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人違い勇者でも世界を救えるっ!!  作者: リア(Lea)
第一章
13/13

反撃の時間

さて、どうしたものか。入り口から分岐点を全て周り、ゴーレムも全て倒した。色々な人に話を聞いたが、全てのゴーレムの中に死体が入っていたという。


「さて、どうしたものか」


俺がどうしようか悩んでいたその時、声が響いた。


「全分隊に通達!至急洞窟の入り口に集合せよ!」


最初の攻撃の時に合図を出した人の声だ。彼は声量膨張の魔法を持っていると言っていた。なので、ここまで声が届くのも不思議ではない。


俺等はその声に従い、洞窟の入口付近まで戻ることにした。


俺等が戻った途端、指揮隊の人が話し始めた。どうやら俺等が最後だったらしい。


「作戦開始から一時間半が経過し、未だに呪術師の居所が分かっていない状況だが、情報が一つ入った。非常に悪い情報だが、一つの分隊全員が土から出てきた手に引き摺り込まれた。という情報だ。この情報から推測出来ることは、呪術師が壁の奥にいる可能性だ。というわけで、見張りを二人、ここに置いて、我々は引き摺り込まれた場所に向かう。その壁の奥に呪術師がいる可能性が高いので、十分に注意してもらいたい」


なるほど。だから今まで見つからなかったのか。


・・・考えたくもないが、引き摺り込まれた人達はもうゴーレムにされていてもおかしくは無い。

----------------------------------------------------


俺等は壁から手が生えていたという現場に到着した。


「誰か、土属性の魔法が使えるものは?」


ユリアが手を上げた。が、背が小さいので俺が代わりに手を挙げ、ユリアを推薦した。俺が「無限加工」でやっても良かったのだが、ここは比較的出番の少ない彼女に任せるとしよう。


ユリアは壁に杖を接触させ、詠唱した。


「ゼーナ・ルート」


すると、ユリアの前の壁が一気に開いた。その奥には短い通路と一体のゴーレム、ゴーレムの後ろには赤茶色の扉がある。どうやらここで合っているようだ。


俺等はゴーレムを速攻で片付ける。もちろん、その中にも骨が入っていた。


正直言って、人を生贄にしてゴーレムを造るなんて胸糞悪い。さっさと捕縛して宿の部屋で休みたい。そう思いながら俺等は錆びついているその扉を開けた。


部屋にいたのは一人の白髪の男。前衛隊が槍や剣を彼に向けて出頭するように言葉を放つ。


「貴君は禁止呪術使用罪の容疑がかけられている。無抵抗で出頭することを推奨するが、しない場合は我らが実力を以って拘束する」


指揮隊の人が大声でそう言うが、白髪の男は真面目に受け取らなかったのか、それとも余程自分に自信があるのか、奇妙な声で笑いながら返答する。


「イィッヒッヒャッ!嫌だねぇ。私を捕まえるなんて無理だしぃ?出来るもんならぁ、やってみなぁ?」


正直、彼の捕縛だけなら簡単だ。Ballet001で彼の手足に麻痺弾をめり込ませれば良いのだから。だが、現実はそう甘くない。彼を護衛するゴーレムが厄介だ。見た所、余裕ぶっている彼の様子だと、ゴーレムはまだまだいそうだ。そして、予想違わず地面からゴーレムが出現した。ざっと数えて四十体。周りは俺等を合わせて二十七人。


(ちょっと厳しいか?)


