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押し売りノーサンキュー



ホーホーホー


ホゥ、ポッ、ポヘホッ


ホー、ホゥ、ホホホホホホ……



洗濯機がないので掃除夫?らしきジェントルメンの香りが漂う掃除道具一式のある部屋から洗い桶を抱えて引っ張り出し、毎度おなじみとなりつつあるでろでろ祈りをして石鹸水を湧き出させ子どもたちの服をワシワシ洗う。


洗濯板なんて教科書とか資料館とかでしか見たことなかったけど、結構ゴリゴリすごい音が出るもんだ。もしかしたら私の怪力故かもしれないけど。


でもそんなに力を込めて洗っても服の生地がしっかりめに作られているからかまだ破れたことはない。まだ、ね?何回も繰り返してたら消耗していつか破れると思う。



子どもたちは部屋に残してる。傍で喧嘩されたり邪魔をされたらたまらないからね。


ちょっと音痴な鼻歌もそりゃ聞かれないから思う存分歌えるってもんだ。



カサッ。



ん??何かちいちゃい音がした。今は表にいるわけで、私の視界に入るものと言えば広大な枯れ果てた植物のお庭と怪鳥、それに枯れてるのに妙に綺麗な枯れ葉色の牡丹みたいな大きくて見応えのあるお花。あと手元の洗い桶と洗濯物なわけだけど。


庭に何か入ってきたか?それとも怪鳥の立てた音だろうかと空を見上げたり留まっている怪鳥に目をやるも特にさっきまでとは変わりはなし……。


あ、いや。違うもの一つみっけた。


アルマジロみたいな生き物がいつの間にか庭のアーチの間に立っている。但し人間サイズ。しかもごめんください、みたいな感じに。二足歩行で。


体色と同じ黄土色のリュックを背負って私が見ているのに気付くとペコリとお辞儀をした。



『いやぁ、ご無沙汰しておりますぅ』


「ホー……」



ご無沙汰って。私とあんたは初対面なんだが?もしかして死ぬ前の私と知り合いな感じなの?


野太い声に困惑ぎみに返せばおや?と首を傾げられたがどういいわけをしたものか。



『前回からあまりに時が過ぎて私めのことは忘れてしまいましたでしょうか、それでしたらいやはやなんとも申し訳ない。近頃私たちの商いを邪魔する輩が増えまして……』



ウンタラカンタラ。そこからがまた長かった。聞いているとこのアルマジロもどきは商人なんだろうな。


人間、化け物、獣、妖精、神族。色んなところを渡り歩いていると。興味深いことはふんふんと思わず身を乗り出して聞いていたけれど、なかなかどうして。私が必要な情報だけくれるというわけにはいかないようだ。


腐ってもそこは商人なんだろう。ちょいちょい営業トークが挟まる。


何々の珍しい機械とか植物だとか、他にも宝石、薬、臓物やら骨まで。



『今回はコトラスの肉が入りまして、長くお付き合いのある貴方様の為に一番にと持ち込ませて頂きました。よろしければどうぞお買い上げ下さい〜』



ドロリとした瓶入りの青黒い蛇がとぐろを巻いたようにして詰められた物を渡される。嫌だ、こんなの持ちたくない。とホーホーアルマジロに文句をつけようにももう交渉の段階に入ってる。


よっぽど前の私はこれに目がなかったのか……。それともアルマジロの押し売りの手口か。


渋々言われるがままに貨幣をやりとりしようとしてはたと己が全くこちらの世界の単位を知らないことに行き当たり狼狽えるが何もしなくともアルマジロは笑顔ででは、と去っていった。


一体どういうことなんだ、と思うも若干頭が軽くなったような感覚がして手を髪にやると長さが短くなっていた。踝にまで届きそうなほど長く宛らおばけだった私の髪が、するすると指通りのいい髪が!


腰辺りまでバッサリ持ってかれてる!!



「ホアアアアアア〜!?」



おのれアルマジロ!次にあったら許さんからな!コロコロに丸めてサッカーしてやるんだから!


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