第11話「進化と対価」
静岡・山梨県境、防衛省・富士演習場。
今日は広い自衛隊基地で訓練となった。
理由は2日前にさかのぼる。
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2日前。
「さくら!氷を飛ばす練習したいから、壁を作ってくれないか?」
訓練の時間、ワカバちゃんが言い出した。大島先生も首を縦に振って許可を出す。
「了解、『アイス・フィギュア』」
氷像が現れる。
「え!」
「ちょっと!どういうつもりよ!」
モデルとなった2人から抗議の声が出る。
それもそのはず、『ナイフを持った大島先生が人質となったあやめちゃんに危害を加えようとしている』形をした氷像だからだ。
「実践想定の方が精度が出るかなって?」
ため息混じりに2人が了承する。
「やるよ!『アイス・アロー』
文字通り氷の矢を出す。しかし、習得したての魔法は上手く飛ばせない。私の魔法の命中率が低いのも同じだ。私も同じ氷像を出して、同じ訓練をする。
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「よし、もうすぐ終了ね」
大島先生が時計を見て言った。
「氷像を片付けようか」
「待って、ラストは温める魔法で溶かす訓練もしたい」
ワカバちゃんは習得した魔法を早くモノにしたいのだろう。大島先生も笑顔で許可した。
そして、氷像に触って、
「加熱」
その時だった。
轟音とともに隣接する校舎内のガラスが全て割れて飛んだ。
水蒸気爆発。マグマみたいな熱い物体に水をかけると急激に温度上昇して、体積が1500倍に膨れ上がる現象。
その衝撃波でガラスが吹き飛んだのだった。
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「いやー、あの時のマリ理事長は怖かったね」
ワカバちゃんが笑って言う。テレビニュースにはガス爆発として報道された。
「笑い事ではないわ。あなた達、魔法少女は無意識のうちに肉体強化がされてるけど、一般生徒がいたら大惨事よ。まあ、理事長は怖かったけど」
大島先生もたしなめつつ、同意してる。
今回の訓練は、その水蒸気爆発でどんなことができるかの訓練である。ちなみに私も水蒸気爆発を起こせるようになった。
訓練場内に何度か轟音が響く。
「これは・・・」
「ハッキリ言うわ、使えないわね。威力は認めるけど、周囲の被害が読めないし隠蔽が大変」
大島先生の言葉の通りだ。
せっかくの広さだ、大島先生の提案で狙撃訓練に移る。
私もワカバちゃんも50mくらいなら9割当たるようになっていた。これが学園での訓練できる最長距離なのでしょうがない。倍の100mにチャレンジしてみる。
成功率10%ぐらい?ワカバちゃんも似たようなものだ。一方で100%を誇るのがあやめちゃんだ。彼女は拳銃を手に肉体強化で反動を抑えて100mの距離をものともせずに当てていく。
「風向きとか、空気抵抗、重力も読んでる?」
「多分、オータムの花乃さんは経験でそれを読んでるだろうけど、わたしはまだ無理だ」
ワカバちゃんが投げやりに言う。花乃さんって誰だろう?
「私は精神感応系だからかな?拳銃持ったのなんて今日が初めてだけど、どこに当たるかわかるんだよね」
そうかと思う。あやめちゃんは魔法を使う時、魔力を薄く輪のように広げていく。あれは人がどこにいるか把握するためのものだ。多分、無意識にやっている事。それがソナーの役割だとしたら。
「ねえ?その感覚をワカバちゃんに共有できないかな?ゲームでもあるじゃない。『命中率補正』の魔法。『バフ』みたいな」
あやめちゃんの中で、何かを掴んだのだろう。目が少しだけ大きく開いた。
「やってみるね!『鷹の目』」
ワカバちゃんに魔力の膜ができる。
「よし!『アイス・アロー』」
同時に3つ打ち、3つとも命中した。
その後は距離を離していき、最終的に2000mまで狙撃が可能になった。
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今日は宿泊所で眠る。私達3人と大島先生も一緒だ。富士演習場は魔法少女がよく訓練場にするらしく、近くにロッジ風の建物で宿泊所が建っていた。
東京からの移動と、魔法をなんだかんだで使い続けたのでみんな直ぐに寝息をたてた。
はずだった。
夜中、冷たい感覚で目が覚めた。
あまりにも大量のおねしょにおむつが耐えきれず、布団まで汚していた。昼間に魔力を使いすぎたせいだろう。
とりあえずおむつを交換しようと立ち上がって、歩き出した瞬間。盛大に転倒した。限界までおしっこを吸収したおむつが足首までずれて、足がもつれたからだった。
「何やってんの?大丈夫か?」
ワカバちゃんが起きて、私を助けようとするが、同じようにバタンと転ぶ。しかも私を押し倒したように、ワカバちゃんが私の上に乗った状態。
「2人とも、何して・・・ごめんなさい!ごゆっくり」
2人ともおむつがずれ落ちて、下半身は裸の状態で上下に抱き合っている。
「違うって!あやめぇ!」
思わず叫ぶ、ワカバちゃん。
その腹圧でワカバちゃんから、更に温かいものが排出され、下にいる私にかかった。
「ワカバちゃん、かかってる!」
「え?あ!ごめん、さくら!」
「あなた達、まだ起きるには早・・・多様性って奴かしら?・・・まあ、報告書には書かないであげるわ」
大島先生まで。
こうして合宿所の夜は更けていった。




