日食
夢。
僕の夢。
それは、子供たちが描く無垢なそれではない。
僕の夢、いや願望はただひとつ。
真昼の夜に彼女をここから連れ去る事。
誰も居ない、どこか遠くへ。世界の果てへ。僕と彼女の二人きり。
そして、たった二人の狭くて美しい世界で笑って、泣いて、怒って、感じるんだ。
明け方に彼女の赤く染まる肌を眺め。
夕方まで穏やかに過ごし。
夜の帳が降りたなら、肌をさらして感じ合おう。
きっと、穏やかで緩やかな優しい毎日が送れるだろう。
とても、魅力的だ。
僕は誓える。彼女への永遠の愛を。
彼女はどうだろう。こんな僕に愛など誓ってくれるのか。それも、永遠など。
怒るだろうか。呆れるだろうか。それとも、笑って受け入れてくれるだろうか。
でも。
もし、彼女に拒絶されたら。
きっと、正常ではいられない。
僕には彼女だけなんだ。彼女が僕の全て。
もし、彼女が僕以外を選ぶのならば、残念だけど、無理矢理に連れ去ってしまうよ。
彼女の意志など関係なく。
きっと、甘くて穏やかな毎日は送れないだろう。
僕を拒絶し、僕を見る事もないだろう。そういう人だから。
それでも、彼女のいない世界に耐えられるとは思わない。
でも、僕は心が広いから、彼女限定でとてもとても優しいから。
選択肢をあげる。
僕に連れ去られて生きるか、この地で僕に殺されるか。
前者ならこの世で生きて、後者なら彼女を殺して僕も追いかけよう。
僕から離れるという選択肢はあり得ないけれど。とても譲歩している。
だから、答えを頂戴。
彼女は生きる事を選んだ。
遠くへ。知り合いなど一人もいない場所へ。
僕と彼女の二人きり。
僕は彼女に永遠の愛を誓う。
彼女は僕に永遠の愛を誓ってくれますか。