周りの人達も少し引いている。俺も少し引いた。無理な数ではないが、厳しい数ではある。最低一人一体は相手にしなければいけない。だが、大体の人が二体同時に相手をするだろう。それは少し面倒くさい。


「ユリア、爆弾をゴーレムに投げつけて倒せる?」


「魔法耐性が低ければいけると思う」


「じゃあ、どうぞ。今やっちゃってくれ」


幸い、今ならまだ特攻している人がいないのでこちらの陣営に被害が及ぶ確率は低い。


俺の命令通り、ユリアは土爆弾を二十個程作り、それらをゴーレム共に投げつけた。だが、


「・・・一体も倒れてない?」


「イィッハ!このゴーレム達はそんな攻撃で倒れないよぉ?」


「なら、この攻撃はどうかな?」


俺はBallet002を一体のゴーレムに向けた。あのときは鎧に弾かれてダメージは入らなかったが、このゴーレム共は鎧をつけていない。なぜ、あのゴーレムが鎧をつけていたのかは不明だが。


周りの人達が002を不思議そうに見ているが、俺はお構いなしに引き金を引いた。銃弾はゴーレムの首元に直撃したようで、ゴーレムの頭と体が爆ぜた。


この攻撃は流石の呪術師も驚いたようで固まっている。そんなに自分のゴーレムに自信があるのか。そう考えながら、俺は最初のゴーレム含め、四体を撃破した。次は呪術師に001の銃口を向けた。


「さあ、大人しく投降しろ」


ちょっとカッコつけて言ってみた。言いたかったのだ。しょうがない。


だが、呪術師は硬直を脱し、余裕ぶった声で答える。


「た、確かにあの攻撃には驚かされましたねぇ。ですが、あなたが倒したのは四体ですよぉ?こちらはまだまだゴーレムがいますしぃ?さぁ、どんどん戦って下さいねぇ?」


すると、地面から呪術師を囲むように四体のゴーレムが出てきた。このままじゃキリがない。


高威力の爆弾で一掃するか?いや、高威力と同時に広範囲の爆弾だ。こちら側にも被害が及ぶ。001で呪術師を狙い撃つか?できなくは無い。だが、この弾も残りが少ない。そう無駄撃ちはできない。


あれこれ考えている内に、ゴーレムが動き出した。周りの人達が戦闘態勢に入る。このゴーレムは今までのゴーレムとはランクが違う。一匹ずつ倒すのは時間が掛かるだろう。


そんな時、頼もしいのが魔法師だ。特にユリアは、このレベル帯では高位の魔術師らしく、本気を出せばデバフ魔法や広範囲高威力の魔法が撃てる。今回も期待に沿い、高威力の魔法を使った。


「ガルセクト・フィンザー」


この魔法、前の怪奇現象事件の時にも使っていたが、詳細がよく解らなかった。だが、ボスの無残な姿にしたこの魔法はかなりの高威力だ。なんせ、首を百八十度回転させたのだから。


ユリアの前に黒い何かが出現する。よく見ると恐竜の顔のように見えるそれは、俺等と対峙していたゴーレムを喰らい、他のパーティーと退治していたゴーレムも数体喰らった。


このペースでゴーレムを喰らい続ければ、呪術師に麻痺弾を叩き込めるだろう。だが、いつまでもこの魔法が維持出来るわけではない。更に、地面からゴーレムが倒した分だけ、出現するのだから面倒くさい。


(・・・ん?倒した分だけ?)


どうするか悩んでいる途中、とある疑問にたどり着いた。


何故、出現するゴーレムが倒した分だけ出てくるのだろうか?所持しているゴーレムを全て出現させれば俺等を全滅させるのは容易いだろうに。だが、出さないということは、もしかしたら数に制限があるのではないだろうか。例えば、四十体までしか出せないとか。


この例えが合っていないかもしれないが、制限があるのは確実だろう。だが、それを知ったところでどうにかなるものではない。だが、ユリアの魔法のような広範囲殲滅攻撃が出来る人がいれば話は別だろう。広範囲に攻撃すれば、大量のゴーレムにダメージを与える事が出来る。相手のゴーレムのストックを効率よく減らせるはずだ。


