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堕落は口だけ  作者: 照の旧
第1章
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第1話 正常反転

2ヶ月おきの投稿とかおかしい

 

  感傷に浸る。

  記憶はないが気持ちだけは昔の様に現れる。

  もし覚えていたとしたら苦悩していただろう。そういう気持ちだ。


  「待って・・・・・・」

  離れていく誰かの背中へ手を伸ばす。少しでも前に出れば手が届くのに右腕以外はどこも動かない。


  表情を認識できないくらい距離が空いて、その誰かは振り向いた。


  血の色のない顔、不気味な表情をしていた。


 *


  目前に迫る女性に圧倒される。予想だにしない状況に頭がついていかない。


  「これ着といて、死なれても困るから」

  女性は右手に持っていたコートを投げつけた。

  エヴァンは投げつけられ肩にかかったコートを一瞥し、女性を見る。

 

  何か落ち着かない様子で周りを見渡している。

  こちらの視線に気づいたのか女性はエヴァンに振り返った。


  「いいから!」


  エヴァンは強く言われたので仕方なくコートを着た。

  コートは非常に暖かく、渡されてからすぐに着なかった事を後悔する。

  それもその筈、外は数分前の雨とは打って変わって空から白い雪が降ってきていた。

 

  「はい、着たならすぐに立って! 行くよ!」


  女性はコートを着たエヴァンの手を掴み牢屋から引っ張り出す。

  外には馬車が用意してあった。不思議と囚人を乗せる為の荷車ではなく客車が用意されている。

 

  エヴァンは女性に促され共に馬車に乗り込む。女性はエヴァンの向かいに座った。

  中は6人程乗れる大きさでエヴァンには無用の長物だ。


  そう思ったのも束の間。エヴァンが席に座ったのと同時に客車の左右の扉が開き、どこからともなく現れた2人の軍人に銃口を突きつけられた。


  「なんなんだ・・・・・・」

 

  助けられた訳ではないと察し、静かに腰を下ろした。


 *


  聞きたい事なら山ほどある。だが、生憎横に座る軍人が許してくれないようだ。

  少しでも動くと突きつけている銃口のトリガーに指をかけてくる。声を出そうと口を微妙に動かすのもダメなようだ。

  表情から察するに少しでも不穏な動きをしたら撃ち殺すつもりなのだろう。

  女性は下を向いていて表情が見えない。ただ単に寝ているだけかもしれないが。

 

  馬車で揺れること数十分。

  目的地に着いたのか馬車が止まった。隣の軍人に降りるよう顎で指される。

  馬車を降りる。

 

  「あ?」


  予想外の光景に思わず声が出てしまった。

  ここはどこかも分からない部屋の中。突然の出来事に頭が真っ白になる。

  数秒の間、言葉を失い呆然としていたが馬車の事を思い出し、咄嗟に振り返る。

  が、馬車はなく、見えるのは1つの扉のみ。


  「寝てた? 催眠? ・・・・・・そんなわけないか」


  現実とは思えない状況に自問自答するが、答えは出ない。指を数えたり部屋を見渡してみるが、夢ではないと確認出来ただけで、状況は変わらない。


  「・・・・・・とりあえずここから出るか」


  いつまでも行動しないのは解決には繋がらない。


  この部屋は扉以外は何もない。壁は薄汚れて、元は白だったのだろうが灰色に近い色になっている。

  白い部屋なんて見たことも入ったこともないのでここがどこなのか予想出来ない。


  いや、出来なくない。

  部屋に1つの扉、中には罪人。そうなるとここは牢屋だと考えられる。


  となると、ここの扉は開かないのが当然だ。

  一応確認の為、ドアノブを回してみる。


  「開かない」


  予想が当たると少し嬉しくなる。自分以外にも誰かいるなら、得意気になって一緒に笑っているかもしれない。


  ガチャ・・・・・・ギィィ


  「・・・・・・・・・開いた」


  間違っていたかもしれない。


  扉が勝手に開いたので近くに誰かがいるのは確かなようだ。

  罪人で追われる身のエヴァンを閉じ込めていた。言い方を変えると、匿っていたとも言える。

  軍人の仕業だとしたら普通だが、それがもし他人なら・・・・・・。


  慎重すぎるかもしれないが、それが今まで生き残れた理由なのだ。少しでも疑問が募るのなら油断は出来ない。


  まずは扉の横で聞き耳を立てる。何も聞こえない。

  次は開いた扉の隙間から外を見る。廊下が見えるだけで人が隠れられる場所はない。

  廊下の突き当たりの角で隠れている可能性もあるので、扉を開閉して音を立てて浴びき出そうとするが、誰も出てこない。


  安全だと判断。足音を立てないよう、扉の音も出ないよう、慎重に部屋を出て歩き始めた。

  廊下に鏡が置いてある。鏡は潜入の時や、見えない場所を安全に見るのに役立つので持っていく。


  突き当たりに到着。早速鏡を使ってみた。

  反射を利用して曲がり角の奥を見る。


  「誰もいない?」


  奥には玄関があるだけで誰もいなかった。

  一応玄関にも曲がり角があるので移動して、同じ方法で見てみるが、誰もいない。


  訳が分からなくなってきた。足音がしなかったなら動いてないはずだが近くにはいないときた。

  不気味だ。気味が悪いので玄関からすぐに出ることにした。


  玄関から外に出る時も最初の部屋から出た時と同じ方法で安全確認する。何の音もしない方が待ち伏せでもされているのではないかと逆に怖くなってくる。


  自分の判断では安全だが、妙な胸騒ぎがする。今回は静かに動くより即座に出て走ることにした。


  冷静に失敗しないように心の中で3秒数えて0と同時に外に出る。


  3・・・・・・2・・・・・・1・・・・・・0!


  少し開けた扉の隙間から即座に外へ出て、その一瞬で周囲を確認。


  「・・・・・・は?」


  扉の先には人の住んでる気配の全くない住宅街が広がっていた。


単純の裏をかこうとして単純になるバカだった。

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