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いくら開拓地の辺境だからといって人が少ないわけではなく、ここ[スイハン]のように様々な物質が流れてては出て行く活気ある街もある
コンクリで固められた主要道路の脇を固めるテナント郡、露天や出店が立ち並び日は落ちた今も多くの人が行き来し、各所で賑わいを見せている
ただ道を一つでも曲がればゆなわややわかやかやよやのわくそこは開拓初期の雰囲気を残すコンテナ住居群が積み重なり、その陰で薄暗く整地されていない道がぞんざいに続いている
その積み木の一つに積み上げた箱を宿と言い張る場所こそが今の住処
重ねて鉄板でリベット打ちしただけの箱は隙間風が入り込み夜は冷えるし夏は蒸し焼きになる酷い物件なのだが安さだけは他に負けないのが強みで、
・根無草
・訳あり
・財布が薄い
こんな奴らにはとてもありがたい
カツカツと梯子を登り扉の鎖を繋ぐ南京錠の鍵を差し込む
箱は片開きタイプ、梯子につかまりながら手を伸ばして扉を開ける不便さは慣れれば大したことはない
パチンと電気をつけ荷物をカゴに放り込む
肩の開放感に一息ついていると脇を小ドラゴンがすり抜けベットへ一直線に飛び出した
足踏みで何度か柔らかさを確かめた後顔を擦り付けて表面を整え始めた
あ、あれは…!
見覚えがあるぞ…!
そう、その姿はベテラン鑑識のそれであった
目を細め身を低くしてホコリ一つに気を張る
理屈で考え経験と勘に身を委ね全身の神経を研ぎ澄ます…
はっ、辺りを見渡し始めた
ま、まさか…
視線の先には冷蔵庫があり小ドラゴンはスウッと目を細めた
ゆっくりとベットから降りて慎重な足運びで冷蔵庫に近づいて行く
てしっ、てしっ、ピタ
そっとこちらを見て、冷蔵庫を見る
こっちを見て、冷蔵庫を見る
こっち、冷蔵庫
ここにあんのわかってんねんぞ?ネタは上がってるんよ?
こ、こいつ冷蔵庫の中のジャーキーを嗅ぎ分けた!
なんて図々しいんだ…
小ドラゴンの猛攻は凄まじいが、サレンダーはしなかった
小ドラゴンを抱えてベッドに潜り込む
冷ややかな目線はやまないが毛布をかぶれば途端に丸くなり大人しくなった
しかもお前帰りにジャーキー買ったもんな
もふもふ
もふもふ
…スヤァ
topic
[スイハン]
今まで中央部の森を迂回するように行き来していた
ルートがスイハンを経由することで直通になり、補給地点として多くの船が足を止めて行く
また、多くの国が設営に携わっており国際的な立場にある為入場にパスポートが必要なく、密航者が後を立たない