出会い
「グルルルルルルルルルルルル」
「う、うあぁ・・・あ、あはは、ははははははは・・・」
乾いた笑い声が喉からでてくる。これ、もう人生詰んでんだろ。黒い獣がゆっくりと近づいてくる。
「ひぃっ」
俺がもう逃げる気力も残ってないのがわかったのか、その口をニタリと歪めた。俺に食らいつこうとする闇が目の前に広がっていく。
ぁ、終わった。死ぬんだ、俺。己を飲み込まんとする闇への恐怖から逃れるようにきつく目を閉じる。しかし、いつまで経ってもその瞬間はこなかった。
不信に思ってそっと目を開けると獣は何かを警戒している様子で俺の背後を見ていた。振り返ってみようかと思ったときだった。
「“ウォーターボール”」
「グギャア!」
不思議と通る声がして、獣が吹き飛んだ。
「“ガイアランス”」
「ガッ・・・」
土が槍のようになって獣の胸あたりを突き刺した。獣の体から力が抜けていく。死んだのだ。つい先ほどまでは俺が死ぬはずだった。でも、最後に死んだのは獣の方だった。
この運命を変えてくれたのであろう声の主の方を見る。あんな恐ろしい獣をあっという間にやっつけた奴だ。とても強いのだろう。そして、見ず知らずの他人を助けてくれるような奴だ。相当な人格者に違いない。もしかしたら、俺を救ってくれるかもしれない。そんな期待をこめてそいつを見つめた。
「・・・えっ」
つい驚きの声を漏らしてしまう。
「・・・なんだよ。」
黒を基調とした外套を身にまとっているためはっきりとはわからないがとても強いとは思えない細い体。背も低い。顔は嫌な事に巻き込まれたとでもいうようにしかめられている。
俺の希望的予想を裏切ってそこにたっていたのは、薄汚れた少年だった。
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