化物は残ります。
静寂の後、今が好機とばかりに、ビィー、カイナ、女騎士は攻勢にでる。
ビィー「はぁ!!」
カイナ「やぁぁ!」
女騎士「ふっ!」
三人が一斉に、バラスに斬りかかる。
だが、黙っては殺られないバラスだ。腕で斬撃を受け止めながら、ビィーを蹴り飛ばす。
腐っても、ゴブリンの王だ。
立て続け様に、カイナの体を掴み、俺に目掛けてなげる。
女騎士も、片手剣で応戦するも、蹴り飛ばされる。
バラス「舐めるなよ!人間風情が!」
怒髪天を衝いたのであろうか、バラスから赤いオーラ?気?のようなものが見える。
魔物なら出来るのであろうか?やってみたいと思った。
バラス「ははは、人間共もう、容赦は出来んわ!バラバラに壊してやる!!」
女騎士「これは、王級が出せる魔気!!?やはりゴブリンの王だったのですね!?」
ビィー「おいおいおい!?王級って本当か!?長年旅人をやってきたが、見たことないぞ!?そんなもの!?こんな村を拠点とし、根城にするつもりだったのか!?こいつは!」
カイナ「王級?王ってゴブリンの王だったんですか!?
道理で、並のゴブリンより、格段に強いわけです。」
バラス「ハハハハ!そうだ!もう慈悲もなにもないぞ!これが出せるのは、限られたそんざ……え!?そんな…まさか!」
黒いオーラ?気?さっき魔気っていってたよな?黒と青が混ざった、魔気が俺の周りを漂わせる。
それこそ、バラスなんかより、大きい魔気が俺から湧き出てくる。
雪「こりゃぁ。けったいやな〜。やってみたら出来るもんやん。ただ、フン!って力で入れただけで出来るなんて、そこらの化物でも出来るんちゃうん?」
バラス「黒い魔気…呪の魔気ではないか!?それこそ、あの方と同じの…お許しください!殺さないで。お願いします。」
ビィーやカイナは、恐怖のあまり動けなくなる。
女騎士は、動こうとするが身体が拒絶反応をおこす。
女騎士「喉元に鎌を当てられてる感覚…まるで死神ですね。」
ビィー「もっと、厄介なのが、俺達と一緒に居た。騎士様だったとはな。小便チビリそうだぜ。」
カイナ「……///」
何故か、カイナは恐怖と羞恥心で動けなくなっていた。
緑のズボンの股ぐら辺りは濡れて黒くなっている。
雪「俺なりに、やらせてもらぉ〜かぁねー。
散々殺ったんや。殺り返される事もあるっちゅうことやのぉ。
覚悟しいや!」
勢いよく走り出し、体当たりを当てる
2mある巨体も吹き飛ばすほどの威力だ。立て続け様に、右腕を切り落とす。
特定の魚のヒレと同じだ。
危ないし毒のある魚は、まずヒレから落とす。
刺さると危ないし、抵抗されると怪我をする。
そのまま、左腕も切り落とし、左足、右足と切り落とす。
バラス「だずげ…で。
にんげんざま。おねがいじまず。」
涙ながらに懇願する、ゴブリンの王。
四肢を切断され、そこらのゴブリン達と同じ大きさになった。
首を持たれ泣き腫らす。
雪「おーめらも、同じ事したやろ?人間たちにそんな、人間に助け求めてどないするん?
のぅ?バラスちゃん?」
首筋に剣を当てる。生きてる魚でも、必死に抵抗するように
四肢の無いバラスは、体を弱々しく揺らす。
バラス「イヤダイヤダイヤダイヤダ!!おがぁざん!だずげで!」
雪「死ぬまぁえに、親に助け求めるんか?自分
ドアホの塊やがな。ほな、堪忍な。バラスちゃんよぉ。」
バラスは上に投げられ、雪は空中で、微塵切りにする。
木端微塵とはこのことだ。
雪「ふぅ〜。」
バラスの死体はバラバラになり、息絶えた。
ビィー「……うぉぉぉぉ!!」
ビィーが声を上げる。
それは、悲しみより喜びがある叫びだ。
これ以上村を壊されない、汚されない。
只々、敵を討った喜びだ、死んでいった仲間の為に叫んだのであろう。その、目端でカイナはホッとしていた。これ以上、犠牲が出ないことに。
たが…
女騎士「………今のは」
深く考え、物理法則を無視した斬撃。
呪い…気…バラスは怯えていた…色々な思考を巡らせる、女騎士である。
雪「終わったんやなぁ。さぁぁてぇ
後片付けやな。バラスちゃん達が散らかした物片付けんと……ん?」
ビィーが喜びを上げてる中、教会の近くに、大きな…それも炊き出し用の鍋より、二周り大きい鍋が見えた。
