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付かず離れず観察しましょ



緑が濁った色に変わって、でもザバッと子どもを抱え直すために上げるとまた緑に戻っていってそれを数回繰り返すうちに緑色のお湯は濁らなくなり泡もたたなくなった。


本当、これ不思議。綺麗になったあとはぬるつかないの。異世界ってこんな便利なものあるんだなぁ。第一印象めちゃくちゃ最悪だけど。


石鹸つけたままあげて肌荒れさせる心配もなさそうなのでそのまま脱衣場の方に戻る。


ええとタオルタオルと探しているとにゅーっと棚からタオル?らしき薄黄色い布が出てきた。ふわふわもこもこではないな。サテンみたいな触り心地。水ちゃんと吸ってくれるか不安が過るもこれしかないしまた摩訶不思議なものなのかもしれないと割り切って、それで体をわしわし拭く。


よし。さっぱりしたろう。


そうして改めて抱えた子の顔を見る。肌はぷりぷり、そばかすがちょっと可愛い金髪で明るい茶色の目をした男の子。可愛い系の顔をしてたから女の子かと思ったけどちゃんとついてたし。お名前はなんて言うのかな〜?


ホーしか言えんから呼べないけど、教えてくれるかな?


子ども服はこの館にはなさそうなので体を拭いた布でくるんと巻き赤ちゃんみたいなスタイルで適当な空き部屋を開ける。キングサイズより大きなベッドは私を基準にして作られたのか、子どもを置くとまぁ小ささがより際立つ。


こんな小さな子を脅かして気絶させたと思うとむ、胸が痛い。


大きな体に見合う何カップ?!って驚くような大きさの乳を抑えてふとそういや乳あるんだなと思い至り、ならば哺乳類か?なんて思ったりしながら廊下に出ると汚れた自分の服もどうしようかと見下ろしはたとまた気付いた。


子どもにばっかり気がいってたけど、この服汚れもしなけりゃ濡れもしてない。不思議の連続過ぎてもはやドン引きである。


面倒が減ったからもうそれでいいや、とそのまま気にせず歩いては今度は台所、キッチン?を探す。


無駄に部屋が多いから少し手間取りながらも何となく自分のおうちの間取りを頭に入れて、子どもが食べられる何かがあればいいなと厨房に入っていく。


日本じゃありえないSFとかゲームの中にしかいないようななにかの開いたお肉が吊るされた、ちょっとひんやりした独特の獣臭がする貯蔵庫?らしき扉を開けてはビビって閉めて。ややあってからもう一度開いて今度は落ち着いてあれそれと手を伸ばして確認して。


果物っぽいものをいくつか近くにあった笊に入れて身を屈めてその部屋を出る。目についた白い清潔そうな布巾で一つ一つ丁寧に磨いてから、子どもを置いた部屋へ。


すりおろしたものとか食べやすくしたものをあげたいけどおろし金はなさそうなので、お皿と木の匙、そして自分の握力を信じる。潰して木の匙で食べやすい大きさにできれば御の字だ。


扉を開いて。でも置いた時と同じ。まだ目覚めていないらしい彼に落胆しつつ笊を置き、綺麗に拭った内の一つを手に軽く力を込めた。


呆気なく粉砕したそれは見た目は洋梨、香りはぶどう。そんな果物だった。砕けた断面は真っ赤。……子どもにとって毒になるとかないよね?


流石に助けるつもりが殺しましたなんてなった日には立ち直れる気がしない。


用心深く眺めて。匂いをかいで。食べてみたい、と思うと同時にさらさらさらと自分が持っていた分の果物が砂と化した。お皿に移した粉砕された分は無事。


そして伝わる恐らくは果物の味。口もないのに甘酸っぱいという感覚だけが脳に伝わるのだ。


食事の醍醐味と楽しみが……。ううん、やっぱりこの体不便だ。



切ない思いにホォンと悲しく鳴いているとようやく子どもが目を覚ました。そしてまた私を視界に捉えた瞬間ビクン!と思い切り体を跳ねさせ驚いてみるみる涙目になる。


叫んで逃げ出される前に、それなりに距離を保って腕を伸ばしてぎりぎり届くラインから果実を砕いて作ったご飯代わりのものを差し出し渡す。


受け取って貰えないのはわかっているからベッドの上に置く形だ。


これなら私が無害であるのがわかるだろう。


子どもはお皿と私とを交互に見て信じられないという顔でしばらく呆け、警戒心をいっぱしに見せてみたり、かと思えばお腹の鳴る音にやられてこらえきれないとばかりに木の皿と木の匙を取りがっついて食べ始めた。


ああ可愛いお顔がぐちゃぐちゃ……。まぁ、いっか。いっぱいおたべ。


ぼーっと観察しているとおかわりの要求か、それともごちそうさまなのかおずおずと皿を返され次の果物に手を伸ばす。見た目ジャンボイチゴ、匂いはパイナップル。ど、どんな味なんだこれ。うーんと思いだし渋りそうになるも子どもにあげて美味しそうに食べるのを見て面食らいつつ食事は終わった。


二人して何を話すでもない。お互いにお互いを観察して様子をうかがってる感じ。


でも子どもが疲れた顔をしているのに気付き、もういいから寝なさいの意を込めて優しく笛の音のようなポーという音で鳴き、布団の端をポンポンとすると意図は汲んでくれたのかもぞもぞと再び横になる。


素直でいい子だね、おやすみ。




ぽー



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