ライバル
とにかく、大岩がごろごろある地帯を抜けて、乾いた砂地が広がる平原をひたすら走った。
最小限休息をとり、夜間も走った。
バギーのレーダーに映る平原は無味乾燥だった。
「この星は暑いわ」
イフェが水を大事に口に含みながら言った。
「君の惑星は涼しかったのかい?」
「雨が。ずっと降っていた。水の惑星」
「じゃあ、ここの星につれてこられて嫌じゃないか?」
「ここの星は、なにもかもカサカサに乾いてるけど、嫌いじゃないわ」
イフェは丈夫な種族だとしみじみ思った。
「ロクサ。バギーに追いついたわよ」
他のチームのバギーが捕捉できた。
「なんか様子が変だ」
点々と故障したバギーが見える。
「どうしたんだ?!」
「やられたんだよ。俺らここから歩きで帰らなくちゃならない」
「やられた?誰に?」
「キンチャとロイドの野郎に」
「キンチャが?まさか」
「ロクサ。キンチャは優勝を狙っていて、容赦ないぜ」
「サイとマイクのバギーが先頭を行ってるらしいから、キンチャたちはそれを追いかけてる」
走行不能にされたバギーをいくつも目の当たりにして、キンチャが本気なんだと身震いした。
レースの実況を伝えていたヘリの無線が壊れていて正直何が起こっているか知らなかった。まさかヘリまで撃ち落としたんじゃなかろうな。
「どうする?イフェ。途中棄権したほうが良くないか?」
「いいえ。先に進みましょう」
イフェは無表情で言った。