少し凹んでいるが、穴は相手はいないことを確認すると、教会近くに井戸を発見する、井戸まで歩く…その最中
カイナ「どこに行く?鎧」
後ろから、着いてくる、カイナ
今は勝った美酒に、喜び溢れていればいいものを
言葉が通じないなら、指で教えればいい。
指で、井戸を指し、鍋に指す
その意を理解した、カイナは
カイナ「鍋に湯沸かすのか?」
首を縦に振る。
そのまま、包丁を切る動作をすると、察してくれたのか。
カイナ「……待っていろ。」
カイナがボロボロの建物に入って行き、食材を取ってきた。
カイナ「お前料理できるのか?」
もう一度首を縦に振る。
カイナが、食材を取りに行っている間に、街の瓦礫で出来るだけ四角い物を4つ持ってきて、固定した。
女騎士「……」
女騎士は、自分の左腕の応急手当をしている時に、カイナ、雪の行動を見てか、静かに薪を集めだした。
倒壊した、家の柱であったであろう、大きいのから、境界付近に落ちていた、枯枝を用意し
ビィーは、器やスプーン・フォークを集めるついでに、生き残った、村人達を呼びに行ってくれた。
村人達の女性衆も、これから何が起きるかを察してくれた為、食材や調味料をも集めてくれて、フィーナが近くに来てくれた。
フィーナ「鎧さん!この包丁使ってください!」
魔物だと分かっていながら、笑顔で包丁を貸してくれた。
色々な準備ができていく中、少し返り血で汚れていることを思い出し、井戸水を組み上げ、頭から何度も被り、しっかりと手を洗う。
これ以上錆びないかが心配だが。
さあ、調理開始だ!
雪「約40人ぐらいかのぉ?まあ、鍋もんやし!湯を沸かしながら、食材切りつけよか!
にしても、フィーナだっけかー?えらい業モンやな、この包丁、見たことない、野菜がバシバシ切れるわぁ〜。
こんな包丁うちの店も欲しかったのぉ〜」
見たことない野菜、調味料もよくわからない、見たことないハーブや液体、唯一塩だけは岩塩だってことはわかった
舐めてみたいが、先程姿見鏡で確認したが、顔が無かった。
けど、試したくなるのが人間だ。試しに顔のあったであろう場所に塩を入れてみた。
味がした…むしろ食べている感触がある。凄く塩っぱい…
だが、嬉しかった。俺は次々に調味料を口のあった場所に入れていく。
醤油みたいな味の液体、唐辛子漬けの泡盛みたいな味の液体、魚醤、ニンニクオイル…色々調味料を試した結果、子どもでも老人でも、皆で心温まる優しい味付けにしようと思った。
鍋から出る、アクを頑張って取り、味付けをし終わり、器に持っていく。
一人一人に、俺から渡す。
化物でも良い奴だって思ってもらいたい下心もあったが、まずは、生き残ったことを喜んでほしかった。それだけだ。
女騎士「これは…美味しいですね。
疲れに効きます。」
ビィー「おいおい、騎士様。
こんな、美味いもの簡単に作れるのかよ。
神官騎士様じゃねぇけど、疲れに効く優しい味付けだな
カイナ「鎧………上手いぞ。」
フィーナ「鎧さん、お料理上手なんですね!とても美味しいです!」
村人達「上手い…上手いぞ。死んでいった奴らに食わせてやりたかった…」
男「何で…何でアイツは死んじまったんだ!
死ぬなら美味い飯食ってから死ねよ!世にも珍しいのによ!あんなに、憎んでいた…。
魔物に助けてもらえて、更には飯まで作る魔物だぞ!一目でも見たかよ!見てないならあの世で後悔しろ!俺等を置いて逝った馬鹿野郎ども!」
一番最初に助けた男が叫ぶ。
更に、皆が皆、口を開く。束の間の喜びもあれば沢山の悲しみもある。
残酷かもしれない、けれども死んだ人間は多かった。
仲良かったもの、恋仲になるはずだったもの、家族だった人達も、慕った部下達も…。
どんどん、おかわりしてくる村人、俺の料理でお腹いっぱいになってくれるなら、それでいい…にしても、味がわかって良かった。
これで、こんな悲しい雰囲気の中、不味いものが出来てたら、それこそ、切ないぞ…
雪「いんやぁ〜。こいつはどうしたもんかや〜。
言葉で励ましたくても励ませれんから、料理したんやが、逆に居た堪れんくなるわぁ。ん?」
雪の下に、小さい一人の子どもが寄ってくる。
女の子「鎧さん?パパとママはどこ?」
子ども家族親が死に一人だけ、生き残ってしまったのか?
居るだろうと、思っていた。
この子はいくつなのだろうか?
