予定されている。


ニュースは世界中でトップニュースとなった。


全体的に好意的なものが大多数を占める。「ミサイル誤射から1時間での決着」「無血、紛争回避!」などの見出しが踊る。両国政府はこの事件により株を上げた。



日付けが変わる頃。都内のゆりあの私室。


「ふー」


ため息と共に椅子に座る。


「お疲れ様。レンチンで良ければチャーハンがあるけど?」

「いや、秘書官にサンドイッチを買いに行かせたから大丈夫」


ゆりあがブラウスのボタンを少し外す。キャミソールが露わになるが、相手は気にしない。裸すら見慣れた存在だからだろう。水田マリ。ゆりあが買い取った学園の理事長である。その学園こそ魔法少女の隠れ家として機能している。


「海外メディアの買収、いくらかかったの?」「費用的にはそこまで。12億ぐらい」


自分にもお茶を入れて、マリが答えた。


「後、100回は大丈夫ね」

「身体が持たないわよ」


佐藤ゆりあは『初めて戦闘以外で歴史に名前を残した魔法少女』である。元々の魔法少女としては最低の『レベル:A』。田代ナナについで低い71位だった。

それが任務で偶然知り合ったエコノミストから2009年にロイドブラザーズ証券がもう少しで破綻すると情報を得る。

幸い彼女はギフテット。さらに彼女の両親と自分の『死亡保険』という原資もあった。


膨大な資金を得た時、魔法少女全体にも危機が起こる。与党・自由平和党の衆院選敗北による政権交代である。そこで彼女はその資金で学校法人を買収、魔法少女の隠れ家とした。当時の彼女は15歳。現役の魔法少女『広井ゆりあ』だった。


広井ゆりあには運があった。政権交代した民生党の対処で『長田洋子』以来、ずっと続いた公安の支配が緩む。それに乗じて、『魔法少女』を文部科学省の配下にする事に成功する。その後も永淵総理による。いわゆる『ブチノミクス』相場や2014年のスイスフラン暴騰を勝ちきり、盤石な資金を獲得。名門『佐藤家』の養女となり政界に進出した。


『魔法』と『金』、さらには『権力』。

今や彼女は『永田町の魔女』として、政界を裏で操っている。


魔力は最低の「レベル:A」──だが、この国で最も恐れられる魔女は彼女に違いなかった。


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