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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第1章「さくら、魔法少女になる」

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第13話「無知は罪なの?」

「さくら!朝よ。起きない!」


カーテンを開けば、窓の向こうに富士山が見える。


(あ、誰かの夢だ)


私は理解した。

昨日の訓練で精神感応を使いすぎたせいだろう。私の生まれ育ったのは青森県で富士山は見えない。


誰かさんは傘をさして学校へ向かう。どうやら4年生のようだとわかる。教室も下駄箱も『4-2』となっているから。

1時間目、2時間目と普通にすぎていく。どうやらこの子は『辻村さくら』ちゃんと言うらしい。

ところが3時間目の途中で豪雨になり、学校は早期下校を判断した。


雨は夕方になっても降り止まず、住んでいる地域にも避難勧告が出たらしい。


『富士宮市全域に避難勧告が発令されました』


防災放送からここが富士宮市だとわかった。リビングでは母親が豪雨で道路が通行止めとなり、帰ってこれない父親を責める。


そして、事故は起こった。


土石流。


この子の家は半壊した。幸い、母親も保育園児の弟も無事だ。周囲の家も壊されたり流されたりしているのがわかる。


その時だった。フワリと魔法少女が壊れた家の中に救助にやって来た。


「これから救助にあたりますが、3人いっぺんには不可能です」


協議の末、弟と母親がホウキに乗せられて、ゆっくりと飛んでいく。この子が1人で家に残る事になった。


すぐに魔法少女は戻ってくる。


そこで更に悲劇が襲う。この子を助けるために高度を落としたところに切れた電線があたる。一瞬、身体をビクリと反った後、ばたりと倒れ込んだ。


土石流はすぐにでも、自宅を飲みこんでしまうだろう。今はなんとか持ちこたえているだけの状態だ。


倒れた魔法少女からテンペストを外して自分の手首に装着する。


幸い、この子には魔法少女の素養があったらしい。肉体強化が働き、魔法少女を抱えホウキで飛び立ち、難を逃れる。それを待っていたかのように自宅は土石流に飲み込まれた。


ただし、どこに行けばいいのかわからない。上空から見る生まれ育った街は、土石流で小学校も公民館も茶色く染まって見えた。


『おい!ミズキ!どうした?』


テンペストから呼びかけられる。常時接続らしく、操作は必要なく呼びかけに応じられた。


「ホウキに乗ったお姉さんは、気を失ってます!代わりに私が飛んでます!私の名前は辻村さくら!」


小学4年生の生命の危機直後にしては、冷静に言えた方だと思う。私だったらこうはいかないだろう。迎えに来た魔法少女に先導される形で、避難所になっている高台の中学校に着陸する。


現在の私が知らない大人が近付いて言う。


「私達は魔法少女。あなたは魔法を行使したよね?『青少年健全育成法』に基づき、あなたには2つの道がある。1つは罪人として記憶を操作されて収監される。もう1つは、今後魔法少女として生きていく事。ただし、あなたは死んだ事になる。どちらを選んでも、家族とはもう住めない」


突然の事に言葉を失うこの子。私はこの人に言いたい。知らなかった事は罪になるのか?と。今の私がどれだけ憤っても過去は変わらない。


「管理官、ミズキが負傷しているため、精神感応できる魔法少女がいません。避難者の記憶操作はどうしましょう?」

「本部から応援を呼びましょう」

「必要ない!私がやる!」


この子は決断した。魔法少女になれば「死んだ」事になる。それを体現するかのように記憶がフラッシュバックする。弟、勇二との対面や4人でのお出かけ。小学校の入学式。不意に太ももに温かさを感じる。おもらしだ。


「さよなら、父さん、母さん、勇二!」


そこで一区切り、息を大きく吸い込む。


「『忘却』!」

「効果半径100m超?この子!凄い・・・」


管理官は驚きを隠せない様子だった。



♦︎♦︎♦︎


「さくら、起きろ!」


ワカバちゃんが肩を揺すって、私を起こす。


「もうすぐ朝ごはんだよ」


ぐっしょりと溢れそうなおむつを脱いで、ウエットシートで綺麗にして、新しいのをつけ、ダイニングに行く。もう他の3人は揃っている。スープのいい匂いが出迎えてくれる。


「今日はゆっくり1日休んで、明日からの自衛隊との合同訓練に備えるわよ」


大島先生がそう言った。それを待っていたかのように、ワカバちゃんが声を出す。


「それではみんな手を合わせて!」


「「「「いただきます」」」」


4人の声が揃った後、テンペストが赤く光った。


『静岡県富士宮市、淺間神社にて魔力中毒事案発生。中京のチーム1は金沢で災害派遣中。応援中の東京、チーム・サマーは別の事案終了後で帰投中。その後、メディカルチェックのため出動不可。演習場のチームスプリング、出動されたし』


ハァー


と大島先生のため息が聞こえる。脇に置いていたタブレットを取り出して、全員の状態に異常がないか確認している。


「全員問題なしか!断れないジャン」


若干、問題は感じるが、私達を思いやっての事だ。問題ない。多分。


ワカバちゃんは慌ててパンをかじりつき、あやめちゃんはホウキを取りに戻った。




演習場から富士山を挟んで反対側、富士山の裾野に広がる街。そこの神社の境内に降り立つ。魔力中毒者は小学生の男の子らしい。多分、写生でこの神社にやってきたのだろう。スケッチブックや水彩画道具がその辺に散らばっている。


「勇二!」


あやめちゃんの声だった。

魔力中毒者を見るなりそう言った。

そしてこの子は私にも見覚えがあった。


それは、今朝見た夢の子の弟だった。

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