見たところ、5歳くらい?まあ、親が恋しくなる年齢でもある。
これから、この子はどうなるのだろうか?わからない。
誰かが引き取るのか、一人で暮らしていくのか?こんな瓦礫まみれになった、村で…目の前の子どもは、目に涙を堪えている。
静かに、跪き、彼女ぐらいの目線に合わせる。
両手を広げ、優しく抱きしめてあげた。
サビ臭くないか、血生臭くないか、そんな事を気にしているほど、余裕は無かった。
女の子「う…うぇ…ひっく…うぁぁん!!!」
ビィー「騎士様…」
カイナ「…」
女騎士「魔物が……ありえません。」
フィーナ「鎧さん…」
その光景が信じられないとばかりの、皆の視線
このアルセルアラバの世界では、魔物と人間は完全に別々で暮らしている。
どっかのゲームや物語みたいに、仲間になったりテイムなど、そんなものが存在しない世界である。
故に、その光景が異様であった。
むしろ、助けに来たことでさへ、気まぐれかと思われていたレベルだ。
魔物の生態など、あまりハッキリとはわかっては居ない為か、俺みたいな魔物も中には居る。
そんな認識しかされない。
雪「すまん…もっと早う来てれば、良かったんや。」
女騎士「どこに行かれるのですか?鎧さん」
女の子の頭に手を置き、指でクルクル周囲を指す
女騎士「親を探して差し上げるのですね。私も手伝います。」
女騎士 (目を離したら、何するか、分かりません。この存在が脅威になれば、正直今現状太刀打ちは、まず出来ませんもの。
今はとにかく、この鎧の情報を知らなくては、本国に報告出来ません。)
女の子が泣き止み、周囲を探しに行く。
父と母を探しに、手を繋ぎ、瓦礫が多い場所は抱き上げ探す。
その女の子の家であった場所まで行くと…
女の子「パパ…ママ…?」
家があった場所…瓦礫の下に手が見えた。
瓦礫を退かし、確認する…女の子の父と母であった。
女騎士「……」
静かに、十字を切る。
それが全てを意味をする…
女の子「鎧さん…パパとママが……うぅ…」
また、涙を流す。
雪「全ては救えへん。堪忍な…」
後ろから、また抱きしめて、頭を撫でる。
まだ、小さい子には、かなり厳しいほど残酷な現実。
この世に神が居るのであれば、ここまで残酷な試練…現実をこの子に付きつけるのかと、本気で思った。
あれから、どれだけ時間が経ったのであろうか。
ビィーが女騎士を呼びに来る。
亡骸を広場に集め、燃やすとの事だ。
皆が協力しあい、一人一人大切に運ばれていく。
ビィー「騎士様よ、あの子の父親と母親、一緒に運んでやってくれないか?」
雪「ああ…わーっとる。」
ビィーには、理解できない魔物の言葉だが、言葉の通じる珍しい魔物であると同時に、人間に害はなさない。
むしろ、協力的な魔物だと理解した。
魔物は喋る際、唸ったり鳴き喚いたり下品な笑い声で話す。
ビィー (だが、この騎士様はどれでもない。
まるで、俺たちと同じように鳴く?いや、喋るだな。
優しい魔物だろうか?だが、この騎士様はどこかで、見たことある。)
雪「ほたら…いこか。
お嬢ちゃん…オトンとオカン連れてくに。」
ハサハ「ハサハ…私の名前だよ…」
涙を流しながら名を告げる。
まるで、そう呼んでほしいと思ったからか。
その瞬間だけは、言葉がわかったように繋がった。
雪「そうか…ええ名前やな。
ほな、ハサハ、まずは、オトンから連れてくに…」
頭を撫でながら、ハサハの父や母の元へ連れて行く。
そして、父と母を広場に連れていき、最期の別れの時がきた…
ハサハ「パパ…ママ…何で、置いてくの…?ハサハ、良い子にしてたよ…?パパとママの言うとおり、逃げたんだよ。
また、後で一緒に…一緒に遊んでくれるって言ったのに…な、んで…」
亡骸達に日が灯る。
肉が焼ける臭いだが…全く心地の良くない臭いだ…
色々な人が泣く…叫ぶ…それは、当たり前だ。
こんな悲劇が起きなければ、いつもと変わらない笑顔、怒り顔、泣く顔、困り顔、色々な表情で明日を迎えられた人達が、亡くなる…無くなるのだ。
その人達の、時間が…。
フィーナの父…カイナの両親、弟…ビィーの息子達…
皆が亡くなった。
ハサハだけでは無いのだ。
ゴブリンキングが起こした悲劇は、二度と忘れられない記憶になるだろう。
雪「ん…?」
燃えていく人達の周りに小さな玉のような物が、泣く人々の元へ行く。
他の人は気づいていないのだろうか?
ふと、声がした。
???「娘を頼みます。」
???「私達はもう、娘と居ることが叶わないので…鎧の魔物さん…お願いします。」
雪「なんや…と…ハサハを育てろ、言うんか。
わぁった…子を育てたことはないが出来る限り、ええ子にするわ…せやから、安らかに、あの世で見守っとり。」
こうして、俺はこの村に残ることを決めた。