第25話「圧倒せよ」
このお話はフィクションです。
登場する人物・団体・国など全て架空のものです。
モデルがあっても全くのデタラメ・空想なんでよろしくです。
東京都千代田区永田町2丁目3-1。首相官邸地下1階「防災モニター室」
「ふふ、これでウチの勝ちは確定ですな!」
ニヤニヤと笑顔を隠そうともせず、防衛大臣、朝倉幸男は言った。それを制すように1人の男が言う。
「まだ、わかりませんよ。僕が防衛大臣だった時も、何度もひっくり返されましたから」
自由平和党総裁・内閣総理大臣、中島浩二。この国の最高権力者。10年程前に防衛大臣をしていたと佐藤ゆりあは記憶している。
「総理。どちらかに肩入れは良くありませんなぁ。防衛省さんだって、『AMFG』の開発に120億程かけたそうじゃないですか?三つ葉グループはそれで製薬部門を身売りしたとか」
煽るのは山岡龍馬国家公安委員長。
佐藤ゆりあは腕を組み、無言でモニターを見つめていた。
(圧倒しなさい!)
この一戦は、政治的な意味もあった。
静岡・山梨県境、防衛省・富士演習場。
彼我兵力差3:500。のはずだった。
「第1・3小隊、全滅。第2小隊も損耗率60%超。後方の第5小隊とごうりゅ・・・第2・5小隊全滅。水蒸気爆発とのこと。重軽傷者多数!」
「死亡判定で全滅した小隊に救護させろ」
絞り出すように黒川が言う。僅か15分。彼我兵力差3:350にまで変わっていた。
同所、第4小隊。
相手は公安のエージェントだと言う。相当の手練れだと松相遼は思った。入隊から7年、マガジンの硬い81式をあんなに簡単にリロードしている。さっき、俺は死んだ。右胸にその証拠のペイントがしっかりとついている。
中高生に擬態して任務をこなしていると説明だったが、本物に見える。ブレザーの制服にチェックのプリーツスカート、ローファーという格好がこの演習場に不釣り合いなのに、汚れひとつついていない。81式の反動を華奢な身体で受け流している。高く跳躍して塹壕の上官を狙う。
(おむつ?)
スカートの中が見えてしまった。中高生の見た目に似つかわしくないそれは、3歳になるウチの子と同じデザイン。
(そうか、女で長期戦も見据えてか!)
覚悟の違いに圧倒された。
30分後、黒川陣営。
彼我兵力差、3:3。悪い夢でも見ているようだった。彼女達が魔法を解禁してから、熱いナイフでバターを取るように、なめらかに兵力を刈り取られた。
(1人ぐらいは!と思ったがやっぱりダメか)
両手を上げて、降参の意を示す。
「降参だ。戦闘マニュアルを書き直すところから始めないと勝てそうもない。見事だった」
黒川は目の前にいる魔法少女達に敗戦の弁を述べる。
「ごめんなさい。『圧倒しろ』って命令なんです!」
そういって黒川はヘルメットにペイント弾を撃ち込まれた。
東京都千代田区永田町、首相官邸地下1階「防災モニター室」
「圧倒だったな!」
「圧倒でした」
「完敗です」
男3人が短く感想を言う。
「それで、そろそろ教えてもらっていいですか?『特殊任務』の内容を」
ゆりあが言った。しかし、それに答えるのは意外な人物だった。
「私から説明しますわ、中島首相」
部屋に入ってきたのは外国人女性。ブロンドの髪を三つ編みにして頭に巻いている。外務省の職員が申し訳なさそうに後ろからついて来る。
(確か62歳のはず、ずいぶんと若く見える)
「そんな!マリア=ティモシェンコ!ロクライナの副大統領!?」
彼女がこう言った公の場で声を裏返す事は珍しい。それだけこの事態が異常である事がわかる。マリア=ティモシェンコ。ロクライナの野党『マリア・ティモシェンコ・ブロック』代表だが、北の大国のロクライナ侵攻により「政争は後からできる」と連立し、副大統領に就任した。
「我が国と北の大国は3年前から戦争状態にありましたが、来週、ここ東京で停戦合意書にサインを行います。両国共に『継戦支持派』がいて過激なテロにはしる可能性もあります。そこで今回、警護役の厳選を中島首相にお願いしたのです」




