ゼノギアス 〜巨大ロボットの求道者〜
ここまでベタ褒めに褒めて信者かと勘繰られてしまいそうですが、否定はしません。筆者はアンチスクエアでありながら、ある意味、本作の信者なのでしょう。それほど本作に感動したし、惚れ込みもしたのです。が、だからといって、なにもかも盲信したいわけでもありません。ちょっといくつかツッコミどころもあるにはあるのです。
たとえばメンバーの一人、リコが囚人になってまでキスレブ総統の命を長年狙ってたのに、暗殺に失敗すると割とアッサリ路線変更したり。命を狙った理由もよく分からないままだし。で、このキスレブ総統もその後どうなったのかよく分かんないし。
それからやはりメンバーの一人、ビリーが幼い頃から父親と別れて、その間ストーン司教という人物に妹共々育てられてるんだけど、このストーンという男が敵組織の暗殺部隊を率いる極悪人。それにしては二人共、割とまっすぐ育ってたり。
他にも挙げていけば色々あるのですが、ここはそういうエッセイでもないので割愛します。そういうストーリの甘さもあるっちゃぁ、あるんです。
でもまあ、これも作劇上の都合か、容量の関係という大人の事情の範囲内です。作品の質を落とすほどでもありません。そもそもこれらのエピソードは作品の主軸にそう関わってくるものでもありませんし。その分、重要なエピソード、イベントには重点を置き、丁寧に描かれています。このあたり、製作陣にブレはありません。
そういう部分も見事なのです。脇道に逸れるとテーマがぶれてしまうし、世界観も損ないます。本作は上から下までガチガチにシリアスってわけでもなく、随所に軽めのギャグなんかも入れてはいるのですが、それも作品世界のイメージを壊さない程度に抑えられています。このあたりのさじ加減も実に絶妙です。
そういえば本作はファンタジーな世界観でリアルロボット路線なんだけど、エレメンツという敵部隊の乗るロボ、本作ではギアと呼ばれますが、これが合体して巨大ロボになるんだけど、これがまんま勇者シリーズのスーパーロボット系。しかも合体バンクまで用意するという念の入りっぷり。これはブレじゃなくて、製作陣がどうしてもやりたかったことなのでしょう。ゲームとはいえ、巨大ロボットの作品を作るんだから、やっぱりスーパーロボットっぽいことはやっておきたいじゃないか! という製作陣の魂の叫びのようなものがあのシーンから聞こえてくるようです。
後にゲーム誌に本作の(かどうかは分からないのですが)開発室の写真が掲載されてまして、デスクに馬鹿でかいガオガイガーの玩具が置いてました。あれ見た時は「ああ、やっぱりね」と、妙に納得したものです。本作は製作陣がやりたいこと、自分たちが作りたいものをこだわって作り上げたということが伝わってくる作品でもあるのです。これも筆者が抱いてるスクエアというメーカーのイメージからは大きく外れた、異質の作品なのです。