第22話「大阪の魔法少女」
大阪府高槻市。
大阪市と京都市の中間に位置し、古くからベッドタウンや衛生都市として栄えてきた。しかしそれも今は中心部に限った話で、南部の住宅地では少子高齢化が進んでいる。
それに巻き込まれる形で、閉園した保育園があった。その建物を再利用する形で、『明王義塾学園・大阪校』は存在した。いや、大阪市内に立派な新築の『明王義塾学園・大阪校』は存在する。しかし、在籍する2名の魔法少女がここを本部として勝手に使用していた。
『引退魔法少女より入電、大阪市浪速区恵美須東、春日通付近で魔力中毒者事案発生』
テンペストが赤く光緊急事態を告げる。
「『三つ葉メディカル』が『プリンス製紙』に買収だって」
「子会社に『三つ葉ファーマシー』があるから、シェア獲得狙いじゃない?ドラッグストア第3位」
「あー、一応シナジー効果あるんだ」
元々施設にあった幼児用の浅いプールに浮かぶ2人の少女。関西圏を一手に担う魔法少女チーム『りす組』の2人だ。
『西の天才』『最速の魔法少女』と呼ばれる岸本梓。さくらに抜かれるまでダントツの魔力使用量を誇った。そんな彼女が言う。
「そろそろ行こうか?」
「そだね」
見た目は小学生低学年の少女に声をかける。あやめが『レベル:E』になるまで日本一の精神感応系の魔法少女だった、三月沙織。そしてこの『元・保育所』の所有者でもある。つまりは毎月、『家賃』として国からお金が振り込まれている。
「『ワープ』!」
大阪府大阪市浪速区、通称「新世界」。
そのシンボルたる通天閣の上に彼女達は降りたった。
「あそこだね」
通天閣から放射状に伸びる道路の1つにそれはいた。ビースト。人類の魔力中毒者の成れの果て、人類の敵。
「『いってらっしゃい♪』」
ふざけた呪文を梓が言った瞬間。ビーストの首がポトリと落ちる。手に持っていたガラス板を頭部と肩の間に転移させたのだ。
続いて、沙織が呪文を唱える。
「『酩酊』!」
これで周辺500mの人間は酩酊状態になり、記憶が曖昧になる。
「状況終了。作戦時間1分以下のため、メディカルチェック不要。帰投する」
『了解』
テンペストの向こう側のオペレーターの声に若干戸惑いが混じる。発生、入電から5分経っていないからだ。
「あずちゃん、串カツでも食べない?」
「沙織ちゃん、私達の格好を見ようか?」
2人ともプールから上がったまま。水遊び用のおむつにキャミソールだけだったのだ。
一度帰って、着替えて串カツもいいなと梓が考えていた時、再びテンペストが赤く発光する。
『京都府舞鶴市の病院にて、ビースト発生!現在2体が発見。スタンピートの可能性あり!』
「この格好で行って、私達が入院させられないかな?」
「そうなれば、少しは休めるよ?」
あはは。と笑って『ワープ』する。
京都府舞鶴市。日本三景『天の橋立』に近いここは海上自衛隊基地もあって、海のイメージが強い。が、今回は山間地の病院だった。
「ここだね」
「目撃者がいても厄介だし、先にやっちゃうね。『深睡眠』!」
これで動いているのは、ビーストか魔力中毒者となる。
「おじゃまします」
ゆっくりと病院に入っていく。
「『いってらっしゃい♪』」
往年の名司会者みたいに呪文を唱えて、窓ガラスに触れて、転送。ロビーにいた1体目を倒す。
「そういえばさ、さっき話してた『三つ葉』って『重工』が、私達を無効化する兵器を作ったらしいよ?」
「アンチ・マジック・フィールド・ジェネレーター。頭文字をとってAMFGだっけ?」
「そう、それ!同盟国で開発されたものを大型化。トラックサイズにして半径1キロを魔法無効空間に変えるらしいよ?」
「それはおっかないね!」
「東京の子らが戦う予定だったけど、前日に緊急出動があって、流れてるらしい」
会話しながらも2体目、3体目を屠っていく。100m以内なら射程圏の梓にとっては室内という環境は逆に都合が良かった。唯一の弱点は死角からの攻撃だが。
「階段踊り場にもう1体」
沙織がフォローする。
「ねえ、同盟国に行けば買えるかな?」
「プロトタイプはスタートアップ企業が開発したって話だし」
「行こうか!同盟国!」
日本で3例目のスタンピート。1回目は伝説の魔法少女が必死に抑え、2回目は惨憺たる結果になり、3回目はこうして呆気なく収束していく。
大阪・京都・神戸と関東に次ぐ人口をカバーする関西圏の魔法少女はこの2人だけ。
紛れもなく『天才』だった。
さくら「・・・・主役とは?」