「ユリアさん、ユリアさん」


「何?」


「この魔法の他に広範囲殲滅攻撃ってある?」


「幾つかあるけど」


「魔力の方は?」


「まだまだ余裕」


「解った。じゃあ状況を伺いつつ広範囲攻撃で」


「了解」


ユリアの方は大丈夫だ。後は他の人だが、パルは範囲攻撃は無理だ。キャラシーは場合によるが、衝撃波で微量ながら周りにもダメージを与えることが出来る。俺は爆弾を使わないと無理だ。俺の一番好きなRPGの技に、範囲攻撃が合ったが、再現できないので唯の回転斬りに成り下がる。他にも爆破弾も002に装填できるが、圧縮された火薬の量が半端ないほど入っており、この狭い空間で撃つのは流石に危険だ。今回のメインアタッカーはユリアで決まりだ。


次にこのことを指揮官に報告する。指揮官の人も納得し、メイジ隊に広範囲攻撃をするように呼びかけた。


後は、もう簡単だ。呪術師本人は魔法での攻撃を行えるが、その攻撃力は俺の銃やユリアの魔法並の攻撃力ではない。着々とゴーレムのストックを減らされている呪術師の顔は徐々に歪んでいく。その様子から察するに、もうゴーレムのストックは少ないらしい。そして、その予想に違わず、ゴーレムの出現が止まった。後は、ゴーレムを倒し、呪術師を拘束するだけだ。なかなか難しいと思っていたが、結構簡単に、あっさりと終わってしまった。これが終わったら宿に帰ってシャワーを浴びて寝よう。そんなことを考えていると、ゴーレムが全ていなくなっていた。


「さて、ゴーレムがいなくなったわけだが、そろそろ降伏してくれると有難い。それともまだ足掻くか?」


指揮官の人が呪術師に話す。すると呪術師はこう言った。


「イィッヒッヒ・・・まだ、私には奥の手が・・・」


「奥の手?滅茶苦茶強いゴーレムがいるとか?」


俺が思ったことを口にしてしまうと、呪術師が俺の疑問に答えた。


「そうだねぇ、間違ってはいないよぉ?」


そう言うと、呪術師の下に魔法陣のようなものが出現した。それが徐々に上昇して、呪術師の体を通過する。すると、周りの土や石が呪術師にくっついていく。


「私がゴーレムになるんだよぉ。昔の上級騎士の死体も三体使っているからねぇ。さっきのゴーレムとは強さが桁違いだよぉ?」


呪術師がゴーレムとして完成した姿は、先程のゴーレムより一回り大きい。3メートルはあるであろうそのゴーレムはこの場にいる人達を圧倒する威圧感を放っていた。


強さ的には先程のゴーレムの四~五倍だろう。多分桁違いと言う程ではない。だが、それでも通常のゴーレムは、皆で囲んでやっと倒せる程の強さを持っていた。五倍にもなると倒すのが困難になるだろう。どうにしろ、呪術師の捕縛は無理そうだ。


「仕方ない。呪術師の捕縛は断念する!総員、眼前(がんぜん)のゴーレムの討伐を開始せよ!」


指揮官も捕縛は無理だと察したらしく、そう言った。


討伐許可が降りたので、俺は002を装備し、ゴーレムの首元に狙いを定めた。その時、前衛組がゴーレムに向かって走り出した。そこにはキャラシーもいた。


「お、おい!馬鹿!まだ、相手の実力も分からないのに飛び出すな!」


確かに俺はあのゴーレムを普通のゴーレムより五倍程強いだけだろうと思った。だが、今考えれば、まだあのゴーレムの戦闘力が分かっていない。敵の容姿だけで強さを判別してはいけない。想像より遥かに強い可能性だってあるのだ。幸い、パルは進まなかったが、キャラシーが危ない。早く助けに行かないと・・・


