クエスト日和っ!
気づくと路地裏らしきところにいた。これから暫くの間行うことはただ一つ。
「レベリングかー・・・」
俺はレベリングは嫌いではないが好きでもない。今までのゲームだってLv100到達まで一年以上はかかった。故に今から一、二年はレベル上げだ。
「とりあえずカルシスターの言っていたクエスト受注場に行くか」
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クエスト受注場に行くまで結構な時間を掛けた。だか、看板もあり二十分程度でつくことができた。
「この村巨大すぎだろ。もう街だわ」
クエスト受注場は普通のゲームと同じように貼り紙がはられた看板に受付娘的な人が立っている。その近くには門がある。あそこからフィールドに出るのだろう。俺はこの中から難易度の低いクエストを探すことにした。
「低難易度欄はこれか。おっ、スライムか。まあ最初は言わずと知れた悪名高き泣く子も黙る雑魚モンスタースライムからだな。よしこれにしよう」
「すみません。これの受注をお願いします」
「はいわかりました。クエストの内容はそちらの貼り紙に書いてあります。武器はこちらの剣をお使いください。それでは左にある門から目的地に向かってお進みください」
「わかりました。ありがとうございます」
言われたとおりに進むと今まで見たこともない大草原だった。クエストの場所は森と書いてある。
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「森到着~!」
とは言ったもののこれからどのようにしてスライムを狩るかなんてわかりゃしない。クエストには草木の養分を地面から奪い取っている緑スライムを五匹ほど倒してほしい。と書いてあった。だがこれから何をすればいいのかわからないので、
(ちょっと奥に進んでみるか?いや進んだら大量のスライムがいたりして。)
なんて考えていたら、
「グチョグチョギュチョチョ」
という気持ち悪い音がした。
「なに!?え、今なんかすごくキモい音がしたんですけど?いるなら不意打ちなんていう真似しないで出てきてもらっていいですかね?」
剣を腰から抜き恐る恐る語りかける。すると、森の奥がガサガサ動いて、
「グチョギュチョ」
スライムが現れた。色は緑、クエストの討伐対象だ。半透明で中に丸い何かがある。数は一匹のようだ。
ここで一つ試したいことがある。ステータス欄にEXPとあった。確実に経験値だが一つ疑問が浮かんだ。今までのゲームでは[攻撃したら経験値が増える。]と、[モンスターを倒したら経験値が増える。]という二つの経験値増加タイプがあった。
だが今検証するとここで俺がスライムに殺される可能性がある。なんたって相手の戦闘力は未知数だ。故に今検証するのはやめておこう。などと長考していると、スライムが襲いかかってきた。
「俺の剣技をなめるなよ!ゲームや剣道で鍛えた剣を見せてやる!」
こんな意味不明な決め台詞を吐きながら小さい頃はゲームの技をよく真似したものだ。そして今も子供のように真似している。
突き アクセルシュート
無駄にかっこいい名前のごく普通の突き技である。スライムは斬撃耐性が高い気がする。故に突きであるアクセルシュートを繰り出した。そして突き技の理由はもう一つ。スライムは切っても切っても死なないのがアニメのお約束である。だがスライムの中に丸い何かがあった。あれがスライムの核だと思ったのだ。俺の推測は正しかったようで、
「ビュシャァァァ」
という音を立てながらスライムが死んだのか溶けた。そして自分のステータスを見る。EXP71/2000となっている。この戦闘をあと約二十八回行えばLv2だ。そしてライムは一匹ずつならばそこまでの強さではないことが分かった。先程考えたことの検証をするためにもう少し奥に進んでみる。
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少し奥に進むと枯れ木や枯れ草か周りに蔓延っていた。そして何匹かスライムがいた。
「試しに切り逃げしてみるか?」
先程のスライムはそれほど早くはなかったのでできなくはない。が、大勢で襲いかかってきたときにどうなるかがわからないので次の機会にしよう。と思ったがあの神様からもらった紙に書いてあるかも知れない。検証するためにここまで来たがおとなしくクエストクリアのために討伐するか。
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そこにいた七匹のスライムを先程と同じ技で一匹ずつ狩り経験値が501になった。だが、このペースはマズイ。あれだけ狩って経験値が500ならばあと二十一回はスライムを倒さなければいけない。だがもうこの周りのスライムは倒してしまった。・・・ん?
