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1-11 Fランク冒険者のルアネ

「カリオトさんなら、会議中ですね」


 ギルドハウスで適当に職員を捕まえて、確認する。

 カリオトさんが副ギルド長に就任してから、上層部のスケジュールはギルド内で常に共有されるようにしたらしい。素晴らしいことだ。


「そうか……いつぐらいまで続く予定なんだ?」

「えーと。この会議自体はお昼ごろに終わるんですが、その後ギルド長への報告や、冒険者の審査等がありまして。また他にも会議がありますね」


 ……多忙だな。

 どうやら昨日俺に付き合ってくれたのは、奇跡のような時間だったようだ。


「大丈夫なのかそれ?」


 思わず心配の声をかけると、職員は肩をすくめる。


「大丈夫じゃないんですけど……ギルドでも色々とありまして、仕方がないといいますか」


 答えづらそうに話す職員を見て、ふと思い出す。

 ガイルが引き起こしたギルド職員連続殺害事件は、秘密裏の調査という話だったはずだ。

 なるほど、それで忙しいから会う時間がないし、なおかつ理由も言えないわけだ。

 ギルド職員の職業意識の高さが伺えた。

 それならこれ以上追及するのもかわいそうか。


「あーそうか。わかった。何時ごろに終わりそうだ」

「夜にはどうにか終わるかと……」


 まだ朝だ。

 それなら夜までにクエストをこなしておいたほうがよさそうだ。

 カリオトさんの巨にゅ……ごほん、笑顔を見るのは後でにしよう。

 礼を言いつつ職員のもとを去ると、待っているルアネのもとに行く。


「待たせたな」

「ん、ああ。構わないさ。彼女には会えたのかい?」

「夜までは予定が埋まってるみたいだ。先に金を稼ぎに行こう」

「そうかい……」


 きょろきょろ周りを見つつ、ルアネが返事をする。

 探しものだろうか。心なしか返事もうわべだけだ。


「どうした?」

「あれは飲めないのかい?」

「あれ?」

「昨日飲んだ奴さ」

「あぁレモネードのことか」


 レモネードを探していたのか。

 本当に気に入ったんだな。あれ。

 普段であれば大した金額でもないのから、飲ませてやれるんだが。


「さっき言っただろ、金がほとんどないって」


 一応少しばかりはあるのだが、冒険者登録をするために必要なのだ。


「じゃあ、しょうがないね……」


 明らかにしょんぼりとするな。

 俺まで悲しい気持ちになるだろ。


「分かった。わかった。今日稼げたら、奢ってやるから」

「本当!? 約束ね!」


 途端に、パァと笑顔を浮かべるルアネ。

 あまりの変わりように若干たじろぐ。


「あ、あぁ」

「じゃあ早速クエストだっけ? 受けましょう!」

「落ち着け。その前にお前の登録が先だ」

「ごほん、そうだったね」


 子供か。

 いても立ってもいられないといった様子のルアネを引き連れ、登録希望者の列に並ぶ。

 今日もそれなりに長蛇の列だ。


「結構冒険者になりたい人はいるんだね。全く鍛えてなさそうな人たちもいるが」

「非戦闘職とか登録だけするってやつらだな」

「登録だけのものもいるのかい」

「身分の証明になるからな。色々と便利なのさ」

「ふぅん」


 とか言っているうちに、俺たちの番だ。


「そ、その登録に来たのだが」

「ということだ。頼む」

「冒険者へのご登録ですね。かしこまりました」


 ギルド職員はにこりと笑うと、そのまま手続きを始める。

 諸々(もろもろ)の説明をしてくれた後、用紙を渡してくれた。

 依頼中に死んでも、自己責任だという誓約書だ。

 ここに記名すれば、登録は完了する。


「こちらにお名前をご記名ください」


 職員がペンを手渡してくる。


「ルアネ。字は書けるか?」


 一応確認する。字が書けないことはそう珍しいことでもない。

 元々住んでいた家の様子とか聞く限り、書けると思うけどな。


「ば、馬鹿にしないでくれたまえ! 書けるとも!」


 フンと意気込みながら、ペンを受け取るとサラサラと名前を書く。

 想像以上に達筆だ。誰かに習わないとこういう綺麗な字は書けない。

 書き終わるのを見計らって、ギルド職員が用紙を回収する。内容を確認しているのだろうが、途中で眉をひそめる。