「ドゴオォォォン!」


その時、何かが爆発した様な音が聞こえた。ゴーレムの方を向くと、ゴーレムが魔法を使っていた。


「ふぇ!?」


俺は驚いて、素っ頓狂な声を上げてしまった。今まで魔法を使っていたゴーレムはいない。それゆえ、驚いたのは事実だが、俺がこんな間抜けな声を上げた理由ではない。


なんと、キャラシーが自らゴーレムの放つ火球に向かって走り、自爆しまくっているのだ。しかも、火傷は全く負ってない。


何というドM精神。何という強靭な体。だが、それでも全ての火球に当たっているわけではない。他の冒険者達にも火球は当たっている。流石に、それだけで死ぬわけではないが、十分に危険だということが解ったらしく、前衛組が一斉に下がった。


前衛組が下がりきったその時に俺は002を撃ち、ゴーレムの手首に命中させた。ゴーレムの手は、弾け飛び、ただの土塊(つちくれ)になった。だが、その手は数秒後、直ぐに再生された。俺は、一瞬驚いて唖然してしまったが、直ぐに気を取り直し、Bullet005を装備して、マガジン内の弾を全て撃った。だが、数秒後に、全ての傷が同時に再生した。これじゃ、埒が明かない。直ぐに魔術師達が魔法を放ち動きを止めるが、それも長くは続かないだろう。今のうちに対抗策を考えなければ。


俺が最初に思いついた攻略法は、(コア)の破壊だ。大抵、こういう超再生能力を持つモンスターは核を一差すれば倒せる。俺が初めて倒したスライムもそうだった。


次に思いついたのが、ゴーレムの完全な滅却。最初に思いついた策より遥かに難易度が高い。だが、これならば確実にゴーレムを葬れる。


最後に思いついたのが、ゴーレムを細切れにすること。ゴーレムをある程度切り刻めば動かなくなるのでは無いか、という俺の安易な考えだ。


一つ目の策を実行するならば少数精鋭チームが必要だ。二つ目の策ならば、俺や前衛組にできることはない。ユリアのような魔術師が広範囲攻撃を重ね掛けが必要だ。最後の策ならば、全員で特攻し、頑張って切り刻むしか無い。


だが、この中の三つで選ぶのならば、一つ目の核の破壊が一番可能性が高い気がする。そして、その核は呪術師の心臓だろう。だが、その心臓がどこにあるか分からない。普通なら左の胸辺りにあるはずだが、呪術師は他にも、三人ゴーレムに使っていると言っていた。その三人の影響で位置が変わっているかもしれない。更に、核は心臓じゃないかもしれない。その核は、もしかしたら頭にあるかもしれないし、左胸にあるかもしれない。取り合えずこのことを指揮官に伝える。


「・・・なるほど。それなら君のあの砲撃が役に立つのではないか?アレは実に素晴らしい。この一件が片付いたら私達にも作ってもらいたいのだが・・・」


「そのつもりはありません。それに今は目の前の事だけを考えましょう。確かに私の砲撃なら核を穿つことは容易でしょうが、心臓の場所が分かりません」


「なら、一度その大砲を疑わしい場所に撃ってみれば如何かな?」


「了解です。やってみましょう。それで駄目なら可能性は低いですが、細切れ作戦で行きましょう」


そう言って俺は射撃態勢に入る。まずは、左胸を狙う。一発目は外してしまったが、二発目は左胸にしっかり命中した。左胸の土塊は弾け飛び、弾丸は貫通した。だが、動きは止まらない。


(核は心臓じゃないのか?)


次に狙うべきは頭。これも二発外したが、続く三発目で命中させた。こちらも弾丸は貫通したが、ゴーレムが動きを止める様子はない。精々(せいぜい)、怯んだぐらいだ。その様子からして、頭にも核は無いようだ。


今度は体の中心部分、腹のあたりを撃ったが、ゴーレムが止まる様子はない。こうなると、核がゴーレムにある可能性が低くなってきた。というか、今までのゴーレムには核が無かったではないか。そう考えると、核破壊でゴーレム討伐の可能性は限りなく低い。


