第二部 序 魔法使いの誘惑
最初は別の小説として投稿していましたが、わかりにくいので、継続して投稿することにしました。
少女はこの人と離れることなんて想像も出来なかった。今までの人生は、この人と会うためのものだったと少女は信じた。いつまでもこの人と一緒にいたいと願った。
だけど、その人がこの世界からいなくなるときがやってくる。それを知った少女は一つのお願いをした。その人が持っていた剣を、まず自分の肩に当てて、そしてもらいたいと少女は願い出た。それは少女が絶望しないためのただ一つの代償行為だ。
その人は、躊躇していたが、少女が真剣で、そして必死であることに気付いたようだ。
「分かった。この剣は君に上げるよ」
その人は、願いどおり刃を軽く少女の肩に当てた後、その剣を与えた。
そしてこの少女は、その人に聞こえないよう、少女は小さく呟いた。
「あたしは、永遠にあなたに仕え、そして命のある限りお守りすることを誓います」
そして、その人が自分の前から消えた後、微笑みながらその少女は自らの命を絶とうと思った。
そうしなければ、その誓いが守れなかったから。
――だけど、あなたのいない世界なんて滅びてしまえばいいのに……。
それは命を賭した祈り。
その祈りは、叶うはずがなかった。
『あなたの願いを聞き届けてあげる。あなたが命を賭けるなら』
そして、その少女は命を絶った。
その呪いにも似た願いは、史上最高の魔法使いによって実現されることになった。
亜人間がクオリアを持つのは必然だった。
世界全体の延命を賭けた願い。
その少女はそれを決定した。
その象徴は、彼女が持つ宝物だった。