「ルアネ……シュバルツ? 失礼ですが、こちら家名ということでしょうか。聞いたことのないお家柄ですが」


 シュバルツという名に困惑しているようだ。

 それもそうか。死神の家名が広まってるわけないもんな。


「あー、すまん。訳ありだから、そこは消しといてくれ」

「なっ!?」


 色々と面倒ごとになりそうだし、消しておいてもらったほうがいいだろう。

 ルアネは絶句し、何だったら不満たらたらといった感じだが、さてどうしたものか……。


「そのよろしいので? ご本人は嫌がっていらっしゃいますが」


 職員もルアネの様子に気がついたようだ。おずおずと聞いてくる。

 本当に貴族で、あとでいちゃもんつけられると困ると思っているのだろう。


「構わないから家名は消しておいてくれ……後でレモネード二杯奢ってやるからよ」

「なに!? なら構わないとも!」


 うわぁ単純。


 ◇


「ではこちらがギルドカードとなります。紛失しないようお気を付けください」

「ふむ……ありがとう」


 出来たばかりのギルドカードを受け取る。

 というわけで無事登録完了だ。

 物珍しそうに、カードを見るルアネ。


「ん? なぁキエル。ここに記載されているFランクとはなんだい?」

「それがギルドからルアネに対する評価だな。まぁ最低ランクだ」


 ルアネが目を見張る。


「なんだと! 私の力はそんなに軟弱じゃないぞ! 抗議してくる!」

「まぁ待て」


 受付に戻ろうとするルアネの首根っこを捕まえる。

 なんとなく、こうなることはわかってた。


「最初はどんなに凄くてもFランクから始まるんだ。だから我慢しろ」

「ぐぬぬ……納得がいかない」


 苦虫をかみつぶしたような顔をするな。

 あまりの表情に、周りの冒険者がびっくりしてるだろ。やめろ。


「だいたいキエルはいいのか。ランクごとに受けられるクエストが異なるんだろ? 最低ランクのクエストの報酬なんてたかがしれているじゃあないか」


 おや? その話はしていないはずだったが、理解が速いじゃないか。

 さっきの達筆さといい、教育はしっかりとされているようだ。


(それにしてはこの世界の常識とかが抜けているような気がするけどな)


 そう思いつつ、答える。


「それなら心配いらない。俺のランクがAだからな。俺と組んでさえいればAランクまでのクエストなら受けられる」

「なんだ。それならいい」

「やけにあっさりだな」


 さっきまであんなに怒ってたのに。


「高ランクのクエストが受けられないなら問題だけどね。彼らが私に下す評価を気にするなんてくだらないことさ」


 ここに来るまでに話していた戦士としての誇り云々という話か。

 まぁルアネがそう思っているなら、俺はとやかく言わない。

 どう思おうが、それは人それぞれだ。

 彼女は死神ではあるが、細かいところは気にしない。


「さて、それでは早速クエストとやらを受けようじゃあないか。何を受けるんだい?」


 目に見えてわくわくし始めるなぁ。

 この様子だけだと、新米冒険者そのものだ。

 周囲の奴らもそう思っているんだろう。微笑ましい表情で、見守っている。

 本人は全く気がついていないようだが。


「そうだな。とりあえず、何があるか確認しないとな」


 クエストが張り出されている掲示板まで来た。

 今日もたくさんのクエストが張り出されている。

 もう少し見やすくできないのだろうか、今度カリオトさんと相談してみるか。

 そんなことを考えている俺を横目に、ルアネは掲示板にかじりついていた。

 眼を輝かせながら、あれこれ吟味していく。


「おお! このはぐれドラゴンの討伐というのはどうだい。それとも空に突如現れた輝く未確認物体の確認というのも捨てがたいね」


 当たり前のようにAランクとかBランクのクエストを選ぶな。


「そうだな。俺たちが受けるのは……これだ」

「どれどれ……中級ダンジョンのスケルトン討伐?」

「そうだ」


 あからさまに嫌そうな顔を浮かべるなよ。

 何事にも順序ってのがあるもんさ。


「面白いじゃあないか!」「続きが楽しみー!」


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