ならば、次は細切れ作戦だ。普通のゴーレムはこの方法で倒せたので、この可能性もあるだろう。俺は指揮官にその事を説明をした。


「そうか、核は見つからなかったか・・・なら、細切れ作戦に移行か?」


「ああ、確かに今までのゴーレムはある程度の部位欠損で倒せて、核なんて無かったからな」


「了解した。だが、再生能力はどうするのだ?」


「・・・そういえば、さっきショットガンでゴーレムを撃った時、()()に傷が再生した気がする。立て続けにダメージを負わせれば傷の再生が遅くなるはずだ」


「なるほど・・・それなら多くの攻略者を前線に立たせたほうがいいな」


「・・・ん?こ、攻略者?」


「ん?モンスターを倒す事を生業としている冒険者のことを攻略者というのだ。知らなかったのか?」


馴染みのある単語が出てきて思わず聞き返す俺。だが、ゲーム用語の意味ではないらしい。


「あ、ああ。ちょっと俺は世間知らずなんだ」


「そうか。とにかく多くの攻略者を前線に出すが、魔法には気をつけろ。先程、自ら火球に向かっていった馬鹿な女がいたが、決して真似はするなよ。あの火球はあの女のような耐久力がなければ大ダメージだ。それに、攻撃魔法がアレだけなはずが無いからな」


「了解しました。ついでに言っておくと、その馬鹿な女は俺のパーティーの大切なバーサーカーですよ」


俺は苦笑交じりにそう言った。あいつはそんなエゲツない物にぶつかってアヘアヘしてたのか。真正のドMだな。


俺は、パルと真正のドMにその事を話し、前線に出るように言った。勿論、俺も前線に出るが、パルの様な槍の腕や、キャラシーの様な攻撃スキルは持っていない。精々できるのは、鍛えた俊敏性で使うゲームの技だ。ただ、連撃なんてものは当然使えない。なので、麻痺弾を装填したBullet001をサブ装備として前線に出る。ゴーレムにはあまり効かないが、全く効かないというわけではないだろう。危なくなったらこれを使ってなんとかしよう。


魔法による牽制が終わった時、前衛組は特攻を始めた。


「死なない程度に頑張ってくれ。ヘイトは多分キャラシーが稼ぐだろ」


俺はパルに比較的真面目に言った。もう眼の前で人が死ぬのは嫌だから。


「了解。そっちも死ぬなよ?」


こういう状況でも冷静に受け答えができるのがパルだ。俺は安心して特攻できる。


だが、俺も人の心配ばかりしていられない。十中八九、あのゴーレムが使う魔法は火球だけではないのだ。もしかしたら殺傷性の高い魔法を使うかもしれない。ああいった未知の敵が一番怖い。


俺等も前線に出るが、今は他のパーティーが攻撃中だ。キャラシーも先程の様な気持ち悪い行動は取っていない。死んでいなくて何よりだ。


俺はキャラシーに一度下がるように言って、今攻撃しているパーティーの方を見た。火球を上手く避け、曲刀でダメージを入れていく。ゴーレムが攻撃した人の方を睨むと、その後ろから追撃が入った。鮮やかな連携だ。次は追撃した人の方を見ると、次は最初の攻撃をした人が水刃(すいじん)の魔法を撃つ。彼は魔法剣士のようだ。


だが、そのパーティーが一度下がり、他のパーティーが再度特攻しようとしたその時に恐れていたことは起こった。


ゴーレムが手をかざすと、針の様な黒い有尖無刃器が数本出現した。俺は反応が遅れて、Bullet001を構えるのが遅れた。それが一斉に発射され、攻撃しようとしていたパーティーに襲いかかった。ある人は剣を持っていたその手に、ある人は一歩踏み出そうとしていたその足に、ある人は凶悪なゴーレムを見据えていたその目に。針が刺さった人は悲鳴も上げずに、その場に震えながら倒れた。


