3話:おじさんと爆乳
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どこだ、ココは?
全く見覚えのない土地。
もの凄い田舎、いや、大自然と云った方が正しいのか?
ふと、空を見上げる。
なんてこった――
月が2つ、ある。しかも、かなりデカイ。
こりゃ、まいった。
マジで別の星、っつーか、異世界にきちまったらしい。
いかん!
このままでは俺のザコメンタル如きでは、すぐにパニックになっちまう!
冷静になれ!
素数、だ!素数を数えろ!
2、3、5、7、11、13、17、19、23……29……31…………37………………41……………………分からん!
キーッ!イライラするぅ~~~!
呼吸、だ!呼吸を整えろ!
ひーひーふ~、ひーひーふ~、ひーひーふ~……俺は妊婦かッ!
くっそぉ~!
最近、動画投稿と生配信でちょろちょろ小銭稼げてたもんだから、外に出ると滅法弱い。
特に太陽!きさまだ、きさまっ!太陽の光が苦手ッ!
吸血鬼より陽光が苦手、それが俺のアイデンティティー!つまり、吸血鬼より吸血鬼らしい存在。
まさにっ、真祖!いや、貧相!脆弱過ぎるだろ、俺ッ!!
部屋ッ!俺の部屋!俺は、俺の部屋の中でこそ、光り輝く!
決して引き籠もりってわけじゃねーんだが、家でこそ、実家の中でこそ、俺は偉大なる暴君になれる。
暴君特権さえ発動すれば、なんでも揃う。カップラーメンからポテチ、コーラから三食昼寝まで、そりゃなんだって揃うんだ。
嗚呼、早く招き蕩う子供部屋に帰りたい。
いくら嘆いてみたところで、どうにかなるような状態じゃない。
実のところ、すでにこっちにきて、すぐに彼女に電話した。
彼女というのは、無論、あの女神。
名前も分からん、顔がいいだけのえちえち女神。
あいつ宛の電話番号『0120-548-315』に何度架けても通じない。
「――お客様のご都合により通話が出来なくなっております」……おいっ!フリーダイヤルなのに金払ってねーのかよ、あのポンコツ女神!
どーなってんだよ!
――と、いくら焦ってみても仕方がない。
俺も伊達に40年前後、生きてきたわけじゃない。
お・と・な!そう、俺はOTONA!
まだ、あわてるような時間じゃない。
とにかく、あいつからもらったVR変身ベルト。こいつを使い、装備を固めよう。
俺のような中肉中背のうっすら小デブじゃ、もし、ここがファンタジー色濃厚な世界だった場合、下手すりゃオーク扱いされかねん!
女騎士相手ならいざ知らず、冒険者的な連中があらわれでもしたら、狩られちまうよ!
さぁ、変身、だ!
――アレ?
コレ、どーやって変身するんだ?
やっべ、俺、使い方、分かんねーw
そうだ、攻略本。
まずはこの神通の攻略本で使い方を探す。
あった。
なになに?
ほほう!
このスマホに暗証番号を設定し、その数字を入力してベルトのバックルにセットすればいいのか。
ん?暗証番号、三桁なのかよ?随分、ザルだな。セキュリティ、大丈夫なの、コレ?
ま、いっか。
よし!数字は~……――『829』に決めた。
これなら俺以外、分かるまい。
おっ!?SMS、着た。
二段階認証かよ!暗証番号三桁っつーザルのくせに、そーゆーところはしっかりしてんのな?Ⅶpayも見習えよ!
よっしゃ!
なら、試してみるぞ。
爆乳大魔王美少女VTuber“パラコッチディオイドゥミコシスプロクティティスサルコミュコシス・カーカスコッツオキシダイズドスプラッタードディスゴージガイ”に大変身だッ!
数字をタッチ、8・2・9。
バ・ビ・ニ・ク――スタンディング・バイ――「大変身!」――パ・カ・コンプリート!
ウワ~ン、キュキューン、テッテッテテーテテテテーテテテーテテテーテッテテテー、フワーン、ブゥーン……レディース・エンド・ジェントルメン・ボーイズ・アンド・ガールズ・ビューティフル・ゴッデス・プラウドリー・プレゼンツ・アワー・スペクタキュラー・フェスティバル・ページェント・オブ・ナイト・タイム・マジック・アンド・イマジネーション・イン・サウザンズ・オブ・スパークリング・ライツ・アンド・ジ・エレクトロ・サイコ・ヘビーメタリック・ミュージカル・サウンズ!
バスター・バスティ・サタニック・アークロード・ティラニカル・ホロコースト♡
めくるめく光と音のハーモニー!
冷たい白煙を巻き上げ、ぐるぐると回転。燦めく星々が収束し、爆発するかのように光り輝く。
鐘を鳴らす音が響き、スラッと伸びた足が大地を踏み付ける。引き締まったウエスト、すらりと長い四肢、四次元的な曲線美を描く角、見る者全ての視線を釘付けする見事なプロポーション。
ばいんばいん、たぱんたぱん、と破裂音を立てて、聳え立つチョモランマを彷彿とさせる爆乳が顕わに。まるで、ちっちゃい重機でも載せているかのような巨乳、荒ぶり猛り狂う。
口角を上げて満面のスマイル、ウインクしてキメ顔、ドヤッ!!!
「完成♡爆乳大魔王美少女パカちゃん様、ここに推参しちゃったYo!」
ふおおおおーーーッ!
みなぎるゥー、みなぎってきたぞぃ!
しゅごぉぉぉーいパゥアー、力パワーが溢れんばかり。
すでに、伝説のスーパー大魔王の域に達してるゾ!
あのクッソ生意気な小娘女神、ポンコツのくせに大魔王にするってのは本当だったのォ!?
おいおいおいっ!
今のこの力をもってすれば、国の1つや2つ、そっこー、ブッ潰せちゃうょ!
あっ!
今、気付いた。
声も理想とする萌え声がナチュラルに出せてる。
エフェクターもボイチェンも必要ない。
しゅごごごごごーーい!
魔力と共に声優力も上がってるっぽい?っぽい?
よォーし!
早速、世界征服しに行こぉー♪
ん?ちょっと待って!
その前に、確かこの世界には以前、何人かの魔王が送り込まれているって話。
だったら話はか・ん・た・ん♡
他の魔王たちをみーんな、余の配下にしちゃうんだからねっ!
いっくよォ~!
「どぉぉぉぅりゃあッ!」
大地を蹴り上げ、天高く舞い上がり、爆乳大魔王、今、飛び立つ!




