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お嬢様、戦争犯罪ではなく戦争そのものが犯罪です

【お嬢様 悪治物語】は天使で、いえ、あくまで五十界(いせかい)が舞台の、架空とされるお話です。


※本文内の台詞は、以下のようになっています

『』:照子(てらすこ)

「」:十夜雨(とよう)



 ここは五十界いせかい――

 高貴の出な二人が、議論を戦わせている。


『私は本当に人々の暮らしを良くしようと』


「それでもで、ございます。

「クニを治めるモノは、最大の強制力を持ちます。

強いる事は悪であり、強いる内容の如何に関わらず、強いたモノは罪を帯びます」


『えっ』


「例えば、よく戦争犯罪と言いますが戦争そのものが犯罪。

いつの時代においても、戦争は最大の強いる悪、強悪犯罪にして最悪の人質事件となります――」




「戦争は、戦う必要のない民までもが犠牲になり、その犠牲がまた新たな犠牲を強いる。まるで、終わる事のない敵討ち」


『……』


「戦争とは、治める者の最大の不始末。本来、あってはならない事なのです」


『でも。攻められたら……』


「そう、その為の備えは必要です。

ですが、クニとクニの争いである戦争ではない場合、例えば……武装集団が襲撃してきたと仮定します」


『う、うん』


「その時は警察や軍等の専門チームが対処し、収束すればそれで終わりです。戦争の様に以降も継続し、長期に渡ることはない」


「戦争は一度始めたら、直ぐには終われない。戦争を始めたクニを治めるモノが”や~めた”と言うまでは」

「また、仮に”や~めた”と言っても、戦争を仕掛けられたクニを治めるモノが、報復を望めば戦争は終わらない」


「これは、治めるモノが持つ強制力によるものであり、治めるモノが本来すべき役割から逸脱しているにも関わらず、強制力を持ち続けている事に起因します」


「また、本当は戦争など行いたくないのに、その強制に決して抗えない双方のクニの民は人質のようなものです」


「そう、強悪犯と化した治めるモノが、戦争を続けるため、治めるモノで居続けるため、自らのクニの民を人質にする……」


『はい! 故に”戦争は最大の強いる悪、強悪犯罪にして最悪の人質事件”なのね』


「その通りです。お嬢様」


『でも、飛ばし過ぎよ、十夜雨(とよう)。途中、私のことを忘れていたでしょ』


「いえ、そんな事は……」


『あと二人の時は、呼捨てで呼んで』


「はい、照子(てらすこ)お嬢様」


『もう……』




「お嬢様」


――呼捨てで良いと言ったのに、名前で呼ぶ気はないようね。


「お嬢様!」

『は、はい』


「先程の件、問題点はどこにあるかお分かりでしょうか」


『治めるモノの強制力により、戦争が続いてしまう?』


「はい。それは”交戦権”といって、今は広く認められています。

戦争にも色々なケースがあり一概には言えないのですが、出来るだけ早く交戦権は無くすべきと考えます」


「戦争も、昔のように相手が何ものか判らず……」


『魔物や化け物といった得体の知れないものの可能性?』


 そっとうなずく十夜雨(とよう)

「意思の疎通が出来ず……」


『言葉が通じない――言語の翻訳!』


 大きくうなずく十夜雨。

「今、挙げたように交渉のすべがない場合は仕方がないとしても、交渉する余地があるならば戦争をさけるために、最大限の努力をするのが治めるモノの本来の役割です」


『本当にその通りだわ、十夜雨』


「お嬢様、民が治めるモノに望むことは一つです。唯々、良く治めること。唯々、上手く治めること。そして、世界が丸く収まること」


「だだ、それだけでございます」



 その夜、照子(てらすこ)は良い夢を見た――



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