俺は驚きながらも直ぐに針が刺さった三人を後ろに運ぼうとした。パルとキャラシーにも手伝ってもらい、手際よく運べた。


「死んではいないようだが、衰弱しているようだな」


パルがそう言った。三人の顔は青白くなっている。特に目に刺さった人は重傷だ。だが、不思議と血は出ていない。肉体そのものを攻撃する魔法ではないらしい。


「回復手段は?魔法とかに無いか?」


「回復魔法か・・・だが、この状態だと使っても(ほとん)ど効果は無いだろうな。だが、無いよりはマシだ」


そう言ってパルが回復魔法を使える人を探す。俺はユリアに聞いてみる。すると、


「時間経過で徐々に回復する魔法なら使えるよ」


と言った。直ぐに針が刺さった三人にその魔法をかけてもらった。だが、


「・・・おかしい。顔色が全く良くならない」


「効果が弱いってことか?」


「というか、効果が無い。この三人の体力がゴーレムに吸収されてる気がする。このままじゃ、三人共・・・死ぬよ」


・・・何ということだ。攻撃を受けたときの対処法が無いなんて。


俺は以前、この世界は出来すぎていると考えたことがある。ゲームの様な敵の配置、経験値の取得スピードの速さ、才能のあるパーティーメンバー、他にも色々と思い当たる(ふし)はある。だが、それらは全て偶然だったのだろう。今の状況、今目の前にある光景は都合の良いものではない。俺はもっとゴーレムに注意していれば001を構え、発射することが出来ただろう。あの針の発射を防ぐことが出来ただろう。だが、その反応が遅れたのは紛れもなく自分の油断の所為(せい)だ。その油断はどこから来たか。それは間違いなく、この世界への甘えていたからだろう。この世界はよく出来ている。この世界は自分に都合の良いように出来ていると思い込んでしまったのであろう。


今自分の中にある感情は怒り。ゴーレムにではなく自分に。この世界に来る前にもこれと同じような油断をし、一人の女の子を死なせてしまったから。この世界に来て、同じ過ちを犯し、今三人の人を傷つけてしまったから。


その時、頭の中に響く声が聞こえた。


――では、今あなたがすべきことはなんですか?


答えは勿論、あのゴーレムを倒すために前線に出ること。


――前に出て、どうしますか?


あの娘と同じ結末を辿らせないために、ゴーレムを倒すのに全力を尽くす。


――その戦いで死んでしまったら?


死んだらどうしようも無いが、また同じ過ちを繰り返したことを後悔しながら死ぬだろうな。


――後悔はしたくないのですか?


そんなのは誰だってしたくない。ましてや、後悔しながら死ぬなんて最悪だ。


――では、その後悔をしないために、立ってください。立って戦って下さい。


「ゴーレムがその三人の体力を吸ってるんだったら、あのゴーレムを倒せば衰弱は止まるよな」


「そうだけど、流石に一人じゃ無理だよ。私もやる」


「いや、別に一人でやろうとか思ってないから安心して」


そう言って、俺はゴーレムの前に立った。


「俺は二度と同じ過ちを繰り返さない。あの三人を璃那と同じように殺させはしない」


――さあ、剣を握って。私は、あなたの剣となろう。


「今から、俺の全武装を以って!俺の全力を以って!お前を倒す!覚悟は良いか?クソ野郎」


俺は無意識の内に手を開いて、目の前に突き出していた。そして、その手に白と黒の粒子が何処からともなく集まり、一振りの剣の形になった。


気づけば、剣を握っていた。グリップは、白と黒の市松模様。ポンメルは白と黒の模様が中で動いている宝石。ガードは、ファンタジーに出てくるドラゴンの翼の様な形をしていて、こちらの色は白。ブレード部分は黒いが、エッジから1mm程は白い。全体的に白と黒で構成されたモノクロチックな剣。だが、その剣は、今俺が持っているどの武器より強く、頼れる気がした。

ぴったり8880字。


今回はちょっと真面目に書いてみました。

ちょっとセリフがクサイかな?

まあ、これくらいがちょうどいいと思いましょう。(書いてて結構恥ずかしかった)

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