「ちょいまち。これクエストクリアじゃねえ!?」
・・・とりあえず戻るか。
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村に戻りクエスト達成報告をした。借りた武器を返し、スライムの核膜を八つ渡したら貼り紙の説明通りクエスト完了となった。クエストの報酬は二万二千カル(カルとはこの世界の通過らしい)だった。辺りはもう暗かったのでこの近くに宿かそれに類するものはないかお姉さんに聞いてみたところここを出てすぐ左に安い宿があると教えてくれた。
早速行ってみると二千カルで止めてくれるらしい。とりあえずここが仮拠点となるだろう。二千カル払って部屋に案内してもらった。部屋の中はベット一つ、テーブル一つ、椅子二つとなっており、ちゃんとシャワーもあるらしい。
とりあえずベッドに横になる。その瞬間、空腹感が俺を襲った。だが夜はあまり食べなくてもいいと思った俺はそのまま寝てしまった。
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翌朝、ものすごく腹が減っていた俺は昨夜の俺を憎んだ。が、どうしようもないことだ。おとなしくチェックアウトし、何か食べ物を売っている店がないか宿の人に聞いた。この宿の右隣に軽食を売っている店があると教えてくれた。
俺はすぐに直行し、六枚入りのパンを買った。残金一万九千三百カル。とりあえずその素朴なパンを食べてクエスト受注場へ。俺が今やるべきことは金稼ぎと、ちゃんとした装備を得ることと、レベリングだ。故に今休んでいる暇はない。即行でクエストを選び、提出。ちゃんとした説明を受けずにさっさと武器を借りフィールドに出る。
内容は某有名亜人モンスター、ゴブリンの討伐だ。説明には集団で行動する大量のゴブリンが商業に使う道に蔓延っているらしい。邪魔で邪魔で仕方がないから殲滅してほしいと書いてある。報酬は二万四千カルで、前のクエストと二千カルほどしか変わらない金額だ。だが単純に裏を返せばスライムクエストの時と難易度はあまり変わらないはずだ。
そんなことを考えながら走っていると目的地に着いていた。周りを見渡しても何もいないようなのでもう少し奥に進んでみる。すると道のど真ん中にしかめっ面のゴブリンが複数いた。腰にはナイフを吊るしており、着ているものは深緑のボロボロなジャケット(?)でいかにもゴブリンって感じだ。
ジロジロと観察をしているとゴブリン達がこちらに気づいた。まあ強さ的にはスライムとは変わらないはずだと思う。なので俺は正面突破という大胆な選択肢をとった。もちろんゴブリン達は俺を敵と判断し、ナイフを抜いた。とりあえず一番先頭にいるゴブリンを攻撃する。狙うは首筋。
横斬り サイドアンラッシュ
この技はゲームで使うときは相手に二秒ほど硬直のデバフがかかるがこの世界は現実でありゲームではない。自分の力で相手を攻撃するのだ。そんな素晴らしい効果はない。(因みにアクセルシュートはノックバックの効果があったはずだ。)だがそれは彼らも同じだ。
剣はゴブリンの首を切り、首の途中で止まった。剣を抜くとゴブリンは倒れた。それを見ていた後ろのゴブリン達が怒ったのか全員で突撃してきた。流石にこの数は相手できないと思い逃げるが追いかけてくるゴブリン達も意外と速い。ゴブリン達を撒くのには相当な時間と体力を使った。
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「やっぱあいつらは一匹ずつ相手にしないと無理だな」
一匹ずつでなければあのナイフに串刺しにされてしまう。そう考えながら先程の場所に戻るとゴブリン達がさっき倒したゴブリンを埋めて墓を立てていた。
(うっそーゴブリンも墓つくるんだー)
唖然。確かに弔いは大切だがそうも言ってられない。俺には俺の事情がある。頭をフル回転させて何か策がないか考える。ゴブリンの弱点、亜人種の弱点、なくなったら困るもの・・・ん?
