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廃遊園地の探索2

 ルチアのそのセリフを聞いた瞬間、フーゴは弾かれたようにショーウィンドウの外を見た。



「……?俺には、さっきと変わらねえように見えるけど」



 先ほどと相違のない風景に、その声がわずかな安堵が視える。だけどその言葉を否定するかのように、突如耳障りな爆音が鳴り響く。三人は慌てて辺りを見回すが、人影はない。



「上だっ!」



 そう叫んで、ロゼットは上を見上げる。

 弾かれたようにルチアとフーゴも顔を上げれば、そこにはひと昔のスピーカーのようなものが吊るされていた。



【迷子のお知らせです。迷子のお知らせです。直ちに水色の髪の少年を我が主の元へご案内ください。我らが主がお待ちです。我らが主がお待ちです。我らが主がお待ちです我らが主がお待ちです我らが主がお待ちです我らが主がお待ちデデデ】



 ボロボロのスピーカーから異様なほど陽気な声が聞こえる。

 電気どころか、稼働するはずもない旧式のスピーカーなのだ。それが問題なく働いていることに、この状況でツッコむ者はいなかった。



「おい、あいつが言ってるのってまさか」

『間違いなくアンタレスのことだろうな』



 標的にされたロゼットよりも顔色を悪くしたフーゴの問いかけに、アーノルドが冷静に答える。



『それと悪い知らせがある。今の放送で、監視カメラにいくつかの怪異が写り込んだ。やつらが向かっているところは言うまでもないな?』

「そんな落ち着いて言う事じゃないだろ!?」



 どうしようと慌てているフーゴの肩に、ロゼットがぽんと手を置いた。



「そういうことだ。他の怪異が集まってくる前にここから離れるぞ」

「お前はお前で何でそんなに危機感ないわけ!?狙われてんのは!お前だぞ!」

「ああ、俺で良かった。俺は頑丈だからな」

「相手は殺意マックスの怪異だぞ人体にそこまでの期待を持つな!お前、人間!」



 一息で言い切ったフーゴはがっくりと肩を落とした。

 さすがにツッコミ属性のフーゴでも天然の相手は重いらしい。



『ふむ、スレッドに怪異の情報が落とされたようだ。解析を進めるためにもそちらに意識を割くが、何かあったら呼べ』

「分かりました。ここを抜けたらすぐに管制室に向かいますね」



 ルチアはそう答えると、フーゴたちに視線を送る。表情を締めた二人を確認してルチアはまず呪文を唱えた。



「光よ、我らを包む揺りかごとなれ……セイントウォール」



 聖属性の中級防御魔法だ。軽い浄化効果もあるため消費魔力は多いが、こういう異界では頼りになる。

 薄い光ヴェールが自分たちを包み込むのを確かめて、ルチアは先頭を切って入口を開けた。

 あまりものためらいのなさに、フーゴがぎょっとしたように目を見張る。



「まずは管制室への道を確保したいんだけど、フーゴ」

「な、なに?」

「マネキンまで残り十メートルくらいになったら、炎魔法を当てて。私は風魔法で拡散させるから、穴が開いたらすぐに突っ切るよ」

「やけどしないか?」

「大丈夫、このセイントウォールが防せいでくれるよ。それにたぶん、火を止めた瞬間に突破口が消えると思う」



 遠目でもあれだけの量だ。恐怖と言う感情がマネキンにあるとは思えないし、すぐに横から押し寄せてくると考えるべきだろう。

 具体的に想像できたのか、フーゴが覚悟を決めたように深くうなずいた。



「身体強化の魔法はまだ切れてないね?じゃあ、駆け抜けるよ!」





187ご機嫌な名無し

ついに情報が手に入る!



188ご機嫌な名無し

書き溜めてたってことは、それなりに量があるってコトだろ?

頼む関係あってくれ



189ご機嫌な情報屋

知っていることだけ書き込んでいきます。


アルカディアの都心付近、百年くらいかな……それくらい前に、街を代表する遊園地があったんです。

当時にしては目新しいアトラクションがたくさんあって、キャストさんの量もクオリティも桁違いだったそうです。

今みたいなSNSもない中、口コミだけですぐにニュースで取り上げられるレベルで人気がありました。



190ご機嫌な名無し

アルカディアはくそデカ国土を生かして娯楽に力を入れてるよな。

今は世界中からフェルナンデスの作品を集めて巨大美術館を建ててるんだろ?

印象派の伝説的芸術家なのに、どっから金引っ張ってきたんだか



191ご機嫌な名無し

ハイハイ脱線やめてね。

それにしても百年前の遊園地なんて、情報屋よく知ってたな

その口ぶりからしてもうとっくに潰れてるだろうし、下手したら祖母の代でも知らん可能性あるだろ



192ご機嫌な情報屋

私の趣味、旅行誌集め。

年代問わず集めてるんですけど(ほら、昔からの変化とか気になるじゃろ)百年前に発売されたアルカディアの有名旅行誌にのってたんですよ。

あの遊園地って内装が独特だから、幼馴染たちがあげた写真ですぐに分かった!

慌てて実家から旅行誌を召喚して確認したんだけど、見事正解!



193ご機嫌な名無し

知識人かと思ったら変態だった件について



194ご機嫌な名無し

どうして有能な人ほどぶっ飛んでいるのか。

無機物とはいえ召喚って上級魔法なのに。しかも実家からだろ?

お前の実家がどこか知らないけど、オスクリタが世界の中心にあんだから国境を超えるレベルの移動は確実じゃん。

きも



195ご機嫌な名無し

端的な罵倒草


それはそうと百年前の旅行誌も集める熱意やばいし、即時に引っ張り出せる記憶力もやばい。

趣味ってことはかなり持ってるはずなのに……きもいかも



196ご機嫌な情報屋

褒められてうれしいのでキリキリ情報落としてくぜ!

こっからちょっと長くなるから下開けてな


197ご機嫌な名無し

褒め……?



198ご機嫌な名無し

シッ!みちゃいけません!



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