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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第2章「国際問題編」

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第27話「魔女」

復讐を果たした彼女はホテルを出る。そしてスマホを取り出して上司に報告する。


「私です」

「ナナ、首尾はどうだい?」

「本国よりも気温が高い分、より繊細な精度が求められますね」

「君は我が『北の大国』最大の『魔女』だ。少し前の傭兵組織リーダーの暗殺も見事だったし、大船に乗ったつもりで見ているよ」


彼女は田代ナナ。元日本の魔法少女だった。だから、ここは彼女の母国である。


「久しぶりだね。ナナさん!」


突然、後ろから声をかけられた。


(声といい。姿といい。)


「何も変わっていないのね。広井ゆりあ。いいえ、『佐藤ゆりあ』!」

「また会えて嬉しい。飲みに行かない?『仕事』は終わったのでしょう?」



さっき『仕事』をしたのとは別のホテルの上層階のバー。流石に大臣ともなると貸切なのかと感心する。


「こんな姿だからね。貸切でないとお酒を売ってくれないんだ」


照れくさそうに笑うゆりあ。17年前と同じだと思う。


「さて、何を飲む?」

「日本酒、熱燗で。せっかくの帰国なのだし」

「私はウォッカを使ったカクテルにしておこうかな?」


互いの国を飲んでやるという、ちょっとした皮肉。程なく注文したものが出てくる。


「再会に」


ゆりあが言って、グラスと猪口を合わせる。


「「乾杯」」


2人の声が重なった。



22年前(2003年)。東京近郊。


「茜ちゃん、新しい名前、決めた?」

「少しでも運が良いように『ナナ』にしようかなって。ラッキーセブンのナナ!」

「いいね。私は『ゆりあ』!」

「後は苗字だね」

「そんなの簡単だよ。これを使おう」


そうやってゆりあが取り出したのは電話帳だった。


「こうして!」


適当に指を電話帳に入れ、そのページを開く。


「決めた『広井』!『広井ゆりあ』!」


無邪気に笑う。私は12歳でゆりあは10歳。なんだか別れたばかりの妹みたいだった。


「私は・・・『田代』ね。『田代ナナ』にしよう」


魔法少女になってまだ2〜3日。この時はまだ、希望があった。



数日後。


「まただ」

「私も。お揃いだね。ナナさん!」


おねしょが始まり、やがておむつが手放せなくなる。それでも彼女、ゆりあは。


「パソコンで何してるの?」

「デイトレ。この間、任務で見た人がTOBが始まるって、心の中で言ってた。私は魔法少女になって『死んだ事』になって、保険金があるから、それを元手にね」


現実も未来も見つめていた。



別の日、訓練中。


「2人とも使えないな!」


吐き捨てる様に公安の中年男性が言った。ジェフ太郎。明らかに偽名のふざけた男。これが最初の担当教官。なんと、妹に魔法少女になる指輪を渡したのもコイツらしい。


私達、2人は落ちこぼれだった。だが、


「ジェフ教官は?」

「実は昨日の夜、帰宅中に車に撥ねられて・・・」


唐突な別れ。

でも私は知っていた。


『200万でどう?うん、お願いね』


どこかに依頼するゆりあの背中を。

そしてそのすぐ後、私は北海道に。ゆりあは中四国エリアに赴任してそれきりだった。



現在、ホテルのバー。


「あの時、パソコンで作っていた資金で『明王義塾学園』を買収したんだろ?凄いよね。さすが『戦闘以外で初めて歴史に名前を残した魔法少女』」

「ロイドブラザーズ証券が破綻するって、あっちの国の上層部と握手する機会があって知ってたからね。わかれば逆張りで簡単だよ」

「それで民政党に政権交代した時も、魔法少女を『学生』として保護できた。本当に尊敬するよ。さすが『永田町の魔女』」

「『北の大国の魔女』に言われたくないね。世界的にはナナさんのが有名じゃない?てか、2011年の311を利用して、公安の監視を振り切るとか凄いよ。しかも、水面下で向こうと交渉済みでしょ?」

「知っていたんだ。私の正体」

「ええ、空気を操る魔法少女だった。そしてそれは今も変わらない。台風の様な風は起こせないけど、他人の体内に空気を入れる事ができる。それを使えば心筋梗塞や他の病気に似せて暗殺可能。知っている?ヨーロッパの『魔法の国』では成人を過ぎた魔法少女を『魔女』と呼ぶんだって」


少し酔ったゆりあがいつもより饒舌に言った。それをポツリ返すナナ。


「『永田町の魔女』と『北の大国の魔女』。どちらかが明日、死ぬのね」

「明日、じゃなくもう今日だけどね。願わくば、明日も一緒に飲みたいわ」

「知ってる?私の国では『できない約束をするのは、嘘をつくのと同じ』って言うの」


それがどちらの国なのかゆりあにはわからなかった。


2人はグラスを合わせ、音が夜に吸い込まれる。それがどちらかの最後の乾杯になるかもしれなかった。

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