「ゴブリン達の目や手足を潰せば戦力を大幅に削げるんじゃないか?」
相手は四匹。倒すまではいけなくても戦力を削いでからなら倒せると思う。直ぐ側に落ちている石を道に投げた。その音に反応したゴブリン達がそっちに向かっている。
(今だ!)
ゴブリン達が向かった方の反対側からゴブリン達に忍び寄る。忍び足で落ち着いて、それでいて素早く進み襲いかかる。狙うは踵の上のアキレス腱。(ゴブリン達は靴を履いていなかったので狙いやすかった)歩けなくするのが目的だ。
「グァァァァ!」
不意打ちは成功して一匹目は歩けなくなった。続く二匹目、今度は両目を狙う。するとゴブリンがナイフを振りかざした。動きを察知した俺は後ろに下がる。が、ナイフが俺の顔をかすめた。
「痛っ!」
普通に痛い。が、いちいち気にしていられない。さっと剣を振り、相手の片目を破裂させる。血が俺の顔に付く。
「グラァァァッ!」
ゴブリンが雄叫びを上げる。ナイフをもう一回振りかざす。この一撃は剣でガードする。だが、
「ガキイィィィン!」
と嫌な音がなって剣が欠けた。これもいちいち気にしていられない。もう一度剣を振りもう片方の目も潰す。これで二匹目もこれで戦力外だろう。次は三匹目。怒り狂ったようにナイフを振り回すがまったく当たらない。こいつは首を刺してそのまま殺す。最後に四匹目。こいつは三匹目とは違い怯えたようにナイフを振り回す。確かにここで殺すのは可愛そうだ。
だが俺には俺の事情がある。経験値にもなるし、金にもなる。別に殺さなかったらメリットがあるわけでもないので迷いなく首を斬って殺す。
「グアァァァァッ・・・」
「済まない。お前が生きていると俺が困るんだよ」
「バッシャァー」
四匹目も無事に討伐完了。あとは後ろのゴブリンを倒すだけだ。まずは一匹目。
「ブシュゥゥゥ」
二匹目・・・ん?
「なんかこいつのナイフ、他の奴らと違うな。鞘と持ち手の部分にきれいな装飾があるし、刃も綺麗だ。これは使えそうだな」
というわけで二匹目を倒してからナイフを頂いた。さっきこの剣を壊したのにこれには傷一つついてない。これはサブウェポンとして使わせてもらうか。今回のクエストは結構収穫があった。
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クエスト受注場に戻ると辺りは夕日に照らされていた。クエスト達成報告をささっと行う。あと武器が欠けてしまったことも素直に報告する。報酬は武器の修理代三千カル引いて二万一千カルとなった。まあそれでも十分だ。そんなことを考えているとお姉さんが、
「ところで、あなたは自分の窓を見ましたか?」
と、聞かれた。確かにスライムクエストのときから見ていない気がする。
「いえ、見てませんけど」
「じゃあ後で見てみてください。きっと驚きますよ」
とりあえずテキトーな返事をして宿へ向かう。チェックインするが、今回は五日間分のカルを払い五日間ここに滞在する。ポケットに入っている残りのパンを全て食べ、象徴石を出す。だが前と違うことが一つ。光っているのだ。とりあえず窓を呼び出してみる。
NAME:睦月 龍也、Gender:male、Group:human、Guild:none、Party:none、Lv:2、EXP:204/4500、HP:650、MP:0、STR:95、AGI:105、VIT:65、DEX:25、INT:95、LUK:5、Skill:none、Status Up Point:5
となっていた。・・・レベル2だと?ステータスアップポイントも5ある。え、どうしよう。まずどうやってポイント振り分けるんだろう。
「あっ、あの神様からもらった紙読めばいいんじゃね!?」
我ながら気づくのが遅い。紙を取り出し内容を読む。
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一通り読み終え、理解した俺はステータスを振り分ける。筋力に3、器用さに2にしておく。俺は一撃で敵を屠れるようなステータスがいい。つまりこれが今は最適だ。俺はベッドに倒れ込むように倒れた。とりあえずこれで狩りが楽になった。明日一日は武器防具を買いに行こう。あとそろそろ服も買わなければ。
ちなみに経験値の増減は貢献度によって決まる、と書いてあった。