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心に痛い寓話集  作者: Selle Celery
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お金の魔術

作話:Selle Celery

みんな、こんにちは! 今日は、みんなが毎日使っている「お金」が持っている、ちょっと不思議な「魔術」についてお話ししよう。


お金は、とても便利な道具だよね。自分がお手伝いしてもらった「ありがとうの券」を使って、お店でおかしを買うことができる。


これは、お父さんやお母さんが一生懸命働いてもらった「ありがとうの券」と、お店屋さんの「おいしいおかし」を交換しているんだ。


これを等価交換とうかこうかん、つまり「同じくらいの価値を交換する」って言うんだ。これが、お金の正しい、素敵な使い方だ。


なまけものの王様の魔術

でも、お金は時々、ちょっと変わった、ずるい魔術も使えてしまうんだ。


むかしむかし、ある国に、とてもお金持ちだけど、とってもなまけものの王様がいた。「考えるのも、動くのも、変わるのも、ぜんぶ面倒だ!」と思って、毎日ベッドでゴロゴロしていた。


でも、王様は、みんなからは「すごい!」って尊敬されたかったんだ。わがままだよね?


そこで王様は、お金の魔術を使った。お城のそうじをする人、おいしいごはんを作る人、そして「王様は素晴らしい!」と毎日ほめてくれる人を、ぜんぶお金でやとったんだ。


そして王様は言ったんだ。「そのお金は今度は君が誰かにしてもらう時に渡せばいい」。


するとどうだろう。王様は、何にもしていないのに、みんなから「素晴らしい王様だ!」と尊敬されるようになった。


これは、お金が「なまけたい気持ち(怠惰)」と「尊敬されたい気持ち(敬意)」を、同時かなえてしまった、不思議な魔術なんだ。


お金のふしぎな性質

どうして、お金はこんな魔術が使えるんだろう? それは、もちろん王様が、その使い方を認めたからだ。


でも、そういうお金の使い方が始まってから、大勢の人から笑顔が消えていった。その原因はお金が、他のものとは違う、二つのふしぎな性質を持っているからなんだ。


お金は、くさらない みんながおうちで食べるリンゴやお魚は、時間がたつと、くさってしまうよね。だから、みんなで分けたり、急いで食べたりしなくちゃいけない。命あるものは、いつか劣化する。これが自然のルールだ。でも、お金(コインや数字)は、何年たっても、くさったり、劣化したりしない。なんだか、ふしぎだよね。


お金は、なぜか増える もっとふしぎなことがある。くさらないはずのリンゴを、誰かに一年間あずけたら、お礼に小さいリンゴが一個ついて、リンゴが増えて戻ってきた。そんなことって、あるかな? でも、お金は、銀行にあずけたり、誰かに貸したりすると、「利子りし」がついて、なぜか少しだけ増えるんだ。


このことで、多く持っていた人はいくら働いても追いつかないほどお金を使って、働くことよりもさらに多くのお金を持つようになったんだ。


この魔術のコワさ

そして、お金は人を働かせることができるから、やりたくないって思っていても、お金をもらうためにはその人のためにいやいや従わなくちゃいけなくなった。


王様に近い人は、ご機嫌を取るだけでお金がもらえたけど、物を作ったり売ったりする生活に近いところで働く人は、本当に作りたいものや、届けたい人のために働くことができなくなったんだ。


だから、みんな余裕がなくなり、やけになって、こっそり手抜きをしたり、出し抜いたりするのがうまい人だけが、元気でいられるようになってしまった。


この魔術の、ほんとうのコワさ

「なまけものの王様」の話に戻ろう。 王様は、お金の魔術のおかげで、何もしなくても尊敬されて、幸せそうに見える。でも、ほんとうにそうかな?


王様は、自分でごはんを作れないから、料理の楽しさを知らない。自分で部屋をそうじしないから、きれいになった時の気持ちよさを知らない。


自分で何もしていないから、ほんとうの意味で、自分に自信を持つことができない。


そして、王様ひとりが「楽」をするために、たくさんの人たちが、余計に働かなくてはいけなくなった。


最初はお互いの「ありがとう」を交換するための券だったはずなのに、いつのまにか、王様のわがままをかなえるためだけの、一方通行の命令書になってしまったんだ。


でも王様は楽をして考えないし、動かないし、変わるのも嫌だったから、自分のことは棚に上げて、ちゃんと働かないみんなが悪いんだって、おべっかを使う人から言われて、ずっとその通りだと疑わなかった。


ほんとうの魔法使いになろう

お金は、このように使い方を間違えると、人をなまけものにしたり、誰かを苦しめたりする、ちょっとコワい魔術になってしまう。


でも、忘れないで。ほんとうの魔法は、お金の中にあるんじゃない。 新しいことを知ろうとすること、誰かのために動くこと、そして、昨日よりもちょっとだけ成長しようとすること。


その、君自身の心と体の中にこそ、世界でいちばん素敵な魔法が眠っているんだ。


お金は、その素晴らしい魔法を助けるための、便利な「杖」や「道具」にすぎない。


道具に心を乗っ取られず、君自身の力で未来を作る、ほんとうの魔法使いになってほしいな。


ヒント:魔法の一歩

考えること、動くこと、変わることからこそ、学ぶことを知り、それを悦びにできることが、人を苦しめる魔術じゃない、人を助ける本当の魔法です。


だって、王様が逃げたのはそれだけなんだから、その逆をやれば世界はよくなるよ?


渡すだけで逃げてるのに尊敬されるってなったら、誰もが逃げるようになるよね? だって、命令する姿は実際偉そうに見えちゃうからね。でもその口車も技術だろうけど、実質は何もしてないんだからね。


本当は、人と人が交換したり、つながったりするだけなら、それはお金じゃなくてもいい。お金はもともと感謝を伝える手紙だったのだから、直接伝えればいいんだ。それこそ手紙だっていい。


そういうこともちゃんと考えて、必要なら動いて、変わらないと、人もいずれ住めなくなるよ?

解説は不要かな。

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