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スイハンは早朝から活気に溢れていた
通りを行く車のエンジン音や客寄せの声と陽炎を見紛うような人々の熱気が伝わってくる
ただその熱気もコンテナの森に集まるクズ達には関係ない
陽の光は届かず辛気臭い屋内にやる気なさそうに肘をつけた受付員
ボロボロのソファに暇を持て余した陰気な男たち
古いエアコンがガーガーと音を立てる部屋に小ドラゴンを伴って入り受付の横にある備え付けのファインダーを開きめぼしい依頼がないか探す
「よぉ〜ケイ、そのトカゲはどうしたよ?前回でずいぶん稼いだようじゃねぇか、なぁ?」
チンピラじみた同業者が暇に飽きてオラつき肩に腕を回しニヤつく
口からは酒の匂いがプンプンし、真昼間から呑んだくれているのがすぐにわかった
「いつまでも腐ってるから見逃すんだ、絡むなめんどくさい」
ファインダーのページをめくりながらあしらうが、暇人は気が紛れるまで絡むのをやめないだろう
「お前最近どうしてんだ、いつもここにいんのか?酒も大概にしろよ」
「なんだよぉ〜心配してくれんのか?ハァ〜」
顔を合わせてため息をついてくる
反射的にチンピラと化した飲んだくれての顔を押しのける
「くさっ、酒くさっ、どんだけ飲んでんだよお前まだ12時回ってないぞ」
「それよりなんだよそいつは、でかいトカゲだなドラゴンの子供か?人に懐くなんてなぁ珍しい」
近況報告がてらに会話していると立て付けの悪い扉が音を立てて開いた
普通は気にも留めないことだが入ってきたやつの服装が問題だ
傷ひとつない黒い革靴グレーのスラックス、クリーム色のトレンチコートに目深に被った中折れ帽子
確実にこんな場末のゴミ溜めに来るような服装ではない
異質すぎる彼は部屋内を軽く見渡し、顔を並べて凝視している俺たちと一瞬だけ目が合う
よどみない歩みと伸びた背筋はつくづく部屋と合わない
「よぉおっさん、ここは貴族様が来る場所じゃねぇぞ、大人しく領地に帰るこっーー
ーー諸君ら生産者たちには用はない、私とてここにきたのは本意ではない」
貴族様が食い気味に言葉をかぶせる
発音一つとってもよどみがない、本当の貴族階級の人間だ。「なぜここに支配層が」疑問だけが膨らんでいく
受付に手を置き二三回言葉を交わし、目に見えるほど落胆してため息をつくと足早にさっていった
ギィ、と扉が閉まる音だけが部屋内に響く
「な、なんだってんだ急に…」
「さあなぁ…」
顔を合わせて首をかしげる
「…飲みにいくか…?」
「そう、だな…」
そういうことになった
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自由治安維持依頼斡旋所
なろうでお馴染みの冒険者ギルドの位置づけ
ドロップアウトした人間や低所得者などの受け皿と民間での自己防衛戦略、政治家の利権などの要因で設立され多くの場所で人知れず活躍している
大半はすぐに死ぬので身分証いらず!教養のない奴らしかいないので気のいい奴らがいっぱいで楽しい職場です!