凸凹コンビ誕生
俺は助けてくれた少年に正座をさせられていた。
「ねえ、なんでそんなほぼ丸腰の状態で森に入ろうとか思ったの?」
「すいません」
「すいませんじゃなくて、なんでって聞いてんの」
「なんとかなるかなって」
「なんとかなるはずないだろ。もしかして、俺は大丈夫とか思っちゃってるイタい人?」
イタい人ではないと思いたいけど否定できない自分が悲しい。
「え、あ、いや、まあ、そうですかね」
「はあ、君が馬鹿なのはわかったよ」
確かになぁ。なんで俺は大丈夫とか思ったんだろう。よく考えれば俺はただの村人だというのに。
「その通りですね。・・・こんな弱い奴が魔王を倒すなんてできるはずなかったんだよな」
「魔王?」
そこに反応するとは思ってなかったから驚いた。
「ああ。そうだけど」
「ふーん」
自分から聞いておいて、ふーんって。
何かと思って見ていたら、そいつは急に立ち上がり、俺を見下ろして言った。
「これからどーすんの?僕は街に行くけど」
なんだかあんな書き置きしといて今更村に戻るってのも嫌だけど、仕方ない。
「村に戻るよ」
「・・・そう」
なぜか微妙な反応をしているそいつに首を傾げていると、そいつは外套のポケットから何かを俺に押し付けて睨んできた。
「な、なんだよ・・・って、え?赤いお守り袋?」
なんだこれ。意味がわからん。
「魔物除け。持ってろ」
「くれるのか?」
「そう言ってる」
いい奴だ。こいついい奴だ。
「じゃあ」
そう言って俺に背を向けてさっさと歩き出す。
「え」
俺の村の方に。
「そっち、俺の村だけど」
「え・・・。わかってる!ちょっと間違えただけだし!」
くるりと方向転換してまた歩き出した。
「えぇ」
近くにある農園の方に。
「そっち、農園だけど」
「・・・知ってるし」
「それ絶対に嘘だろ!」
こいつ街がどこにあるかわかってないんだ。さっき俺にどーすんのとか聞いたのも街に一緒に行きたっかたからなんだ。
「街は東だよ。太陽が上ってる方に行くんだ」
「太陽?」
「お前知らねーの?太陽が上ってくる方が東で、下がってく方が西なんだよ」
ここらへんじゃ、6歳のガキだって知ってることなのに。よその奴なのか?
「君、頭良いんだね。イタい人なのに」
「それ忘れてくんないかな・・・」
「なぁ、君さっきさ、魔王を倒すとか言ってたよね。僕もさ、魔王に会いに行くところなんだよね」
「へ?」
「一緒に来ない?魔王に会うための冒険に」
俺を助けてくれた時に見たとおり、こいつは強い。こいつなら魔王を倒せるかもしれない。こいつは俺に自分にとって必要だと思える価値を見いだしたから今こうしてさっそているのだろう。
「俺を利用したいのか?」
「そうだよ」
俺の言葉に少し驚いた後、笑ってそう答えるそいつを見て決めた。
「俺もお前を利用する」
「・・・つまり?」
「一緒に行く」
諦めかけたけど、希望が見えた。
「俺はリュートだ。お前は?」
「・・・僕はルー。よろしく、リュート」
「あぁ!」
差し出された手をとって立ち上がる。
こうして凸凹コンビが誕生した。
ありがとうございました。