1話 タイレン王国
あるところに一つの大きな国があった。その国の名はタイレン。
タイレン王国は地球で亡くなった者たちが生まれ変わり暮らす場所。
生まれ変わってタイレンに行くのは、人だけとは限らない。
前世がウサギだった人やサンマだった人もいる。
ウサギは狩人に殺され、サンマは塩焼きにされた。死に方も前世も全然違う者たちが、人として一つの国に暮らしているのだ。
死後の世界というと天国のような場所を想像する人がいるだろう。しかし、タイレン王国はそんな夢のような場所ではなかった。
約1500年前に誕生したタイレン王国は、元々5つの民族に分かれていた。白人のタイズル、ショウレンと黒人のトクサ、マチボ、ブォズイの5つ。
この国の支配権は白人が握っていて、国の7割を占めていた。
やがてタイズルとショウレンは統合し、タイレン王国となった。
白人による黒人への差別は酷いもので、黒人は奴隷として雇われるほか生きる道はなかった。
そして白人と黒人の結婚はもってのほか、触れることさえ許されなかった。
そこの決まりを作ったのは女性にして国王である白人のアイルスであった。アイルスは1500年もの間、25才のまま王位を守ってきた。
この世界に住む者は皆、前世の記憶を持っている。
そして白人に生まれるか、黒人に生まれるかは前世とは全く関係ない。その者に運があるかないかの問題だ。
地球で一回目の人生を送り、その記憶を持ったままタイレンで二回目の人生を送る。その二回の人生を見て、天国行きか地獄行きかが決まる。
しかし、地球にいる者は皆そんなことを知らない。人生は一度きりだと思い込んで一生懸命生きている。
だからタイレンで二度目の人生を生きれることになっても喜ばないのだと言う。