6話:おじさんと預言
「――A long time ago in a galaxy far, far away....」
「……すみません、分かる言葉でお願いしたいナ」
「……遠い昔、遥か彼方の銀河系の神々からの古い言い伝えに、こうあります」
「なになに?」
「その者、薄衣をまといて金色の舞台に降り立つべし。失われし神殿との契約を結び、ついに人々を猛き熱狂の世界に導かん……、と」
「――似たようなフレーズ、知ってるな~……それはともかく、それが余となんの関係あるのYo?」
「はい、神様からのご神託がありました。近々、半裸でおっぱいの大きな、ぐるぐるした山羊のような角を生やした悪魔じみた恰好の女の人が空から降ってきたら、それが大天使だ、と」
「いや、今、悪魔じみた、って云っちゃったよね?」
「神様はこうもおっしゃいました。その大天使はやがて、7、8人くらいの天使たちを引き連れ、世界を救う、と」
「7、8人くらい、って随分、神様、アバウト過ぎひん?」
「神様は続けておっしゃいました。大天使とその仲間の皆さんが世界を救うと、みんなハッピーになれる、と」
「なんか、その神様、全体的に説明、雑ぅ!」
あれ?この雑な伝え方、覚えがあるぞ?
――あっ!
多分、アイツだ。あのポンコツ女神。
なるひょど――
あいつ、預言とか神託とか、そんな感じの方法であらかじめ余の到来をこっちの世界に伝えていたのか。
ぽんこつのくせに、なかなかヤルやないか、あの女神。
そうと分かれば、ここは乗っておくか。この世界にスムーズに溶け込むことが出来そうだしね。
「よく分かったな、娘。余こそ、大魔王にして大天使のパラコッチディオイドゥミコシスプロクティティスサルコミュコシス・カーカスコッツオキシダイズドスプラッタードディスゴージガイだ。
長いので、パカちゃん様と呼ぶことを許す」
「ああッ!はいっ、大魔王大天使パカちゃんさま!」
「ふむ。じゃあ、汝は余の信者となるがいい」
「はい!身も心もお捧げいたします!」
「うんうん、で、汝、名はなんと申すの?」
「わたしの名は、ニャルロッテホテプです」
「あら、ちょっとおっかないメッセンジャーみたいな名前なのね?ま、いいや。
それじゃ~、ニャルロッテ!取り敢えず……どこ行くの?」
「はい、この聖板を大司教様にお渡しするため、聖都ソドムに向かう途中でした。きっと、大司教様もパカちゃんさまに会いたいはずです!」
「そうなんだ?じゃあ、そこ、行こうかナ」
田舎というか、こんななにもない大自然の中、一人でいたら退屈で退屈で仕方ない。
お腹も若干減ってきたし、シャワーも浴びたい。というか、ベッドでごろごろしたい。
聖都とか呼ばれるくらいの街なら、少しは楽しめそうだし、この娘に着いて行くのが得策だよね?
「んで、その聖都って、どれくらいで着くの?」
「はい、聖板によりますと半月から一ヶ月くらいで着けるはずです」
「えっ!?半月?一ヶ月?そんなかかるのォー!!!」
「はい、たぶん、です。わたしも聖都には行ったことがないので詳しい行程は分かりませんがおそらく、それくらいで到着できるはずです。ただ、司祭様から譲っていただいた駿馬でそれくらいなので、徒歩だともう少しかかると思います」
「えーっ!!ちょっと遠いわ~!」
思ったより、遙かに遠いじゃん!
こんななにもない大自然の中、そんなに歩けるはずがない。
都会っ子、なめんなよ!
――あっ!
そっか、余、飛べるんだった。
飛んでいけば、もっと早く着けるはず。
うん、それがいい。
「ニャルロッテ!空を飛んで行こう」
「えッ!!?空を、ですか!!」
「余がおぶってやるから問題ないゾ」
「ですが……大魔王大天使パカちゃんさまにそのような不敬なことはできません」
「だいじょーぶ!余がいい、って云ってんだから、いいの!歩くのめんどーだし」
「ですけど……」
「いいから、いいから♪その代わり、その板よく見てナビゲートしてネ。場所分からんから」
「……はい」
というわけで、彼女をおんぶ。
あ!
女の子をおぶるって初めてだ。
軽い!
女の子はみんな軽いのかな?それとも、今は“うきうきデカパイ大魔王モード”だから力パワー的にそう感じるだけなのかな?
いや~、それにしても――
いいもんですねっ、女の子をおんぶするのは♪
さて、それじゃ翼を広げて、飛び立つとしますか。
「それじゃあ、ニャルロッテ。しっかり、掴まっておくんだYo!」
「はいっ!」
よっしゃ!
それじゃ~、レッツ・ゴー!
アイ・キャン・フラーーイ!!!