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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第1章「さくら、魔法少女になる」

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第18話「1971年の魔法少女」

あの年は梅雨が長かったと記憶している。

そして、彼女と出会ったのもその季節だった。


長田洋子。

すでに彼女は魔法少女の伝説だった。

3つ以上の能力を発揮する『マルチスキル』。

彼女の戦術をマネる事で生まれた『小隊ドクトリン』。

そして、今や誰もが使える『浄化』魔法の発明。

彼女の前と後で魔法少女は全く別ものになった。そして、その名声は公安に入りたての若造の僕の耳にも入る程だった。


そんな女が僕の目の前で、コーヒーにミルクと角砂糖を2つ入れて、スプーンをくるくるとかき混ぜている。


僕の第一印象は『可愛い女』だった。

勘違いしないでほしい。写真で見る長田は、いや実物もだが、決して美人でも可憐でもない。

それでもなぜか、そう思ってしまった。


場所は京急蒲田駅の近くの喫茶店で、この『会談』で歴史上、『連帯赤軍』は発足した事になる。ただしこれは『茶番劇』である。もう3週間前にこの会談は決まっていて、僕は役割を演じているにすぎない。だからここでの会話は一切、記録されていないのだ。


「あなた、騙されて公安に入れられたんですって?」

「騙されてっていうか、大学には行きたかったので・・・」

「そう、メリットもあるのね。私も公安に入らなかったら、薬学部なんて行けてないかな。『女に学歴は不要!』みたいな家庭だもの」


雑談のような会話が2時間続いた後。


「それじゃあ、そちらの『赤軍』さんとこちらの『連帯左派』は合流して、『連帯赤軍』ね。年末年始に観光客でいっぱいの観光地のホテルを占拠して、テレビ中継させて。世間に嫌悪感を抱かせましょう」


まるでついでのように、そう言った。

そして、この時点で連帯赤軍の終焉である『シイバ山荘事件』は決まっていたのだ。


この『茶番劇』の『シナリオ』を書いていたのは彼女だった。

今思えば、高卒で警官になるはずだった僕を、わざわざ大学へ行かせて学生運動に潜入させた――その筋書きすら、彼女が描いていたのかもしれない。


そして、秋が過ぎ、冬になった。


ここで初めて彼女の『シナリオ』に誤算が生じる。『スタンピート』と『冬将軍』だ。彼女の計画では集まった20人の同志と共に、年末年始の観光ホテルを占拠、我々アカと白い正義の警官隊との睨み合いを中継で紅白歌合戦の代わりに日本全土に放送させるつもりだった。


ところが寒波の到来で道路は寸断され、計画していたホテルは開店休業状態。ナポレオンやヒトラーさえ抑えた『冬将軍』は、伝説の長田洋子でもどうしようもなかった。


更に別のホテルを占拠しようとした我々に新たな試練が襲う。長野県警が我々を捜索中に1人の巡査が魔力中毒からビースト化、それが我々メンバーにも飛び火して『スタンピート』になった。


「アイアンメイデン!」


彼女の呪文で白銀の大地に無数の針の雨が刺さる。魔法少女の戦いというものを初めて僕は見た。

魔法少女は彼女1人。対してビーストは6体に魔力中毒者20名。絶望的な戦力差だ。


「断罪」


今度は紫電が疾る。


結局、魔力中毒者を浄化しても、ビーストがすぐに他の人間を魔力中毒にしてしまう。仕方なく、彼女は手足を折って無効化した。しかし、雪山では命を奪う事と同義だった。彼女は泣きながら、1人で戦い続けた。


それは本当に可憐で美しかった。


多大な犠牲を払って、生存者は6名。そしてこの戦いは表向きでは『内ゲバ』とか『内部リンチ事件』として報道された。


その後は彼女の『シナリオ』通りに、僕と彼女は逮捕という形で舞台を降りた。実際は言うまでもなく、公安による『保護』だ。


そして舞台に残された4人は、主役の座が降って湧いたかのように『シイバ山荘事件』を起こした。それが『連帯赤軍』最後の事件となった。


後は知っているだろう?クレーンに吊るされた鉄球や放水。発売されたばかりのカップ麺をすする機動隊員。


アクシデントはあったものの、彼女は『シナリオ』を。いや、『歴史』を作ったんだ。

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